転売とは
転売とは、購入した商品を他の人に売ることで、新品・中古品問わずに購入したものを他人に売り渡すと転売となります。
転売と聞くと「悪いこと」というイメージがある人も多いかもしれませんが、転売行為自体は商取引になるため違法ではありません。そのため、副業で転売をしている人も多く見られます。
不正転売・悪質転売とは
転売自体は違法ではありませんが、中には問題になるケースもあり、「不正転売」「悪質転売」などと言われています。
不正転売・悪質転売とは、事業者の営業を妨害したり、その商品が欲しい人に届かなくなったりするケースです。たとえば、買い占めや高額転売、転売を禁止している商品の転売などが該当します。
転売屋・転売ヤーとは
他人のことは考えず商品を買い占め、定価よりも高値で売りさばく人を「転売ヤー(転売屋)」と言います。
転売ヤーとは、「転売」と「バイヤー」を掛け合わせてできた造語です。限定商品や新発売の注目商品が発売されるたびに、ニュースやネットなどで商品を買い占める転売ヤーたちの問題行動が取り上げられています。 2020年には、ゲーム機の「PlayStation®5」や「Nintendo Switch」などが転売ヤーにより高値で転売され、大きな話題となりました。
そんな転売ヤーに良い印象を持っている消費者はあまりおらず、むしろ転売ヤー対策を何も行わない店舗に不満を持つ人が少なくありません。そのため、今後販売側がより消費者の信頼を得るためには、EC事業者をはじめとする販売側が転売ヤー対策をする必要があるでしょう。
転売と販売の違い
販売とは「商品を売ること」のため、転売とどう違うのかわからないという人も多いのではないでしょうか。一般的に「販売」は、メーカーや問屋から仕入れた商品を売ることです。
一方、「転売」は消費者向けの小売店や一般消費者などから手に入れた商品を売ることを指します。
転売とせどりの違い
転売と「せどり」を同じ意味だと認識している人は少なくありません。似通ったビジネス形態ではあるものの、転売とせどりは異なります。
せどりは、もともと古本市場にて使われていた言葉です。価値の高い古本や掘り出し物を見つけ出して安い値段で仕入れ、価値のわかる人に対して高い値段で販売する人たちを指します。最近では、せどりは古本市場だけでなく、リサイクルショップやフリマアプリなどでゲームソフトやおもちゃ、家電製品なども扱うようになっています。
せどりは基本的に中古品を安い値段で仕入れて高く販売するのに対し、転売は定価や定価に近い妥当な金額で仕入れてから高く釣り上げて販売するという点が異なります。
フリマサイト「メルカリ」は転売できる?
近年ユーザー数が増加しているフリマサイト「メルカリ」。メルカリを使って転売をしている人を見かけることも少なくありません。
メルカリは、本来であれば「自分が不要になったものを販売する」という目的で運営されているため、自身で必要なくなったものを転売する行為自体は禁止されていません。しかし禁止行為は細かく規定されていて、「無在庫販売」や「虚偽の商品説明・ブランド設定」などが禁止されています。
また、「電子チケットや電子クーポン・QRコードなどの電子データ」や「現金・金券類・カード類」などの取引も禁止されています。「定価よりも高額な価格設定」や「同一商品の大量出品」などは通報されてしまうなど、転売を見なされる行為があればアカウントが停止する場合もあります。
転売ヤーが減らない理由
転売ヤーが減らないのは、そもそも市場が健全に機能していないからです。 転売ヤーが目をつける商品というのは、需要に対して供給が追いついていない商品です。
たとえば、2020年にコロナが急速に流行りだし、それに伴いマスクや消毒液などの製造が追いつかず、オークションサイトやフリマアプリなどで高額販売されたことは記憶に新しいでしょう。マスクは当時、通常100枚入り1,000円程度の商品が、数万円で販売されていましたが、それでも即売り切れになっていました。
このように、需要に対して供給が追いついていない商品を高値で販売しても、本当にその商品を欲しい人は高額で買ってしまうため、結果的に転売ヤーが減らないのだと考えられます。
転売ヤーは法で裁けない
現時点では、転売行為を取り締まる法律はありません。2019年6月にスポーツ観戦やライブチケットなどの転売を規制する「チケット不正転売禁止法」が施行されましたが、それ以外の商品に関しては未だに対策がなされていない状態です。
しかし「チケット不正転売禁止法」に違反した人が逮捕されたり、取り締まりが強化されたりすることで、今後転売行為を取り締まる法律ができる可能性もあるでしょう。それまでは、販売側が独自に転売ヤー対策をする必要があります。
転売されやすい商品は? 転売禁止の商品はある?
世の中には膨大な商品が流通していますが、その中でも転売されやすい商品があります。転売が問題になって転売禁止となっている商品もあるため、頭に入れておきましょう。
チケット
コンサートやイベントなどのチケットは高額でも手に入れたいという人が多いため、転売されやすい傾向にあります。
しかし、あまりにも定価とかけ離れた高額な設定が多く大きな問題となっていたため、2019年6月からチケットの高額転売を禁止する「チケット不正転売禁止法」が施行されました。
また、販売元が転売を禁止している場合もあります。
ゲーム
人気のゲームソフトやゲーム機は、なかなか手に入りにくい状況のため転売されるケースが少なくありません。
最近では、「PlayStation 5」や「Nintendo Switch 2」の供給が追い付いていない状況だったため、メルカリでの高額転売が見受けられることもありました。ただし、製造・販売事業者が転売対策を行うケースも増えつつあります。
限定・コラボ商品
販売期間や販売数の制限がある限定品やコラボ商品は、需要が高まりやすいため転売されやすい傾向です。転売自体は禁止されていませんが、組織的に大量購入して転売するケースもあり大きな問題となっています。
転売ヤーの購入による販売側のデメリットとは
企業は、自社の商品を欲しい人のために商品の企画や生産を行っていますが、場合によっては転売ヤ―に購入されることもあるでしょう。転売ヤーの購入により、販売側にはどのようなデメリットがあるのか見ていきましょう。
企業・商品イメージの低下
欲しい商品を買えなかった消費者は、転売ヤーが悪いとわかりつつも、何も対策をしていない販売側にも嫌悪感を抱く可能性があります。つまり、顧客からの信頼を失ってしまうのです。
販売価格・売上への影響
転売ヤーは、仕入れ値と売値の差額で利益を取っています。何らかの方法で自社商品を安い価格で仕入れられたとして、自社店舗よりも安い売値で販売されてしまうと、消費者は転売ヤーから購入するようになってしまいます。結果として、自社店舗での売上が減ってしまうでしょう。
また、転売ヤーに対抗するために自社店舗でも安い売値をつけてしまうと、販売価格が適正ではなくなってしまいます。
転売対策が必要になる
転売が横行するようになれば転売対策を取る必要が出てくるため、販売元の企業にとっては大きなリソースを割かなければなりません。新たな人員を確保したりコストをかけたりしなければならず、企業経営にも影響する可能性があります。
企業の転売ヤー対策事例を紹介
ここでは、転売ヤー対策をしている企業の事例を紹介します。
ノジマ
家電量販店のノジマでは、「本当に必要としているお客様に商品をお届けしたい」という思いから、次の転売ヤー対策を行っています。
- 抽選販売
- 購入履歴の確認
- 独自調査で明らかな転売目的の購入であることの確認が取れた場合、ノジマモバイル会員の登録取消し
- フリマサイトで覆面調査をし、直接お電話して対象商品を出品停止
- 小型バーコードリーダーの使用をお断り
- 転売目的とした購入をした人のわかる仕組み
「購入履歴の確認」では、担当部署の職員が目視で購入履歴を調査しているようです。過去のPS5の抽選販売時は、12万件の応募すべてを目視で調査しており、転売ヤーの徹底的な対策ぶりが伺えます。
方法等の具体的詳細を申し上げることができませんが、
— ノジマ(nojima) (@nojima_official) December 7, 2020
現在該当部署が、応募総数約12万件に対し、
1件ずつ目視での最終確認を行い、
転売目的での購入希望者でないかどうかの精査を行っておりますので、ご理解いただければと存じます。
この度はご迷惑をお掛けし、誠に申し訳ございません。
ヨドバシカメラ
同じく家電量販店のヨドバシカメラでは、過去に「ポケモンカードゲームBOX」を購入者へ渡す際、外装ビニールを外してから提供するという転売ヤー対策を行いTwitterで話題となりました。
その対策への反応では「コレクション用に購入したい人には残念」といった声もありましたが、「他のカードゲームもやってほしい」「すべての販売店舗がこうなってほしい」など、評価する声も多く上がっていました。
また、ヨドバシカメラでは「METAL BUILD エヴァンゲリオン2号機」の予約受付の際、並んでいる客に対し、商品名を聞いて言えなかった客には予約を断るといった転売ヤー対策も行っていました。
その際の光景がSNSに投稿され、商品名を言えなかった客の多くが中国人だったため、中には「人種差別だ」「やり方が悪い」と批判する声もありました。 ただ、それ以上に「ナイスヨドバシカメラ!」「商品名を言えないのに欲しいのはありえない。なかなかいい案だと思う」などの声も多く上がっています。
商品名を言えなかった場合は予約を受け付けない、とまではしなくても、商品名を言えるか確認し、言えなかった場合は次回以降何かしら商品を予約した際に予約をキャンセルする、といった対策は行うべきかもしれません。
SONY
2024円11月に発売された「PlayStation 5 Pro 30周年アニバーサリー リミテッドエディション 特別セット」。この商品の発売時に、SONYは転売ヤー対策のため、今までにない購入条件をつけました。それは「PS5とPS4いずれか、または双方のプレイ時間が合計で30時間以上」という内容です。
この条件をつけたことにより、PS4やPS5を利用していない転売ヤーは購入できないということになります。今までPSを利用してきたゲームファンに新商品が届くようにという配慮が感じられます。SNS上では今回の新たな転売ヤー対策に好意的な声が見受けられました。
任天堂
2025年6月5日に発売された「Nintendo Switch 2」。この商品の販売時に任天堂が行った転売ヤー対策も話題になりました。
その条件は「2025年2月28日時点で、Nintendo Switchソフトのプレイ時間が50時間以上であること(※体験版ソフト、無料ソフトは除く)」「応募時点で『Nintendo Switch Online』に累積1年以上の加入期間があり、応募時にも加入していること」。すべての条件を満たしていなければ応募ができません。
また、任天堂はフリマサイトへの不正な出品を防ぐためにメルカリ、LINEヤフー、楽天グループに協力を仰ぎ、不正な出品行為を防止する取り組みも実施しています。
「転売対策サービス」を利用したケース
自社で転売対策のノウハウや人材が不足している企業に対し、転売対策サービスを提供している企業もあります。
ECモールマーケティングを手がける株式会社Minatoは、株式会社生活総合サービスの主力商品「すっぽん小町」の転売対策を支援しています。転売状況の調査から、転売事業者への転売取り下げの申し立てなどを支援したことで、公式ショップでの売上が大きく改善される結果となったそうです。
転売ヤー対策で転売屋・転売ヤー減少へ
転売ヤーを取り締まる法律は、残念ながらまだありません。しかし、転売ヤー対策をする店舗が増えれば、転売ヤーが商品を購入できる店舗は少なくなるため、必然的に転売ヤーが減っていくと考えられます。
最近では家電量販店を中心に、転売ヤー対策を行っている店舗がどんどん増えてきました。そんな中、転売ヤー対策をせずにいる店舗は「転売に寛容な店舗」だと転売ヤーから目をつけられてしまいます。
転売ヤーであふれる店舗では、一般の客に商品が行き渡らないため、客足も次第に遠のき、顧客からの信頼もなくなってしまうでしょう。そうならないためにも、自らできる転売ヤー対策をして、本当に商品を必要としている人に届けられるよう、販売側は努力する必要があるのです。今回紹介した事例を参考に、転売ヤー対策を行い、顧客との信頼関係を強めてください。