テクノロジーが進化すれば、ECは売れるようになるのか
安藤(Socket) ちょうどこの対談の日に、LINEさんがウェブペイを買収したというニュースが出ました。うちが提供している「flipdesk」は、スマホでクーポンを出して心理的な購買ハードルを下げるサービスですが、「決済」はECの購買行動における、最後の阻害要因ですよね。たとえば、指紋認証をピッとやったら、Amazonでも独自ECサイトでも買えるようになれば、それだけで日本のEC化率は10%近くいくんじゃないかと思うんです。川添さんは実際にECを運営されている立場から、どう考えになりますか?
川添(メガネスーパー) 前職でアパレルECを運営していた時から、決済についてはいろいろ考えていました。ECサイト自体が決済ツールになればいいとか、紙の雑誌を読んでいても決済までできたらなとか。でも、実際にECを運営していて思うのは、結局は決済などのテクノロジーではなくて、商品をどれだけ研ぎ澄ませられるかにかかっているということです。
安藤(Socket) 極論を言うと、メガネスーパーでしか買えない超かっこいいメガネがあったら、決済のユーザビリティがイケてなくても買うということですよね。それはおっしゃるとおりだと思いますが、それでも、商品とユーザビリティはECの両輪です。対等ではないという意味でおっしゃったと思うんですが、比率はどれくらいですか?
株式会社メガネスーパー EC・WEBグループ ジェネラルマネージャー 川添隆さん
2010年からクレッジ(現オルケス)でEC事業の責任者。自社ECサイトの売上を2倍以上に拡大。LINE@を活用した事例でも成功を収める。2013年7月より現職。メガネスーパー公式通販サイトは前年の1.7倍に急成長中で、LINE公式アカウントやスタンプも注力している。
川添(メガネスーパー) ユーザビリティは全体的にボトムアップしてきていますからね。ASPカートですら、すごくきれいに表示される。ガラケーでECサイトが立ち上がった頃は、商品:ユーザビリティが、9:1とか8:2くらいだったと思います。なにせ、テキストだけでしたから。それが今、6:4、テクノロジーの影響が4割くらいには影響力にはなっていると思います。
加えて、商品の影響力については、扱う商材によって変わってきます。若い女性向けのアパレルECを運営していた時に、ユーザーからアンケートをとったのですが、「この服を着ると幸せになる」「ラインで全部欲しい」という回答が寄せられるわけですよ。LINE@の会員が2万人くらいでも、セールの告知から4時間で600万円くらい売れたこともありました。そういう、熱狂的なファンがいる商材は、ユーザビリティももちろん重要だけど、ブランドとファンが赤い糸でつながっているんだなと思います。モールのほうがユーザビリティはいいはずなのに、独自サイトでわざわざ買っていただけるんですから。
安藤(Socket) 今はメガネスーパーさんで、競合と差別化しづらい商材を扱っていますよね。そうなると、「販促」の影響も大きいですか?
川添(メガネスーパー) 販促、大事ですね。差別化しづらい商品やブランドは、ECの担当者としては腕の見せどころ。集客の施策やサイトの改善等、自分たちの努力がダイレクトに売上に跳ね返ってくる。ある商品を買う際に、必ずうちのサイトに来てくれるという保証はないので、何かやらないとこわいんです。
安藤(Socket) それでうちの「flipdesk」を導入してくださったわけですね。
川添(メガネスーパー) 販促施策として、バナーやテキストなどのクリエイティブをマメに変えているのですが、スマホだと、どうしても上から下にスクロールする動きの中で、通り過ぎられてしまう。何か違う肩の叩きかたを試してみたかったんです。
それまでもクーポンに特化したサービスを導入して、成果が出ていたんですけど、「flipdesk」のほうが自由に使えそうだと感じました。テキストだけでも、訴求を変えることができるのがいい。細かいバナーであっても、デザイナーに頼んで1つひとつ更新するのは手間ですからね。加えて、サービス導入する際は、自分だけでなく、チーム皆が使えるものかどうかも考えます。テキストを変えるだけなら、誰でも、どこでもできるのが素晴らしい。
テキストって、クリックされるんですよね。メルマガもいま、週7~9回くらい打ってますが、EC全体として、HTMLを作りこむよりもシンプルなテキストのメールをスピーディーに作るというほうに、原点回帰している気がします。
株式会社 Socket 代表取締役 安藤祐輔さん
タグを埋め込むだけで、クーポン発行、ダイレクトメッセージ送信、チャットなどが訪問者の状況にあわせて自動でできるウェブ接客サービス「flipdesk」提供。事業者としてECサイトを運営した経験も持つ。
安藤(Socket) ありがとうございます。僕も事業者サイトにいたからわかるんですが、テキストを変えるだけでスピーディーに改善活動できるというのにしたかったんです。加えて、ECの担当者は、分析や広告出稿など、常に5つくらいの管理画面を開いてますよね。そこに新しいサービスを導入すると、また管理画面が増えて、それが使 いづらそうだと心理的に負担がかかる。これなら使えるかも?と思ってもらえるように、シンプルな画面にしています。
川添さん、テクノロジーではなく商品だと言いつつも、新しいサービスを見つけて、ご自身で判断して、導入されているのがすごいですね。