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エシカル消費とは?EC事業者がおさえておきたいポイント・注意点


 エシカル消費とは、「倫理的な消費」を意味します。昨今、提供される商品やサービスに対して、消費者が新たな視点で購入意思を決定する流れが定着しつつあるのです。 今回は、エシカル消費とはどのようなものか、定義や具体例、注意点などを詳しく解説します。

 最近、「エシカル消費」という言葉を聞く機会が少しずつ増えてきつつあります。環境に配慮した商品などは以前より市場に出回っており、多くの方に利用されていますが、エシカル消費はさらに踏み込んだ対応を求めるものです。

 消費者が商品やサービスの成り立ちにまで関心を寄せる流れができつつあることは、EC事業者にとっても軽視できないポイントといえます。

 この記事では、エシカル消費の基本的な特徴や注意点などを解説しますので、エシカル消費への理解を深めていきましょう。

エシカル消費とは?

SDGsイメージ

 エシカル消費について考える際は、まず言葉の定義をおさえておく必要があります。消費者庁の定義などを踏まえ、どのような意味を持つものなのかを解説します。

エシカル消費の定義

 「エシカル」は「倫理的な」という意味で、「エシカル消費」は「倫理的消費」とも呼ばれています。消費者自身が社会的な課題の解決を考慮し、社会的課題に配慮している事業者を応援することで、商品やサービスを選択、購入する行為のことです。

 具体的には、環境や人権などに配慮されている商品やサービスを購入するといった消費活動であり、世界的な取り組みとして推し進められています。

 エシカル消費は「持続可能な開発目標」(SDGs)が掲げる持続可能な生産・消費形態の確保という理念にも合致しており、「つくる責任 つかう責任」といった観点からも重視されているのです。

エシカル消費の重要性

 従来、商品やサービスが生み出される背景について、消費者が意識する機会はあまりありませんでした。しかし、商品の製造過程でで劣悪な労働環境が常態化していたり、絶滅が危惧される動植物が犠牲になっていたりすることが表面化するにつれて、そのような商品やサービスを選択しない消費者も増えてきました。

 特に、環境や人権に対する意識が高いヨーロッパでは、FSC認証やMSC認証のラベルをつけた商品が増えてきつつあります。

 FSC認証は、適切に管理された森林や樹木、リサイクル資源で作られた木材製品などに対する認証です。 MSC認証は、水産資源や環境に配慮した持続可能な漁業を行っていることを示す認証で、「海のエコラベル」はこれらの認証を取得した漁業で得られた水産物のことを指します。

  消費者がエシカル消費を意識する流れが強まりつつある現代において、事業者側も環境や人権に配慮した商品やサービスを提供する必要性が高まってきつつあるといえるでしょう。

国内における現状

 消費者庁が公表している2019年度「倫理的消費(エシカル消費)に関する消費者意識調査報告書」によれば、エシカル消費の認知度は、2016年度調査と比較すると、約2倍の約12.2%に増加したとされています。

 また、「エシカル消費につながる行動を実践している」と回答した割合は、2016年度は約29%でしたが、2019年度は約36.1%にまで上昇しました。

 このように、日本国内でもエシカル消費という言葉は少しずつ浸透しつつありますが、諸外国と比べるとエシカル消費は十分ではないのが現状です。

 SDGsが広まる流れのなかで、今後も徐々に浸透していくことが予測されています。

エシカル消費の4つの具体例

woman entrepreneur packs a handmade product in a cardboard box

 エシカル消費は消費者自身の判断で取り組めるものなので、実際に行動に移しやすいという特徴があります。 ここでは、エシカル消費の具体例を見ていきましょう。

フェアトレード商品を選ぶ

 フェアトレードとは、公平・公正な貿易のことで、フェアトレード商品とは、適正な価格で取引された原料を使っていたり、適正な対価を労働者に支払ったりしている商品のことを指します。

 安価な商品は消費者にとってメリットにもなり得ますが、適正な価格で取引が行われていない商品やサービスの場合、生産者に対してきちんと対価が支払われないなどの問題が発生していることもあります。

 フェアトレード商品は、商品やサービスが適正価格で取引することで、生産者の労働環境を改善し、生活を向上させることを目的とするものです。たとえば、コットン製品やコーヒーなどのように、フェアトレード認証製品には「国際フェアトレード認証ラベル」がついているので、消費者も買い物をするときの目印となります。

エコ商品を選ぶ

 環境に対する意識の高まりから、資源保護を目的としたエコ商品も増えつつあります。また、森林資源やエネルギーなど、限りある資源を有効活用するため、リサイクル素材を使った商品を目にする機会も増えてきました。 資源保護に関する認証を得た商品パッケージには、ラベルやマークなどが記載されているので、商品を選ぶときの材料にするとよいでしょう。

地元で生産された商品を選ぶ

 地産地消とは、特定の地域で生産された商品をその地域に住む消費者が消費することです。商品を購入することで地元の生産者を応援できるだけでなく、無駄な輸送が発生しないため、環境への配慮にもつながります。

 また、輸送コストを削減できる分、生産者に利益をもたらすこともできるため、環境にとっても生産者にとっても良い取り組みといえるでしょう。

寄付つきの商品を選ぶ

 購入金額の一部が寄付になる商品を選ぶこともエシカル消費です。売上の一部を被災地の復興に役立てる商品やサービスなどもその一例で、ほかにも教育機関や福祉団体、環境保護活動など、さまざまな寄付先があります。

エシカル消費における事業者の課題点

悩むクリエイティブ職の男性

  エシカル消費は消費者だけが取り組む活動ではなく、商品やサービスを提供する事業者側こそ取り組むべき活動といえます。

 エシカル消費を推進するうえで事業者が抱えがちな課題について知識を深め、より効果的に取り組んでいきましょう。

デザインに工夫が必要

 エシカル商品であることを消費者に理解してもらうには、パッケージの素材やデザインなどにも工夫が必要です。また、事業者として一貫した取り組みを行っていることをアピールするために、コーポレートメッセージを盛り込むこともあります。

 具体例としては、取得した国際認証をパッケージに記載したり、企業として支援したい国や地域の原材料をパッケージ素材として用いたりすることなどが挙げられます。

取り組みが認知されるまでに時間がかかる

 エシカル商品はどの企業でも名乗ることができることや、企業が実態以上に環境に配慮していると見せかける「グリーンウォッシュ」や「SDGsウォッシュ」が問題になるなど、信用を得づらいという側面があります。認知度が低い企業の場合、エシカル消費に対する取り組みが消費者に浸透するまで時間がかかることも少なくありません。

 また、エシカル商品はその内容が多岐にわたっていることから、認証マークやラベルの種類も多く、明確な認証制度がないことなども課題といえるでしょう。消費者にとってエシカルな商品を見分けることが難しいのも、信用を得るのに時間がかかる要因と言えるでしょう。

生産者と適正な取引を行っていることが伝わりづらい

 エシカル商品は、安価な原料で大量生産される商品と比べて、販売価格が高くなりがちです。とはいえ、生産者と適正な取引を行っていれば、価格を下げるのは難しい面があります。生産者と適正な取引を行った結果、現在の価格になっている点を消費者に理解してもらうには、地道な取り組みを続けていくことが大切です。エシカル商品が生産者の生活を向上させる点を伝えていき、理解を図っていくことが重要だといえます。

商品が手に入りづらい

 エシカル商品は少しずつ流通に乗るようにはなっていますが、まだそれほど多く出回っていません。日常的に利用するスーパーやコンビニなどで手軽に購入できるようになれば、消費者の目に触れる機会も増え、手に取りやすくなるでしょう。

 商品の流通については1社での取り組みでは難しい部分があるため、エシカル消費に賛同してくれる協力会社を募るなど、業界全体で取り組んでいくことが肝要です。

【事例】エシカル消費の取り組みを紹介

Choose the right direction for healthy and sustainable lifestyle with zero waste

 エシカル消費について有効な施策を実行していくには、すでに取り組んでいる企業の例から学ぶことも大切です。ここでは、エシカル消費を推進している3社を紹介します。

デイブレイク株式会社

 デイブレイク株式会社では、従来廃棄されていたフルーツを使ったフローズンフルーツ「HenoHeno」(ヘノヘノ)を販売しています。このような廃棄フルーツを減らす取り組みは、フードロス削減に貢献しているといえるでしょう。

 フルーツを冷凍することで、美味しさを長く保てるだけでなく、栄養が逃げることも防げます。

 これまで廃棄されていたものに付加価値をつけることも、エシカル消費においては重要なポイントです。

株式会社かわた

 オーガニック商品特化型のスーパーマーケット「クランデール」を展開する株式会社かわたは、2011年の東日本大震災を機に、「食の安心安全」を実現するためオーガニック商品への切り替えを図っています。

 国産の有機野菜や特別栽培の商品を中心に販売が行われており、食を通じて環境に配慮した取り組みを行っている事例です。

花王株式会社

 花王株式会社は、生活に密着した日用品などの製造・販売を手掛けるメーカーで、ESG活動に取り組む姿勢として「Kirei Lifestyle Plan」を掲げています。ESGとは、環境・社会・ガバナンスを意味する言葉で、エシカル消費とも密接にかかわる考え方です。

 同社ではESGビジョンを掲げるとともに、調達・輸送といった商品が流通するサイクルも含めて責任ある選択を行っていくという内容を宣言し、企業価値向上に取り組んでいます。

まとめ:エシカル消費を正しく理解して消費者のニーズに応えよう

 エシカル消費は倫理的消費といわれるものであり、消費者が商品やサービスが作られている背景まで意識して購入する消費行動を指します。生産者側もエシカル消費を意識した商品開発に取り組んでいく必要があり、さまざまな分野で取り組みが行われているところです。

 日本国内においてもエシカル消費の認知度は少しずつ高まりを見せており、SDGsへの関心とともに、将来的に大きな流れになると期待されています。

 エシカル消費への対応は、新たな消費者ニーズに応えるために必須といっても過言ではありません。 自社の顧客がどのようなものを求めているかを知るきっかけとして、エシカル消費の視点も取り入れてみるとよいでしょう。

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EC研究所(イーシーケンキュウジョ)

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