現場から聞こえてきた生成AI活用へのポジティブな反応
三越伊勢丹は、自社のECサイトや外部クライアントのささげ業務を行う組織「ISETAN STUDIO」を有する。同組織は、2023年9月に生成AIモデルを導入。自社での活用とともに、BtoB向けの新たな撮影サービスもスタートした。導入理由について、石井氏はこう語る。
「商品の着用感をリアルに想像できる仕組みを作り、より良い顧客体験を提供するためです。売り場の担当者ともコミュニケーションを取りながら、生成AIモデルを作り込んでいます」(三越伊勢丹 石井氏)
生成AIモデルの導入後、商品の販売担当者からは「従来のトルソー画像よりも生成AIモデルのほうが着用感を的確に伝えられる」「実店舗と同様に、提案できるコーディネートのバリエーションが増やせる」と、ポジティブな反応が得られたという。
「デジタル化が先行すると、各現場の担当者から理解を得られないのではと不安でした。しかし、実際には『コーディネート画像がわかりやすくなった』と、お客様からも各現場の担当者からも好評です。今では、様々なブランドを扱う百貨店ならではの課題を生成AIによって解決できると確信しています」(三越伊勢丹 石井氏)
一方、「NANO universe」などのアパレルブランドを展開する株式会社TSIホールディングス(以下、TSIグループ)は、2024年4月にECサイトにおける生成AI活用を発表した。コーディネート画像のバリエーション創出に取り組んでいる。
「二つ以上のコーディネート画像を組み合わせて、新たなコーディネート画像を生成する仕組みです。バリエーションを増やすために、スタッフによるコーディネートの発信なども行っていますが、どうしても手間がかかります。業務効率化を目的に、生成AIの導入を決めました」(TSI 岸氏)
同グループが生成AIを導入する上で重視したのが、「社内への浸透のしやすさ」だ。
「導入しても活用できる人が限られていると、業務の属人化につながります。結果的に、生成できるコンテンツ数が限られるでしょう。そのため、『誰でも使える』を軸にツールを選定しました。導入から間もないですが、手応えを感じています」(TSI 岸氏)