「このタスクは、そちらの仕事ですよね?」「そちらがやると思っていました」といったやり取りを、誰しも経験したことがあるのではないでしょうか。部署間の「連携不足」が、こうしたやり取りの要因です。一般的な解決策としては、「綿密に連携を取り合う」「折り合いがつくまで話し合う」などが挙げられます。
では、果たして「綿密に」とはどのような状態なのでしょうか。「折り合い」をつけるには、どの程度の時間を要するのでしょうか。今回は、仕事の押しつけ合いの原因にもなる部署間連携の不足について、具体的な解決策を考えます。
各部署レベル、担当者レベルで損得を考えてしまう
たとえば、実店舗とECサイトの両方を運営している事業者の場合。責任の所在が不明確だと、実店舗とECサイトの相互送客が発生せず、会社全体の機会損失につながることがあります。
実店舗の担当者からすれば、ECサイトへ顧客を送客することで、「実店舗側の売上が減る」=「実店舗側の評価が下がる」と考えるでしょう。そうすると、当然ながら送客の意識は薄くなっていきます。一方、ECサイトの担当者は「実店舗側からのトスがないことで、売上目標を達成できない」と考えるかもしれません。
これに対し、「会社全体の利益を考えて動いてください」と各チームにメッセージを送り、自発的な送客を期待する事業者を多く見かけます。各チームのメンバーは、メッセージに表面上はポジティブな反応をするかもしれません。しかし、自部署や個人の成績によって自身の評価(=給与)が決まるのであれば、実際のアクションは変わりません。つまり、各メンバーの中で、個人や自部署の成績と会社全体の利益の相反が起きているのです。
他にも、フロントエンドとバックエンドでの連携不足が例として挙げられます。商品を仕入れるフロントエンドと在庫管理をするバックエンド、商品企画やプロモーションを行うフロントエンドとアフターフォローで顧客満足度向上を目指すバックエンドなど、両社間で責任の押しつけ合いが発生することがあります。
売上を優先したいフロントエンド側は、多くの商品を仕入れます。在庫の最適化で利益を上げたいバックエンド側にとっては、それがネガティブなアクションとなります。
また、集客のためにフロントエンド側が、商品企画やプロモーションで顧客へ過剰に期待させるようなメッセージを発信したらどうでしょうか。顧客満足度が下がることで、バックエンド側の評価も下がってしまう可能性があります。