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ECzine Day 2024 June

2024年6月6日(木)10:00~17:40(予定)

ECzine Day 2021 Summer レポート(AD)

Talkwalker導入でSNS世代にブランディング 顧客のリアルな声を聞くヨックモックの新たな挑戦

 洋菓子ブランドのヨックモックでは、顧客の生の声をブランド戦略に活かしていくため、ソーシャルリスニングツール「Talkwalker」を導入している。2021年6月9日に開催された「ECzine Day 2021 Summer」にて、株式会社ヨックモック ブランド・マーケティング部 島倉夕紀子氏、高橋正氏が登壇。Talkwalker株式会社 カスタマーサクセスマネジャー 柳川竜輝氏を含めた3名で「Talkwalker」による分析結果を紹介しながら、今後も愛され続けるためのブランド戦略についてセッションを行った。

設立50周年で気づいた顧客の声を聞く重要性

(写真右上)株式会社ヨックモック ブランド・マーケティング部 部長 島倉夕紀子氏
(写真左上)株式会社ヨックモック ブランド・マーケティング部 高橋正氏
(写真下)Talkwalker株式会社 カスタマーサクセスマネジャー 柳川竜輝氏

 Talkwalker株式会社は、社名を冠したソーシャルリスニングツール「Talkwalker」を提供している。本社はルクセンブルクで、東京を含む世界9拠点で展開。日本市場に本格参入したのは2019年だ。

 株式会社ヨックモックは1969年に洋菓子販売企業として設立され、百貨店を中心に店舗を展開。ロール型のクッキー「シガール」が代表商品となっている。

 同社は2019年の設立50周年を機に、例年以上の顧客接点を持ったが、その中で島倉氏は「お客様の声をダイレクトに聞けていないことを痛感した」と言う。そこで、2020年から「Talkwalker」を導入し、顧客の声をヒアリングできる体制を作っていくこととなった。

 なお、Talkwalkerでは毎年「世界に学ぶ愛されるブランドの作り方」というレポートを発表している。全世界30業界のブランド企業1,228社を対象に、エンゲージメント率やSNS上での「喜び」「好き」といったキーワードへの言及を計測・分析したものだ。2021年版(調査期間2020年7月〜2021年4月)でヨックモックは日本国内15位にランクインし、愛されるブランドとしての地位を築いていることがうかがえる 。

「世界に学ぶ、愛されるブランドの作り方2021」レポート

 コロナ禍で新たなチャンスを見つけ、危機からの脱出に向けてこれまで以上に力を発揮している企業の活動を事例と共に解説しています。レポートはこちらからご覧いただけます。

センチメント分析で顧客の声を可視化 強みを再確認

 「Talkwalker」には、SNSに投稿された顧客の声から感情を識別し可視化するセンチメント分析と呼ばれる機能がある。同機能では投稿のポジティブ度、ネガティブ度を自社開発のAIで分析。「ヨックモック」のキーワードで集計した結果は次のとおりだ。

 キーワードはポジティブであれば緑色、ニュートラルの場合は黄色、ネガティブは赤色で表示されるが、ほとんど緑色で占められていることがわかる。さらに掘り下げると、バターに関するコメントが多い。実際にヨックモックのシガールは、原材料の中でバターをもっとも多く使っているのが特徴だ。

「一般的に、クッキーは形状を保つため小麦粉をいちばん多く使いますが、シガールは発売当時から、形を保つことができるギリギリまでバターを入れることにこだわっています。お客様からバターに対してポジティブな声を聞くことができるのはとてもうれしいです」(島倉氏)

限定パッケージの反応を確認した上で情報発信不足を痛感

 次に紹介したのは、Talkwalkerのテーマクラウド機能により、「ヨックモック」と一緒に投稿されているキーワードを可視化したものだ。文字の大きさは投稿量に比例する。結果を見ると、「季節限定」「限定商品」「パンダパッケージ」といった言葉が目立つ。個別の投稿を掘り下げると、これらが好評を得ていることがわかった。

「時代の変化によって、ご家族で召し上がっていただくシーンやお歳暮などを贈るケースも減っている 中、新しいお客様やしばらく離れていたお客様にいかに手に取ってもらうかが大きな課題です。その解決策のひとつが限定商品やパッケージ変更で、販売場所の特性やニーズにあわせて展開しています」(島倉氏)

 限定パッケージはSNS上で話題になりやすい。実際に拡散マップ機能を用いてひとつの投稿が時系列でどのように拡散されたかを見てみると、左側の元の投稿以降は丸が大きくなり、数多く拡散されていることがわかる。

 このように、顧客接点創出に向けて注力している施策が確かな成果を上げているヨックモックだが、一方で情報の発信不足も感じていると高橋氏は補足する。

「まだまだお客様からは『こんな缶のデザインがあったんだ』という反応も多く、情報発信が足りていないことを強く感じています。UGCをどう増やすかが今後の課題です」(高橋氏)

 これを受けて柳川氏は、「Talkwalker」の画像内の企業ロゴを検出できる画像・動画認識機能を紹介。UGCをリアルタイムでとらえることができると説明した上で「キャンペーンに対する反応のチェックや効果測定もできるため、今後もぜひ一緒に増やしていきましょう」と語った。

培ってきたブランドイメージを守りつつ新しい挑戦を

 「Talkwalker」ではランダムなキーワードだけでなく、特定キーワードでのフィルタリングも可能だ。これにより、ヨックモックが顧客からどのようなブランドイメージを持たれているかを可視化できる。分析の結果、「定番」「素敵な」「丁寧な」「優しい」「かわいい」といったキーワードが目立った。個別の投稿を見ると、「手土産としての絶大なる信頼」「日本の洋菓子の王様」といった表現もあり、贈り物の定番ととらえられていることがわかる。

「数あるお菓子の中で、定番と言われることは本当にありがたいことです。また、当社は真心をこめたお菓子作りを信念としているので、『優しい』『丁寧』というキーワードが多いことは、会社としての想いや、やりたいことが伝わっているということでもあります。生の声を聞くことができるのは、自分たちの施策や方向性がうまくいっているかの判断にもなり、たいへん有益と感じています」(島倉氏)

「その一方で、『定番』というキーワードには『無難』といったニュアンスも含まれています。今後も愛され続けるためには、定番ブランドとしてのテイストを保ちつつも、ブランドとして活き活きしている、新しい挑戦をしていることがわかるアウトプットを提供することが重要だと思っています」(高橋氏)

 実際に「Talkwalker」で行った集計では、ヨックモックのブランドイメージを想起させる前述のキーワード群(「定番」「丁寧」など)のエンゲージメント数が855であるのに対し、「初めて」「食べたことのない」「新しい」「おしゃれな」といったキーワードは約半数の428に留まっている。「ブランドとして新しい挑戦をすることで、これらのキーワードも増やしていきたい」と高橋氏は語った。

コロナ禍で生まれる新たな需要 既存コンテンツも改めて話題に

 続いて紹介されたのは、コロナ禍での新たな需要がうかがえる分析結果だ。なかなか外出ができない状況の中、ブランド名が「おうちカフェ」「おうち時間」といったハッシュタグと一緒に投稿されていたと言う。

「百貨店が休業を余儀なくされたほか、リモートワークが進み、手土産を渡すシーンが激減したことで大きな変化が現れています。結果として、ありがたいことにECでの購入が増え、SNSなどでは自分用に初めて買ったという声が見られるようになりました。もともとギフトのイメージが強いかと思いますが、コロナ禍で『少しでも自分の時間を充実させたい』『癒やしがほしい』と思った方々が購入してくださったのが、今までとの大きな違いだと感じています」(島倉氏)

「スライド内の『ヨックモックが教えるクッキーレシピ(世界文化社)』は、当社が2015年に出したレシピ本です。6年経つと現在どのように読まれているか把握することは難しいのですが、今回SNSを通じてレシピ本が改めて話題になっております。ブランドのコンテンツがロングテールでよい影響を与えてくれることは、現場にとっても非常にうれしいことです」(高橋氏)

顧客と共にブランドを創る 愛され続けるブランドとしての今後の展望

 講演の最後には、「ヨックモックがブランドとして愛され続けるための今後の展望」について語られた。ひとつは「共創時代に求められるファンコミュニティを形成し、顧客と共にブランドを創っていくこと」だ。

「SNSの普及で、企業とお客様の距離が今まで以上に近くなっていますし、お客様も自分たちの声が企業に届くことを意識している時代と感じています。今後は一方的にブランドを創るのではなく、お客様の声に耳を傾けつつ、当社の想いもしっかりと伝えて、一緒にブランドを創っていくような形が望ましいと考えています」(島倉氏)

 そしてふたつめは、「SNS中心世代に向けたブランド認知の拡大」だ。

「日本国内ではある程度の知名度を確立できていますが、家族間での伝承が徐々に弱まる中、とくに20代の方々からの知名度に大きな課題を感じています。『Talkwalker』で得た情報や生の声をしっかり見つめて20〜30代の若年層に対するアプローチを考え、今まで挑戦していなかったチャネルやイベントにもトライしていきたいと考えています」(島倉氏)

 3つめに挙げたのは、「インナーブランディングの一環として、『Talkwalker』で集めた声を社内で共有していくこと」である。ヨックモックでは、「毎週『Talkwalker』のデータを編集し、『ウィークリー・リアル・ボイス』として社内に共有しています」と高橋氏は語った。

 さらにSNS分析においては、「ブランド側から起こすアクションへの観測的視点だけではなく、平時の自然発生的な声もとらえていきたい」と高橋氏は付け加え、このように締めくくった。

「お客様からの平時の投稿は、ちょっと笑える内容、もしくは感動する・泣けるような話が多く、こうした部分に生活者の深層心理が見え隠れしていると思います。これらが商品開発やプロモーションのアイディアのトリガーになるのではないかと思っています」(高橋氏)

 なお、講演の終了後にはイベント視聴者から届いた質問に答えるQ&Aセッションが行われた。抜粋してふたつご紹介する。

Q:社内に生の声を共有したときの反応は?

「社内イントラで公開していますが、閲覧履歴が残り、かつ誰が『いいね』を押したかもわかるため、社長や役員から反応があるとやる気につながります。木曜日に発信していますが、『金曜の朝に見ることが日課になっています』と言って、個人的なブランド体験を教えてくれた例もあり、感動しました。それらをまた全社員に共有するなど、情報を循環させています」(高橋氏)

Q:Talkwalker導入後、業務に変化は現れたか

「当社のようなあまり規模が大きくないブランドは、定量・定性調査以上にSNSから得るリアルな反応が重要と考えています。また進めている最中ではありますが、お客様の声をエビデンスとしてブランドを可視化し、よりお客様へ強くコミットしていきたいと考えています」(高橋氏)

Talkwalkerについて

 Talkwalkerは、高度なAIを搭載した会話型インテリジェンスプラットフォームを提供し、あらゆるチャネルにわたり交わされている消費者や顧客の会話をリアルタイムに収集。顧客の声に応えるビジネスを運営する国内外の大手企業をサポートしている。

 顧客が考えていることや交わされている会話をAIが自動で分析し、最終的なアクションに至るまでのカスタマージャーニーを可視化。従来型のSNS分析を超えた示唆を提供することで、企業が顧客本位への経営にシフトし、収益の強化やコストを削減する施策の最適化を支援している。

 現在までに、本社を構えるルクセンブルクから、ニューヨーク、サンフランシスコ、フランクフルト、シンガポール、パリ、東京、ロンドン、ミラノにオフィスを展開しており、国内外2,500社を超えるブランドや代理店にサービスを提供。

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【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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