動画活用の浸透もコメントは制限の動きか
取材は2022年10月。本誌が刊行される頃には終わりに差し掛かっているが、EC事業者の稼ぎ時である年末商戦は、久保田さん率いるエッジにもそれにあわせた動画制作依頼があったと言う。
「ハロウィン、クリスマス、おせちといった年末年始のイベントにあわせたキャンペーンを訴求する動画制作依頼がありました。実店舗への誘導を促すものも増えていますね。特徴的なものではZ世代向けの訴求です。タイパと言われるように、いかに短時間で濃い情報が得られるかを求めているタイムパフォーマンス重視の傾向があるため、動画制作時にも工夫をこらしています」
一方で、企業の動画活用はキャンペーンなど一時的な起爆剤としてのそれだけにとどまらなくなってきている。
「中小規模の企業様であってもYouTubeへの動画投稿を継続的に行い、地道にチャンネル登録者数を増やそうとするところが増えてきています。コロナ禍でやむなく始めたところもありますが、リアル回帰の風潮が見えつつある中でも、動画への投資を止める判断を下すクライアントはそう多くありません。OMOが言われるように、実店舗はあくまでひとつのチャネルであって、必ずしも購入するだけの役割ではなくなっています。そして動画をはじめデジタルチャネルでも、商品の情報を伝えたり、アパレルのコーディネートなど専門家の意見を聞けるようにしたりと、接客の取り組みが行われています」
そんな中、久保田さんが注目トピックスとして紹介するのが、「Yahoo!ニュース コメント」への投稿について、11月中旬から携帯電話番号の設定を必須とするとの発表だ。
「ご存じのように動画にもコメントをつけることができ、それが盛り上がりとなります。ライブ配信では、コメントとして寄せられた質問に配信者が回答することでインタラクティブなやりとりが可能になります。しかしながら、総務省がSNS等での誹謗中傷対策に取り組んでいるように、コメントが害になる場合も増えている。プラットフォーム側も情報の信頼性を担保するためにも、今後は制限をかける方向に向かうでしょう。動画プラットフォームを含めたSNSが、誰もが気軽にコメントを寄せられる場でなくなっていくのは、コミュニケーションの盛り上がりという視点では残念にも思います」
関連するか、10月にはYouTubeの新機能「YouTube ハンドル」が発表された。YouTubeチャンネル名とは別に、各クリエイター固有のものが設定できる。@がつき、動画内でタグ付けされたり、ハンドル名で検索できたりするようになるとのことだ。取材時点では、今後数週間でリリース予定となっている。
「個別のクリエイターではなく、企業様向けとなるとまだ使い道を見つけられていないのですが、動画においては有料サロンやコミュニティへのニーズが強くあります。クローズドな場では何かしら用途があるかもしれません」