東京大学松尾研究室発、大規模言語モデル(LLM)の社会実装を進めるELYZAと、KDDI、KDDI Digital Divergence Holdings(以下、KDDI Digital Divergence)は、資本業務提携の締結を発表。2024年4月1日を目途に、ELYZAの株式をKDDIが43.4%、KDDI Digital Divergenceが10.0%保有し、ELYZAはKDDIの連結子会社となる。
ELYZAはKDDIグループの支援を受けながら、将来的にはスタートアップが大企業のサポートを得て成長し上場を目指す「スイングバイIPO」を目指すという。
同提携により3社は、ELYZAの持つLLMの研究開発力とKDDIグループの計算基盤、ネットワーク資源などのアセットを組み合わせ、生成AIの社会実装を加速させる考え。また、生成AIの利用や社会実装を加速するための人財組織を共同で設置し、2024年春から順次、生成AI関連のサービス提供を企業や自治体向けに進めていくとのこと。
具体的なサービスとしては、次の3つの提供を予定している。
- オープンモデル活用型の日本語汎用LLM開発
- 領域特化型のLLM開発
- 生成AIを活用したDX支援・AI SaaSの提供
領域特化型のLLMにおいては、KDDIの関連会社でありデジタルBPO事業を展開するアルティウスリンクと連携し、コンタクトセンター特化型LLM開発・実装も視野に入れ、企業・自治体のコンタクトセンターの顧客対応業務のDXを推進。今後、さらに金融・小売をはじめとしたほかの特定領域においても、順次サービスを展開する予定となっている。
同提携による協業内容は、次のとおり。
オープンモデル活用型の日本語汎用LLM開発
ELYZAは、2019年からLLMの研究開発を行っており、ChatGPT登場以降も汎用LLMの開発を実施。70億パラメータ、130億パラメータのLLMを商用利用可能なかたちで公開してきた。また、2024年3月12日に、日本語特化のLLMシリーズである「ELYZA LLM for JP」も発表。大規模な追加事前学習とPost-trainingを実施することで、グローバルモデルに匹敵する700億パラメータのLLMの開発に成功し、デモ公開も実施している。
今後は、KDDIグループの計算基盤とELYZAが培ってきたLLM研究開発力を集結させることで、オープンモデルを活用した日本語汎用LLMの研究開発をさらに加速させていく。
なお、高性能な日本語LLMについては、2024年春からAPIサービスも順次提供するとしている。
領域特化型のLLM開発
各企業/業界/業務に特化した領域特化型LLMを開発・提供し、グローバルの汎用LLMを利用するだけでは解けない課題解決を目指す。開発にあたっては、グローバルの汎用LLMが学習していない領域のデータを追加学習し、個別領域における性能の改善・カスタマイズをおこなう。
生成AIを活用したDX支援・AI SaaS提供
KDDIは、KDDI Digital Divergenceを2022年に設立し、「アイレット」や「KDDIアジャイル開発センター」「フライウィール」など、DX推進に必須となるケイパビリティを持つプロフェッショナルな協動体としてグループ連携しながら、持続的なDXを支援してきた。
同提携以降は、KDDIの法人の顧客基盤・KDDI Digital Divergence Groupのクラウド・アジャイル開発・データ活用などのデジタル技術に加え、ELYZAが持つ汎用ならびに領域特化型のLLM開発力や、PoCにとどまらない生成AIの現場実装力なども活かし、生成AIを活用したDX支援サービスを強化していく。
また、生成AIを組み込んだAI SaaSの共同開発や共同販売を通じ、より多くの企業や自治体での生成AIの本導入を広げていくとしている。