ECの市場規模
ネットショップ、いわゆるECの市場規模は、年々拡大しています。経済産業省(経産省)が2024年9月に発表した「令和5年度デジタル取引環境整備事業(電子商取引に関する市場調査)」によると、2023年の日本国内のBtoC EC市場は24.8兆円と、前年の22.7兆円よりも9.23%増加していることが分かっています。前々年は20.7兆円であったことから、BtoC-ECについては右肩上がりであることが分かるでしょう。
またBtoBのEC市場についても、2022年は420.2兆円であったのに対し、2023年は465.2兆円にまで増加しています。増加率はBtoC-ECよりも大きく、前年比10.7%でこちらも成長が見られます。
この傾向は今後いつまで続くのでしょうか。ここで、参考にしたいのが商取引市場全体のEC化率です。2023年時点で、物販系分野のBtoC-ECのEC化率は9.38%で前年よりも0.25ポイント増、BtoB-EC化率は前年から2.5ポイント増加し、40.0%となっています。こちらも、まだまだ発展の余地があるといえるでしょう。
主なECの種類
ECサイトを展開するにあたっては、主に以下の2種類のアプローチを採用することになります。初めはどちらか一方を選んでスタートするのが一般的ですが、事業者によってはもう片方の手法に切り替えたり、両方を活用したりする場合もあります。
ECモール
ECモールとは、ECプラットフォームが第三者の事業者を募り、販売のための機能やブランドを提供するサービスです。集客力のある商業施設にテナントを借りるような形でECを始められるのが特徴です。
ECモールを使用する場合は利用手数料などが発生しますが、圧倒的な知名度と会員数を生かすことができます。ECモールに出店した場合、事業者の集客負担は小さく、それでいて決済システムの構築が不要で、配送業務を委託するなどして、業務負担の軽減や削減が可能です。
そのため、体制構築や予算の確保が十分でなくともネットショップを始められる点がECモールの良い点だと言えます。
自社ECサイト
自社ECサイトは、その名の通り自社でネットショップを立ち上げる手法です。ECサイト構築の負担や自社での配送対応などが発生するものの、ECモールのように出品手数料や販売手数料を支払う必要がないという強みがあります。
また、自社ECサイトは自社のブランドで集客を行えるのも強みです。ECモールではモールの方針に従う必要がありますが、自社ECはその心配がありません。
自社ならではの強みを顧客に知ってほしい場合や、ブランド力を強化していきたい場合は自社ECのほうが効果を発揮するでしょう。
国内向けで人気のECモールランキング
ここでは、日本で多くの人気を博するECモールをランキング形式で紹介します。いずれも膨大なユーザー数を誇るサービスであり、初めてのネットショップ開業という方でも安心のサービスが整っています。
1. Amazon.co.jp
言わずと知れた世界最大のECモールであるAmazonは、2022年度の日本国内(Amazon.co.jp)の流通取引総額は推定で約6兆8,000億円とされており 、業界トップのECモールです。Amazonからの直接販売だけでなく、個人・法人を問わず誰でも出品ができる環境が整備されています。
Amazonを介してユーザーを獲得できるだけでなく、FBAと呼ばれる委託サービスを利用することにより、配送業務を一気通貫してAmazonに任せられるのが強みです。海外向けの商品展開にも強く、越境ECの足がかりにもなるでしょう。
2. 楽天市場
Amazonに次いで人気のECモールが、楽天市場です。2023年度の流通取引総額は6兆円と巨大な市場を形成しています。この流通取引総額には、楽天市場だけでなく、楽天トラベル(宿泊流通)、楽天ブックス、楽天ブックスネットワーク、楽天Kobo(国内)、楽天ゴルフ、楽天ファッション、楽天ドリームビジネス、楽天ビューティ、Rakuten24などの日用品直販、楽天Car、楽天ラクマ、楽天リーベイツ(Rebates)、楽天西友ネットスーパー、楽天チケット、クロスボーダー・トレーディングなども含まれます。
Amazonとの違いとして、「楽天ポイント」という独自ポイントが使えることや、定期・不定期に開催されるセール・ポイント還元イベントなどの施策が数多く投下されるのが特徴です。
3. Yahoo!ショッピング
Yahoo!ショッピングはLINEヤフーが展開するECモールです。同社では複数のショッピング事業を扱っており、その取扱高は2023年度で1兆6,658億円、前年と比べ横ばい傾向です。この取扱高には、LINEギフト、ZOZOTOWN、LOHACOなどを含みます。
Yahoo!ショッピングは、ショッピング事業のなかでも大きなウエートを占めており、多くのユーザーから根強く支持されているのが特徴です。
最大の強みの一つは、初期設定料が無料である点です。これにより、新規出店者は初期投資を抑えて店舗を開設することが可能です。月額費用や売上手数料は発生しますが、コストを抑えて出店したい方におすすめです。
4. ZOZOTOWN
ZOZOTOWNは、アパレル専門のECモールとして急成長を遂げたプラットフォームです。直接販売に加え、近年は大手アパレル企業の出店も相次ぎ、2024年の3月に発表された商品取扱高は5,743億円に達するなど、根強い人気を誇ります。
ZOZOTOWNへの出品は法人に限定されますが、その強みはZOZOTOWNユーザーにアプローチが可能な点です。ZOZOTOWNに登録している決済情報はもちろん、購入履歴や登録情報を基にしたサイズの確認やポイントの利用などができます。
近年は自社ECを立ち上げつつ、ZOZOTOWNに出品をするアパレル企業も増えており、多様な使い方ができるプラットフォームです。
国内で人気の自社ECサイト売り上げランキング
国内で人気の自社ECサイトとしては、以下が挙げられます。おもに家電量販店が上位を占めているのが特徴です。
1. ヨドバシ.com
ヨドバシカメラが運営するヨドバシ.comは、2022年度に同社全体の総売上の7,530億円の3割に当たる2,136億円もの売り上げを記録する巨大ECサイトです。店舗との連携サービスはもちろん、近年は当日配送サービスの拡充などにも努めている点が特徴だと言えます。
2. ビックカメラ.com
ビックカメラの自社ECサイトであるビックカメラ.comは、2022年度に売上高1,564億円を記録する巨大サービスを展開しています。
ヨドバシカメラよりEC売り上げは劣るものの、ビックカメラの総売上高は7,923億円とヨドバシカメラを上回っているため、今後のサービスの充実次第では成果を伸ばしていくと考えられるでしょう。
3. ヤマダウェブコム
ヤマダウェブコムは「ヤマダ電機」でお馴染みのヤマダホールディングスが運営するECサイトです。
ヤマダウェブコムの2022年度の売上高は1,445億円ですが、ヤマダホールディングス全体の売り上げは1兆6,005億円とヨドバシカメラ、ビックカメラを圧倒的に上回っています。このことから、伸びしろの大きさに期待ができるサービスだと言えます。
4. ユニクロオンラインストア
国内最大級のアパレルメーカーであるユニクロは、自社ECサイトのユニクロオンラインストアでも大きな売り上げを生み出しています。2022年度のEC売上高は、1,338億円でした。
ユニクロはアパレルのみでの展開であるため、単価の違いを踏まえると、極めて強力な売り上げを生み出しているサイトであると言えます。
海外で人気のECサイトランキング
続いて、中国を除く海外で人気のECサイトをランキング形式で紹介します。グローバルで高い人気を誇るだけあり、日本でも耳にしたことのあるサービスがランクインしています。
1. Amazon
海外でも首位独走となっているのがAmazonです。2022年度のAmazonの世界売上高は5,140億ドル(約82兆円)を突破し、トップの座は揺るぎないものとなっています。
2. Walmart
Walmart(ウォルマート)はアメリカに本社を置く小売企業で、日本では2005年に西友を子会社化したことで知られています。2023年度のECの売上高は1,000億ドル(約15兆円)を突破しています。
全体の売り上げとしては、2022年度の売上高は5,747億ドル(約92兆円)で、Amazonの売り上げを上回る世界最大級の小売企業です。
3. Shopee
Shopeeはシンガポール発のECモールで、東南アジア地域を中心に物品を販売できるのが特徴です。数千万人のユーザーを抱える同サービスは、2023年度で売上高785億ドル(約12兆円)を突破し、今後の成長にも期待が寄せられます。
日本からの出品を検討する事業者向けの公式支援サービスも充実しているため、東南アジア地域への進出を考えている事業者におすすめです。
4. eBay
eBay(イーベイ)は、個人・法人を問わず気軽に商品を出品できる取引プラットフォームです。気軽に出品・取引がグローバルに行える越境ECサービスとしても機能しており、その流通取引総額は2022年に739億ドル(約11兆円)を突破しています。世界190の国と地域のユーザーに対してアプローチできるのは、強力な強みといえるでしょう。
中国で人気のECサイトランキング
EC市場が最も活性化している地域の一つに、中国が挙げられます。代表的なサイトとしては、以下の3つに注目したいところです。
1. Alibaba
BtoB-ECの「アリババドットコム」、BtoC-ECサイト「Tmall」、CtoC-ECサイト「タオバオマーケットプレイス」をはじめとする中国向けECサイトを運営するアリババグループは、グループ全体で2022年度には8,530億6,200万元(約19兆円)もの売上を誇る巨大サービスです。
中国国内における人気は圧倒的であるのに加え、国外に住む中国系ユーザーからの人気も高く、グローバルなシェアを誇ります。
2. JD.com
JD.comはAmazonや楽天市場同様、企業からの出店料を徴収し、豊富な品揃えを確保している中国の大手ECサイトです。2023年第4四半期の売上高は3061億元(約7兆円)に上りますが、人気の理由はメーカー直販ゆえの信頼性の高さにあります。
近年、売り上げを伸ばしており、アリババを猛追しているECサイトです。
3. pinduoduo
Temuを運営するpinduoduoは、低価格販売を強みとする中国の人気ECサイトです。売上高は2023年四半期で888億8100万元(約2兆円)に達しており、薄利多売でありながら収益も前年比で倍増しているなど、成長の余地が大きいサービスと言えます。
家電や食品など幅広いラインナップを揃えており、EC利用が広く浸透している中国において、日常生活を送るうえでは欠かせないインフラとしての側面も持つのが強みです。
人気の高いECサイトが持つ特徴
人気のECサイトは、なぜ多くの売り上げを達成できているのでしょうか。程度や規模の差こそあれ、主なポイントとしては以下の3つが挙げられます。
強力な物流網を確立している
まず、人気のネットショップはいずれも強力な物流網を構築しています。翌日配送はもちろん、場合によっては当日配送も可能なほど、配送スピードに優れているサービスが良い例です。
個人レベルでこのような配送サービスを実現することは難しく、AmazonのFBAなどを利用しサービスの底上げを図る必要があります。
サイトのユーザビリティーに優れている
ECサイトが、ユーザーにとってとにかく利用しやすい設計になっていることも重要です。数回のクリックで決済を完了できる、案内が分かりやすい、入力負担が小さいなど、さまざまなアプローチで利用しやすいネットショップに仕上げられています。
オムニチャネル化が進んでいる
実店舗を有しているネットショップの場合、店舗とECの融合が進み、オムニチャネル化を実現しているケースも見られます。
店舗での商品受け取りや店舗からECサイトで注文できるなど、店舗でもECでも変わらないサービスを受けられたり、相互作用によって相乗効果が生まれていたりする点が強みです。
まとめ
この記事では、国内外で人気のネットショップをランキング形式で紹介しました。いずれのサービスも多くの顧客を抱えており、それぞれで異なる強みを発揮しています。
ただ、人気のネットショップには共通する利点があるのも事実です。初めてのネットショップの立ち上げから短期間で大きな収益を上げるECサイトに育てることは困難ですが、セオリーを意識して着実に顧客の獲得を進めていきましょう。