博報堂のシンクタンク博報堂買物研究所は、EC領域に特化した組織横断型プロジェクト「HAKUHODO EC+」とともに、次世代の買物の主役となるZ世代の買物行動・買物価値観の深堀、また、ライブコマース・クイックコマースなど次世代コマースの利用動向の把握を目的とした「Z世代×ニューコマース調査」を実施した。同調査は、博報堂DYグループ「ショッパーマーケティング・イニシアティブ」(博報堂DYグループ12社横断の戦略組織)の取り組みのひとつである。
Z世代(15-25歳)特有のコマース行動を把握するため、今回の調査では主にY(ミレニアル)世代(26-41歳)とX世代(42-59歳)と比較している。
調査結果から見えたZ世代特有のコマース行動を買物研究所×HAKUHODO EC+では「バイヤー型消費」と名付けた。Z世代のコマース行動には「積極的に情報収集をして、自分が欲しい情報を自ら取りに行く(開拓志向)」、「良いものを選ぶために国内・海外問わずにフラットに製品を購入する(越境志向)」、「自分なりの情報筋を確保しつつ、本当に信用できる情報かを見定める(見極志向)」、「良いと判断したものは、自分の直感を信じて即決で購入する(即決志向)」という特徴が見られ、バイヤーさながらに自らの足で積極的に情報を獲得し、情報の真偽を見極めながらコマース行動を行う姿が浮き彫りとなった。
同調査結果の詳細は、次のとおり。
Z世代の「バイヤー型消費」の4つの特徴
「開拓志向」
トレンド商品は取り入れたいが、被り回避のため、SNSで人と被らない商品を探す
- 定量調査のなかで「トレンドや流行りの商品を選ぶ」に対して、あてはまると答えるZ世代は39%。Y世代よりも+12pt高い結果に(Y世代27%、X世代16%)。
- 一方で「人と被らないブランド・メーカーを選びたい」に対して、あてはまると答えるZ世代は42%。Y世代よりも+6pt高い結果に(Y世代35%、X世代35%)。
- 「店舗よりもSNSで商品を探した方が人と被らないファッションを探すことができると感じる」に対して、あてはまると答えるZ世代が45%。Y世代よりも+16pt高い結果に(Y世代29%、X世代21%)。
趣味や好きなことを深く極めていくなかでの多少の買物の失敗は厭わない「研究消費」
- 定量調査のなかで「趣味や好きなことを深く極めたい」に対して、あてはまると答えるZ世代は74%。Y世代よりも+10pt高い結果に。(Y世代64%、X世代63%)
- 自分が本当に極めたい趣味の買物に関しては、多少の失敗はいとわない。また、企業の裏事情なども収集するなど、好きなものに関してはすべての知識を網羅したいという欲求が存在する。
ライブ/ソーシャルコマースは“新しいブランドとの出会いの場”としてZ世代に活用されている
- 定量調査のなかで「ライブコマース内で扱う商品のことを、事前にどの程度知っていることが多い」かに対して、Z・Y世代ともにライブコマースユーザーの42%が「新しい商品を見つけるために視聴」と回答。
- また、Z世代がソーシャルコマースを利用する理由TOP5は、Y世代の利用理由TOP5と比較すると、Z世代の方が新しい商品との出会いを求めてソーシャルコマースを活用している姿が見て取れる。
- 「お店に行かなくても商品が買えるから(28%)」
- 「欲しいと思う商品が多いから(24%)」
- 「今までまったく知らなかった商品を知ることができるから(22%)」
- 「思いがけず良い商品に出会えるから(20%)」
- 「珍しい商品に出会えるから(20%)」
「越境志向」
日本人や身近な人からの評価が高ければ、海外サービスを駆使して自分が知らない海外メーカーの商品でも購入
- 定量調査からは大手ECモールだけではなく、海外の新興ECサイトを通じて購買を行うユーザーも一定数見られた。そのうえで、「自分が知らない海外メーカーの商品でも、SNS上で日本人の評価が高ければ購入したいと思う」と回答したZ世代は57%。Y世代よりも+14pt高い結果に。(Y世代43%、X世代31%)
- 身近な人のお墨付きがあれば海外サービスを駆使して購入を行うことがわかった。
日本のブランド・メーカーを応援したいという意識は他世代よりも薄い
- 定量調査のなかで「日本のブランド・メーカーを応援したい」に対して、あてはまると答えるZ世代は53%。Y世代よりも-7ptという結果に。(Y世代61%、X世代66%)
「見極志向」
企業のアカウントよりも「個人のアカウント」からの情報収集行動が増加
- 定量調査のなかで「企業が発信する情報よりも、評価が高い個人のSNSの情報を参考にして買うことが多い」にあてはまると回答したZ世代は51%。Y世代よりも+16ptという結果に。(Y世代35%、X世代23%)
- 自分が好きなインフルエンサーをフォローしている個人のコメントを参考に買物を行う姿も見られた。
- また、安易にSNS上で企業アカウントをフォローせず、自分が信頼できる情報だけが取得できるように自分のSNSアカウントを調整していることがうかがえた。
企業の情報透明性を見極める
- 定量調査のなかで「製造プロセスや情報を公開している(透明性のある)ブランド・商品を選びたいと思う」にあてはまると回答したZ世代は43%。Y世代よりも+5ptの結果に。(Y世代38%、X世代39%)
「即決志向」
Z世代は良いと思った商品を「忘れないために即決で購入」する
- 定量調査のなかで「衝動買いをよくする」と答えたZ世代は37%。Y世代よりも+7ptの結果に。(Y世代30%、X世代19%)
- 本当に欲しいものは衝動的に購入していることがわかった。
クイックコマースを活用しながら時間を捻出
- 定量調査のなかでクイックコマースユーザーに対して、クイックコマース利用理由を聞いたところ、「自由に使える時間が増えたから」とZ世代の20%が回答。Y世代よりも+5ptという結果に(Y世代:15%、X世代:15%)
- さらにZ世代のクイックコマースユーザーにクイックコマース利用理由を自由回答で聞いたところ、体力・気力がないとき、手が離せないとき、外出が難しいときなどのY・X世代にも見られるクイックコマースの利用理由以外に、「大事な時間を確保したいとき」、「欲しいものをすぐに手に入れたいとき」という利用理由はZ世代に顕著に見られ、時間の使い方への意識が高いZ世代ならではのクイックコマースの使い方が見てとれた。
調査概要
- 調査時期:2023年1月
- 調査地域:日本全国
- 調査対象:15~59歳 男女 かつ直近1年以内EC利用者
- 有効回答数:3,843サンプル
- 調査手法:インターネットリサーチ
- 調査委託先:H.M.マーケティングリサーチ