EC市場の成長で、宅配便の“再配達”も増加
電子商取引(EC)市場の拡大に伴い宅配便の取扱件数が増加しているが、受取人の不在などによる再配達も増加。配送の際の二酸化炭素排出量の増加、労働力不足への懸念が高まっている。国土交通省は、平成27年6月から矢野裕児 流通経済大学教授を座長とし、宅配事業者、通販会社などからなる検討会を開催し、再配達の削減に向けた基本的な考え方や具体的対策などについての報告書を発表した。
報告書によると、宅配再配達によって、営業用トラックの年間排出量の1%に相当する年約42万トンのCO2が発生しており、これは山手線の内側の2.5倍の面積のスギ林の年間の吸収量に相当する。また年間約1.8億時間、年約9万人分の労働力に相当するとしている。
初回配達で受け取れなかった理由1位は
「配達が来るのを知らなかった」
検討会では再配達が発生した原因を明確にし、どのような受取方法であれば再配達を防ぐことができたのかを調べるため、今年8月に消費者の意識調査を実施。ヤマト運輸、佐川急便、日本郵便が行う宅配便の配達の際に利用者にアンケートを配布した。その結果、再配達された荷物のうち、1回目の配達時間については「午前中」が最も多く約35%。次いで「把握していない」が約21%となっている。また、不在となった荷物の約7割が時間指定をしていなかった。
1回目の配達で受け取れなかった理由は「配達が来るのを知らなかった」が約42%で最も多く、「配達が来るのを知っていたが、用事ができて留守にしていた」が約26%、「もともと不在になる予定だったため、再配達してもらう予定だった」が約14%と、いわば「後日における再配達の依頼を前提とした不在」があわせて4割を占めた。
主な自由意見として、「通販会社のホームページで注文時の日時指定は追加料金がかかるためしなかった」、「もう少し遅い時間選択があれば受け取れた」、「配達時間が2-3時間の枠ではなく、30分単位であれば受け取りやすい」、「定期便等で2回目以降の日時指定ができない」などの意見が挙がった。
どうしたら1回の配達で受け取れるのか
では、どのような方法であれば1回で確実に受け取ることができたのか。有人での受取方法としては「コンビニのレジ」の活用を希望する人が最も多く、「自宅付近のコンビニのレジ」が約7割、「勤務地のコンビニのレジ」が約2割を占めた(複数回答可)。無人での受取方法では約6割が「自宅付近のコンビニに設置されたロッカー」、約3割が「自宅付近の駅に設置されたロッカー」での受け取りを希望している。また、「配達前に電話、メール等で事前通知がほしい」、「時間変更をできるようにしてほしい」といった声があった。
また、「受取時にポイントが付与される等のメリットがある場合、1回での受取の可能性が高まるか?」の問いに対しては、約半数の回答者がポイントなどのメリットがあれば受け取る努力をし、そのうち約半数の回答者が100円相当、約9割の回答者が100円以下相当のポイントなどが妥当と回答した。
検討会では、今後取り組むべき内容として、消費者と宅配事業者などとの間のコミュニケーション強化、消費者の受取への積極参加の促進、コンビニ受取の地域インフラ化、鉄道駅などでの受取インフラ整備の促進を掲げている。
【アンケートの実施方法】
アンケート調査票の配布については、ヤマト運輸(株)、佐川急便(株)、日本郵便(株)の協力を得て、3社が行う宅配便の配達の中で、平成27年8月4日から1週間の間に、主に都内で発生した再配達の際、配達担当者より荷物とともに手渡した。アンケート調査票を受け取った消費者は回答記入後郵送、あるいは国土交通省のホームページに開設したアンケート回答用ウェブページ上で回答を行った。また、ウェブページからは、別途、上記3社より手渡された消費者以外も回答できるようにし、同年8月4日から8月31日までの期間、回答を募った。
【アンケート回答者の内訳】
全体の回答者1304名のうち、男性は783名、女性520名で(無回答1名)。また、東京都在住者531名(うち、23区内337名、23区外159名、無回答35名)、東京都以外の在住者773名から回答を得た。また、アンケート実施の経路別では、アンケート用紙を宅配事業者から手渡された回答者は442名、国交省ウェブページを見た回答者は862名。年代別では、20代、30代、40代が最も多く、これらで合計約8割を占めており、住居のタイプ別では、共同住宅に住んでいる回答者が6割、戸建てが4割を占めた。