クロネコメール便サービス終了のワケ
「クロネコメール便」は、A4サイズ厚さ1cmまで、重さ1kgまでの「非信書」を、全国一律82円で配達してくれるサービスです。2013年には20億8,220万万冊の取引実績があったとのこと(「クロネコメール便の廃止について(PDF)」より)。
ところで、「非信書」ってなんだ、と思いませんか? 私は思いました。言葉のとおり、信書に非ず。じゃ信書ってなんだと言うと、「特定の受取人に対し、差出人の意思を表示し、又は事実を通知する文」だそうです。よくわからないので、表を載せておきました。
信書に該当する文書 | 信書に該当しない文書 |
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「ダイレクトメール」を見ても、信書にも非信書にも該当するものがあるなど、パッとはわかりませんよね。
パッとはわからないにもかかわらず、信書はメール便では送っていけないんです。郵便法という法律によれば、郵便でしか配達できないと決まっています(総務省|信書の送達についてのお願い)。が、ユーザーは知らない or よくわからないのでメール便で送られることが起きてしまっていて、運送業者も送り主も違反してしまう、最大で懲役3年または罰金300万円が科せられる、という事態が起きているわけです。
ヤマト運輸では、出荷票に「信書入ってないよね?」という確認欄を設けるなど工夫したり、郵政政策部会でもっと信書がわかりやすくなるように提案したりもしていました(平成26年3月13日「総務省 情報通信審議会 郵政政策部会の中間答申に対する当社の見解」(PDF))が、法律は変わらず、やむなくクロネコメール便サービス終了に至ったということだそうです。
クロネコメール便はなぜ愛されたのか
その発表にソーシャルメディアはけっこう騒然となり、EC事業者、個人で取引を行っている人たちの混乱が見受けられました。なぜクロネコメール便のサービス終了が、これほどEC事業者に衝撃を与えたかというと、利用されていたから、ですね。他のサービスと比較しても、サイズ・重量は限定されますが、安いです。
クロネコメール便 | ゆうメール | 飛脚メール便 | |
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サイズ | 3辺合計が60cm以内(長辺34cm以内)、重量1kg以内 | 3辺合計が170cm以内、重量3kg以内 | 3辺合計70cm以内(最長辺40cm以内)、重量1kg以内 |
一般的な料金 | 厚さ1cmまで 82円 厚さ2cmまで 164円 |
~150g 180円 | ~300g 165円 |
「クロネコメール便(個人のお客様) | ヤマト運輸」、「ゆうメール ご利用方法・運賃 - 日本郵便」、「飛脚メール便│サービス一覧│佐川急便株式会社」より
メール便でやりとりされている商品のジャンルは、文房具、Tシャツ、靴下、イヤホン、電子部品、メイクブラシのようなコスメ、コーヒー、紅茶、植物の種などなど、たくさんあります。試しに、楽天市場等のモールで「メール便対応」で検索してみてください。たくさんヒットします(クロネコメール便以外を利用しているショップもあります)。
また、CtoC取引の強い味方でもありました。古くはオークションでチケットやトレーディングカードやら、最近はフリマアプリで洋服1枚のやりとりもありますからね。
代替新サービス発表! ポスト投函は事前に申請が必要
そんなわけで、「悲報」と伝えられたりもしたのですが、4月1日からは同時に代替サービスも発表されています。
新サービス(1) ボックスを対面手渡しで |
新サービス(2) 厚さ2.5cm以内をポスト投函 |
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特徴 | 荷物追跡、時間指定、再配達、配達完了報告などの宅急便基本サービスや、店頭受取りサービスなどが利用可能。 | 受取人に配達完了メールが届く。 |
内容物の例 | 衣類・化粧品などの専用BOXに入るモノ | CD・DVD・トレーディングカードなど |
対象 (送り主) |
全て |
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料金 (税別、予定) |
地帯別運賃 持込割引・デジタル割引など適用で、専用BOX代込みで400円台から。宅急便60サイズ(関東756円、持ち込みで100円減)より割安。 |
全国一律運賃 |
「クロネコメール便の廃止について|ヤマト運輸」のページより引用、ECzine編集部が編集した
これまでの「クロネコメール便」に近いのは、新サービス(2)のポスト投函のほうですね。厚さは2.5cm以内と拡大されていますが、法人は事前に契約、個人はフリマサイト利用のみと、送り主に制限がかかっています。
また、サービス(1)が宅急便60サイズより割安、サービス(2)がサービス(1)より安価ということですが、82円ということはなさそうなので、実質、値上げですよね。ゆうメール、飛脚メール便よりも安価になるのか。他のメール便サービスも改定、ということもありえます。
ECzine編集部としては……、新サービス(2)ポスト投函について、法人のEC事業者さんの届け出がスムースに進むことを祈っています。