転売ヤーとは
他人のことは考えず商品を買い占め、定価よりも高値で売りさばく転売ヤー(転売屋)。
転売ヤーとは、「転売」と「バイヤー」を掛け合わせてできた造語です。限定商品や新発売の注目商品が発売されるたびに、ニュースやネットなどで商品を買い占める転売ヤーたちの問題行動が取り上げられています。 2020年には、ゲーム機の「PlayStation®5」や「Nintendo Switch」などが転売ヤーにより高値で転売され、大きな話題となりました。
そんな転売ヤーに良い印象を持っている消費者はあまりおらず、むしろ転売ヤー対策をなにも行わない店舗に不満を持つ人が少なくありません。そのため、今後販売側がより消費者の信頼を得るためには、EC事業者をはじめとする販売側が転売ヤー対策をする必要があるといえるでしょう。
転売ヤーが減らない理由
転売ヤーが減らないのは、そもそも市場が健全に機能していないからです。 転売ヤーが目をつける商品というのは、需要に対して供給が追いついていない商品です。
例えば、2020年にコロナが急速に流行りだし、それに伴いマスクや消毒液などの製造が追いつかず、オークションサイトやフリマアプリなどで高額販売されたことは記憶に新しいでしょう。マスクは当時、通常100枚入り1,000円程度の商品が、数万円で販売されていましたが、それでも即売り切れになっていました。
このように、需要に対して供給が追いついていない商品を高値で販売しても、本当にその商品を欲しい人は高額で買ってしまうため、結果的に転売ヤーが減らないのだと考えられます。
転売ヤーは法で裁けない
現時点では、転売行為を取り締まる法律はありません。2019年6月にスポーツ観戦やライブチケットなどの転売を規制する「チケット不正転売禁止法」が施行されましたが、それ以外の商品に関しては未だに対策がなされていない状態です。
しかし「チケット不正転売禁止法」に違反した人が逮捕されたり、取り締まりが強化されたりすることで、今後転売行為を取り締まる法律ができる可能性もあるでしょう。それまでは、販売側が独自に転売ヤー対策をする必要があります。
なぜ販売側は転売ヤー対策をする必要があるのか
ここでは、販売側が転売ヤー対策をするべき理由について解説していきます。
顧客からの信用を失う
欲しい商品を買えなかった消費者は、転売ヤーが悪いとわかりつつも、何も対策をしていない販売側にも嫌悪感を抱く可能性があります。つまり、顧客からの信頼を失ってしまうのです。
「転売屋にでも商品を売切れるならそれでいい」と考える販売者も中にはいるかもしれません。しかし、商売は商品を売ればそれで終わりではありません。次もこのお店で買いたい、この商品はこのお店でしか買わないと顧客から思ってもらえるように信頼関係を築くことが、長く商売を続ける秘訣です。
ノジマの事例:目視による転売ヤーの見極め
家電量販店のノジマでは、「本当に必要としているお客様に商品をお届けしたい」という思いから、次の転売ヤー対策を行っています。
- 抽選販売
- 購入履歴の確認
- 独自調査で明らかな転売目的の購入であることの確認が取れた場合、ノジマモバイル会員の登録取消し
- フリマサイトで覆面調査をし、直接お電話して対象商品を出品停止
- 小型バーコードリーダーの使用をお断り
- 転売目的とした購入をした人のわかる仕組み
「購入履歴の確認」では、担当部署の職員が目視で購入履歴を調査しているようです。過去のPS5の抽選販売時は、12万件の応募すべてを目視で調査しており、転売ヤーの徹底的な対策ぶりが伺えます。
方法等の具体的詳細を申し上げることができませんが、
— ノジマ(nojima) (@nojima_official) December 7, 2020
現在該当部署が、応募総数約12万件に対し、
1件ずつ目視での最終確認を行い、
転売目的での購入希望者でないかどうかの精査を行っておりますので、ご理解いただければと存じます。
この度はご迷惑をお掛けし、誠に申し訳ございません。
ヨドバシカメラカメラの事例:外装ビニールから出して商品を受け渡す
同じく家電量販店のヨドバシカメラカメラでは、過去に「ポケモンカードゲームBOX」を購入者へ渡す際、外装ビニールを外してから提供するという転売ヤー対策を行いTwitterで話題となりました。
その対策への反応では「コレクション用に購入したい人には残念」といった声もありましたが、「他のカードゲームもやってほしい」「すべての販売店舗がこうなってほしい」など、評価する声も多く上がっていました。
また、ヨドバシカメラでは「METAL BUILD エヴァンゲリオン2号機」の予約受付の際、並んでいる客に対し、商品名を聞いて言えなかった客には予約を断るといった転売ヤー対策も行っていました。
その際の光景がSNSに投稿され、商品名を言えなかった客の多くが中国人だったため、中には「人種差別だ」「やり方が悪い」と批判する声もありました。 ただ、それ以上に「ナイスヨドバシカメラ!」「商品名を言えないのに欲しいのはありえない。なかなかいい案だと思う」などの声も多く上がっています。
商品名を言えなかった場合は予約を受け付けない、とまではしなくても、商品名を言えるか確認し、言えなかった場合は次回以降何かしら商品を予約した際に予約をキャンセルする、といった対策は行うべきかもしれません。
ちょっと危ない転売ヤーの対策例も…
行き過ぎた転売ヤー対策は、客とのトラブルに発展する危険性もあります。
2019年には、日本のロリータファッションブランド「Angelic Pretty」の上海店が行った転売ヤー対策が原因で客が暴れ、警察沙汰になる事件に発展しました。
「Angelic Pretty」は、開店3周年を記念した限定商品の販売に際し、購入できるのはロリータファッションを着用している人のみとオフィシャルサイトで告知。しかし、客の中にはロリータファッションを身にまとった男性客もいて、店舗側は転売目的を疑い、証拠として男性客を撮影。これに激怒した男性客と店舗側の間でトラブルになり、人が多かった現場では一部の客が押し付けられてガラス戸が破損し、警察が出動する騒動となりました。
これは海外の事例ですが、転売ヤー対策のやり方を間違うと客との間に溝ができ、トラブルにもなりかねないため注意が必要です。
転売ヤー対策をする店舗が増えることで転売屋は減る!
転売ヤーを取り締まる法律は、残念ながらまだありません。しかし、転売ヤー対策をする店舗が増えれば、転売ヤーが商品を購入できる店舗は少なくなるため、必然的に転売ヤーが減っていくと考えられます。
最近では家電量販店を中心に、転売ヤー対策を行っている店舗がどんどん増えてきました。そんな中、転売ヤー対策をせずにいる店舗は「転売に寛容な店舗」だと転売ヤーから目をつけられてしまいます。
転売ヤーであふれる店舗では、一般の客に商品が行き渡らないため、客足も次第に遠のき、顧客からの信頼もなくなってしまうでしょう。そうならないためにも、自らできる転売ヤー対策をして、本当に商品を必要としている人に届けられるよう、販売側は努力する必要があるのです。今回紹介した事例を参考に、転売ヤー対策を行い、顧客との信頼関係を強めてください。