その1:ネット定期購入の解約トラブルが増えている
まずは、定期購入の解約トラブル件数がどれくらい報告されているのか見てみよう。消費者庁の「令和3年版消費者白書」によると、2020年、国民生活センターに寄せられた定期購入のトラブルは、59,172件に上った。コロナ前となる2019年の44,756件からは、1.32倍へと増加している。
コロナ禍によるECの需要拡大が注目され始めたのは、1回目の緊急事態宣言が発出された2020年4月前後から。市場規模がコロナ禍の影響で大きく伸長したのも2020年。それに合わせるように、ネットでの定期購入解約に関するトラブルや相談が増えていることを覚えておこう。
近年では、定期購入のほとんどがネット通販だ。その割合は90%を超える。電子広告に問題のあるケースも増加しているが、スマホやタブレットなどで広告を見かけ、よく確認せずに気軽な気持ちで申し込んでしまったというのが、解約トラブルの主な原因と言っても過言ではないだろう。
その2:解約できない定期購入の代表的なトラブル事例
国民生活センターに寄せられている相談の多くが、健康食品または化粧品だ。その多くは、女性からのもの。健康や容姿・体形を気にする気持ちを都合よく利用する点で、悪質だと言わざるを得ない。
2020年の定期購入に関する相談を性別・年代別に見ると、全年代で女性からの相談が多い。もっとも多いのは40代で、50代、60代と続く。次に多いのは10代だ。2022年4月1日から施行された成年年齢が引き下げにより、18~19歳でも保護者の同意なく定期購を申し込めるようになったため、慎重な検討が必要だ。
では次に、どのようなトラブルが実際に発生しているのか、代表的な事例を見ていこう。
健康食品
- インターネット広告からダイエットサプリの初回お試し品500円を申し込んだが、2回目に5カ月分がまとめて届く高額な定期購入だった
- 10日間返金保証付きのサプリメントを解約しようとしているが、事業者の電話がつながらず、メールも返信がない
- 「初回実質無料(送料のみ)」というSNSの広告を見て契約したサプリメントの定期購入を解約したいが、事業者に電話がつながらない
化粧品
- 動画サイト上の広告から「1回のみの購入OK」という化粧品をお試しの特別価格で1回だけ注文したつもりだったが、実際には一定期間購入する必要のある定期購入だった
- 破格での申し込み締切がカウントダウン表示され、焦って申し込んでしまったら、3回まで購入しなければならない定期購入で解約を断られた
- 「いつでも解約できる」と書かれていたため、ネット通販による定期購入コースの初回限定1,980円スキンケアセットを注文した。2回目以降は解約しようと事業者に電話したら、解約金の支払いを求められた
代表的な事例を見てわかるのは、「実質無料」や「初回お試し〇%オフ」「1回のみ購入OK」「いつでも解約できる」「解約保障」などのうたい文句で、定期購入を申し込ませる手口だ。これに類似する言い回しで、お得感を強調するような商品には注意が必要だ。
解約しようと電話やメールで繰り返し事業者に連絡しても、一向につながらないというケースもある。そうならないため、購入ボタンをタップ・クリックする前に知っておきたいこと、確認すべきことを見ていこう。
その3:解約できない定期購入を回避するための確認ポイント
最後に、定期購入の解約トラブルを回避するための確認ポイントを取り上げる。
定期購入の契約とはどのようなものかを知る
定期購入の契約とは、定期的に商品購入やサービスを受ける契約のことだ。消費者側は、よく使う商品やサービスを都度申し込む必要がなく、長期間の契約を結ぶことで通常価格より値引きされるなどのメリットがある。事業者側にとっても、長期的に安定した収入を見込めるというメリットがあり、近年このビジネスモデルを採用する事業者が増えている。
注意しなければならないのは、定期購入はクーリング・オフできないという点だ。申込時に「そんなことは書かれていなかった」「1回だけのつもりだった」「もう十分だから解約したい」と思っても、無条件に解約できない。そのため、申込時には契約内容を隅々までチェックすることをおすすめする。
定期購入申込時のチェックポイント
すべての定期購入が悪質なのではないが、残念ながら一部によからぬ事業者が存在することも事実だ。そこで、申込時に確認しておくべき定期購入のチェックポイントを示す。申し込みの最終確認画面に、主な契約内容が示されていることを確認しよう。
- 商品名(定期購入だと明示されていること)
- 契約期間(期間と回数)
- 料金(初回、2回目以降など、料金が変わる場合はその金額)
- 消費税
- 送料(料金と別なのか、料金に含まれているのか)
- 支払総額(契約期間内の支払総額)
- 支払方法
- 配送方法
- 配送先
- 注文をやめるボタンがあること
このような情報が示されている場合、定期購入契約時に必要な情報が示されていると言える。また、2022年6月1日以降、改正特定商取引法により、定期購入契約の最終申込画面で、次の3点を明示していない場合や解約を妨害した場合には、行政処分の対象となることになった。
- 1回限りの購入か?
- 2回目からはいくらか?
- 解約方法は?
例えば、「〇カ月コース」「定期」「自動更新」「無期限」などの表示があれば、定期購入を意味する。2回目以降があるということだ。初回と2回目以降の料金が示されているかも確認しよう。解約方法の確認も重要だ。「1回限りで」「簡単に」「無料で」の言葉通りに解約できるのかチェックを忘れないでほしい。
以下のような場合にも、申込前に一旦手を止めて考え直す、申し込みをやめることをおすすめする。
- 最終確認画面に初回の契約内容だけが示されている
- 上記のような定期購入に必要な情報がまとめて示されておらず、離れたところに書かれている
- 画面に小さな文字で表示される情報が多く、大事な情報を読みにくくしている
- 注文「確認」ボタンが設けられておらず、注文「確定」ボタンだけが表示されている
- 「進む」や「次へ」ボタンしか表示されておらず、ブラウザバックで戻れることや閉じるボタンでやめられることも書かれていない
定期購入品を販売する事業者への規制は強化されたが、念のため、最終申込画面のスクリーンショットを残しておくことをおすすめする。
商品を受け取ってから気づいた場合の対処法
細心の注意を払ったつもりでも、うっかりしてしまうことは誰にでもあることだ。もし、申込後や商品を受け取ってしまった後に簡単に解約できない定期購入だと気づいたら、次の行動を取ろう。
- 解約のための電話・メールの記録をすべて残しておく
- 消費者ホットラインに相談する(電話番号 局番なし188)
- 法テラスに相談する
- 自治体の消費者センターに相談する
- 自治体の法律相談を利用する
大切なのは、ひとりで悩まずに、しかるべき機関にすぐに相談することだ。自分の身を守るため、ぜひ実践してほしい。