NECは、過去のデータで学習したAIが運用時に最新の状況に対応できなくなることで起こる予測精度の低下の原因を自動で分析・可視化する技術と、再学習の際、正解していたデータを不正解にせず一貫性を維持する高度な再学習を行う技術のふたつの機械学習運用技術を開発したことを発表した。
従来のデータ分析におけるAIは、運用中の社会環境の変化によって開発時点で学習したデータから傾向が変化し、予測精度が低下するということが発生する。たとえば、小売店で需要予測を行うAIに対し、近隣にマンションが建設されファミリー層の利用者が増えるケースなどがあげられる。
これに対し今回発表された技術は、データサイエンティストなどの専門家でなくても、時間・コストをかけずに期待される予測精度を保ちながらAI運用ができるMLOps(Machine Learning Operations)の実現が可能となる。同技術は提供中の「NEC MLOpsサービス」にて2023年度中に活用予定となっている。
同社が今回開発した技術は、MLOpsツールとして一般的な監視の自動化だけでなく、原因分析および可視化を行う技術と、正解していたデータを再学習後に不正解にせず一貫性を維持する高度な再学習を可能にする技術。これらを単独または組み合わせて活用することでAIの精度を維持しながら時間・コストをかけずに運用することが可能となる。
AI運用時の精度低下の原因を自動で分析し可視化する技術
従来は、たとえば需要予測であれば、専門家が過去の売買データや気温など多数のデータから精度低下の原因を手動で分析していた。それに対し同技術は、学習時と運用時のデータの傾向変化や予測への影響度などの指標を独自に組み合わせて精度低下の原因を自動で分析し、注目すべきデータを根拠とともにレポートとして提示が可能となる。これにより、専門性を有さない人でも短時間で精度低下の原因分析が実現できる。NECが実施した実証では、精度低下の原因分析の工数を約50%削減することを確認したとのこと。
正解していたデータを不正解にせず一貫性を維持し高度な再学習を行う技術
従来の再学習では、全体的な精度は向上するものの、再学習前に正解していたデータの一部を不正解としてしまう部分的な劣化が発生することがあった。このような一貫性の低い再学習は運用者の混乱を招きAIの信頼性を損なう恐れがある。
それに対し同技術は、正解したデータの重みを大きくし再学習することで、正解部分を継続的に正解し、部分的な劣化を防止。これは機器故障予測や金融の不正取引検知など、まれにしか発生しない事象を扱う不均衡データの再学習に対して非常に有効であるという。
NECは、さまざまなAIを活用したシステムの開発、運用実績と蓄積された豊富なノウハウ、ITベンダーとしてのケイパビリティに、今回開発した先進技術を組み合わせることにより、顧客の開発から運用までトータルでAI活用を支援し、DX推進に貢献する。