リテールビジネスにおいて、コマース全体へのブランディングの浸透に必要な要素は、多面的かつ網羅的になっています。そもそも、「e」コマースと呼ばれる時代は既に終盤に差し掛かっていると言えるでしょう。
BtoB・卸売、CtoC、D2C、ネイティブアプリ・CRM、ビッグデータ分析、ID統合、OMO、オムニチャネルなど、あらゆる側面へブランディングを浸透・接合することが求められています。すべてにブランディングを浸透していくのは容易ではありませんが、長期的な計画のもと、少しずつでもアクションすることが大切です。
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観点ごとに見るブランディングの形
物流の観点
効率的なサプライチェーンマネジメントを通じて、コスト削減や在庫管理の最適化が重要なのは間違いありません。しかし、そこにブランディングがどう関わってくるのでしょうか。
ファッションブランドのZARAは、迅速な製品回転率を実現し顧客のニーズに素早く対応しています。ブランドの顧客が誰なのか具体的に理解し明確化することで、迅速な製品回転をブランド価値に還元しているのです。
効率的なサプライチェーンマネジメントや無駄の削減、持続可能性への取り組み、迅速な配送とリアルタイム在庫管理など、物流や生産管理の側面でもブランドらしさを発揮すべきシーンは多くあります。
クリエイティブの観点
これが最もわかりやすい例です。ストーリーテリングを用いてブランドイメージを構築し、顧客の感情に訴える。Appleはシンプルかつ革新的なデザインと機能性を追求し、強力なブランドイメージを確立しています。
デザイン思考を導入し、顧客のニーズを満たす革新的な製品やサービスを提供すれば、商品のデザインは単なる「視覚的訴求」にとどまりません。ブランドのアイデンティティや思想を体現、ひいてはメッセージそのものになります。
それらを継続的にクリエイティブに反映する、「デザインシステム」の構築・運用が重要です。既に多くの企業が実装しており、当たり前になっています。
顧客理解・カスタマーサポートの観点
人工知能(AI)と機械学習(ML)は、現代のリテールビジネスにおいてブランディング戦略を強化するための重要なツールです。大量のデータを分析し、消費者のニーズや行動を予測する能力をもっています。これにより企業は、ターゲットとなる顧客により適切な商品やサービスを提供でき、ブランドイメージが向上します。
顧客セグメンテーションとパーソナライゼーション
AIやMLを活用することで、消費者データをもとに顧客セグメントを特定し、各セグメントに対してパーソナライズされたマーケティング戦略を展開できます。これにより、顧客との関係を深め、ブランドロイヤリティを高めます。
商品推奨と個別化
AIやMLを用いて顧客の購買履歴や閲覧履歴を分析し、彼らが関心をもちそうな商品を提案できます。顧客は自分に合った商品を見つけやすくなり、ブランドに対する満足度向上が期待できます。