ダークストアとは?その仕組みは?
早速、ダークストアとその仕組みを見てみよう。
ダークストアとは?
ダークストアとは、ネット販売や宅配ビジネスにおける小型の物流拠点を意味する。拠点として存在するものの、基本的に顧客が何かを購入するために立ち寄ることはない。顧客向けの店舗ではなく、看板を出していない店舗もあることが、ダーク(英語で「隠された、秘密の」などの意味)の由来とされている。顧客があらかじめ注文しておいた商品の受け取りなら可能という店舗もある。
ダークストアが担っているのは、ネット販売や宅配ビジネスでのフルフィルメント業務だ。フルフィルメント業務とは、受注した商品のピックアップや梱包、箱詰め、配送(業)者への出荷など、受注から顧客への配送準備全体のこと。エリアによって異なる人気商品を切らさない在庫管理なども含まれる。
ダークストアという言葉が使われる際、拠点(店舗)そのものを指す場合とダークストアを活用したビジネスモデルを指す場合とがあるように見受けられる。ダークストア自体が日本ではまだ新しいため、現状ではふたつの解釈があることを押さえておこう。
ダークストアの利用方法
ダークストアを利用する方法は、ネットやアプリから注文をするだけとシンプルだ。配達エリアや配送時間、配達料は各社異なる。配達時間の最速は10分で、30分とするところが多く、中には2時間というところもある。
日本のダークストアと関連する国内ビジネス
海外では一般的になりつつあるダークストアだが、日本ではまだ新しく、その注目度は高い。ここでは日本のダークストアとダークストアに関連するビジネスを見ていこう。
ダークストアが注目されるふたつの理由
ダークストアが注目されるのには、大きくふたつの理由がある。コロナ禍によるネット販売の需要拡大がひとつ。もうひとつは、同じくコロナ禍で相次ぐ実店舗閉鎖の対策としてだ。アパレルや家電量販店、旅行代理店など、店舗閉鎖のニュースは、残念ながら後を絶たない。
空き店舗をそのままにしておくことは経営にとって大きな痛手となる可能性がある。コロナ禍を受け、日用品や食料品などはネットで割安に購入したいというニーズに対し、早く届けるという付加価値をつけた上で、空き店舗をダークストアとして活用する動きが加速しているといえよう。
日本のダークストア
ここで、日本のダークストアを見てみよう。主なダークストアは次の4つだ。
- イトーヨーカドーのネットスーパー西日暮里店
- OniGO
- Wolt Market
- Uber Eats
イトーヨーカドーのネットスーパー西日暮里店
2015年から営業をしているダークストアがある。イトーヨーカドーのネットスーパー西日暮里店だ。取り扱うのは日用品や生鮮食品など3万点とGMS(総合スーパー)ならではの品揃え。価格はネットスーパー独自のもので、当日注文、当日配送が可能だ。配達料は、冷凍食品など温度管理を必要とするかどうかで異なる。nanacoポイントがたまる、母子手帳の提示で一定期間配達料が安くなるなどのサービスがある。
OniGO
2021年8月、学芸大学からスタートしたOniGOは、10分で届く宅配スーパーだ。即配(即時配達)やQコマース(クイックコマース)とも呼ばれる。ヴィーガン向けの商品やソーダストリームがあるという点が、通常のスーパーとは異なるといえるだろう。配達料は一律300円だが、配達範囲はダークストアから1~2km圏内とされる。
Wolt Market
Wolt Marketは、フィンランド発のデリバリーサービスだ。日本では、2020年3月からサービスを開始、2021年8月に札幌に宅配専用スーパー(ダークストア)をオープンさせた。注文から配達までの時間は約30分。配達料は1km以内50円から距離に応じて上がっていく。最低注文金額の設定があり、サービス手数料もかかる。
Uber Eats
フードデリバリーのパイオニアともいえるUber Eatsがダークストア「ウーバーイーツマーケット」を兜町にオープンさせたのは2021年12月。生鮮食品や日用品なども取り扱う。フードデリバリーとは異なり最低注文金額の設定がなく、1品から注文可能だ。
ダークストアの個性は、取扱品目と品揃え、配達エリア、配達料、営業日、営業時間などによって決まってくる。一般的に配達にかかる料金は、配達料(配送料)、最低注文金額(その額を下回ると手数料が発生)、サービス手数料の3つだが、料金体系や設定金額はそれぞれに異なる。
ダークストアと関連する国内ビジネス
日本のダークストアとして紹介した4つの事例は、スーパーまたはフードデリバリーだ。1例目のイトーヨーカドーと同じくGMS(総合スーパー)のイオン、スーパーのライフなど、スーパー各社にもネットスーパーがある。配達料の引き下げや配達時間の短縮、時間指定など、利用してもらうためのサービス向上に余念がない。
フードデリバリーサービスでは、出前館がアスクルと連携し、食料品や日用品の即配サービスの実証実験を2021年7月から開始。その結果を受け、2022年1月には「Yahoo!マート by ASKUL」を発表、本格的に即配サービスに乗り出した。
空き店舗の活用では一歩先を行っている大手コンビニ各社も負けてはいない。宅配サービスに力を入れるローソンはUber Eatsと連携し、セブンイレブンのネットコンビニは最速30分で配達するとしている。
このように、ダークストア周辺のビジネスは活況を呈している。いずれディスカウントストアやホームセンターもダークストアを活用し始めるかもしれない。そう考えていくと、ダークストアの可能性はますます広がるばかりだ。
ダークストアの課題と期待したいこと
スピーディーな配達が大きな魅力のダークストアだが、その一方で課題もある。期待を込めて、今後の課題について考えてみよう。
ダークストアの課題
ダークストアの課題は、主に次の3つだといえる。
- 配達員の確保
- 取扱品目の拡充
- 立地の良い空き店舗の確保
どんなに配達のニーズがあっても、配達員がいなければビジネスは成り立たない。配達員は稼げる仕事だという認識がもっと広がる必要があるといえる。そのためには報酬や労働条件を含めて、見直しを迫られる可能性もあるだろう。特に、スーパーやコンビニなど、店内業務で採用した人に配達を任せようとすると、無用なトラブルを招きかねない。
取扱品目は食料品や日用品が中心だが、これは外出を控える人をはじめとして、時間を節約したい人や居住スペースの関係上まとめ買いを好まない人のニーズといえる。販売許可の必要な医薬品を取り込んでいくことで、外出しにくい、できない人にも対応できるようなサービスにしていけば、さらなる需要が見込めるだろう。
ダークストアは、店舗から数km圏内という限られた範囲を対象とするビジネスだ。立地の良い空き店舗を探すことや、見つかった場合の獲得競争が激しくなる可能性は否定できない。
また、ダークストアは、食料品や日用品を中心とした個人向けの小口取引ともいえる。何度も注文してくれる優良顧客に対してどのように接するか、配達員のマナーや地域とのつながりの意識も大切な要素として挙げておきたい。
ダークストアを中心として、配達が絡むさまざまな業界が今まさに動いている。今後の動向に注目しよう。