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2024年8月27日(火)10:00~19:15

今さら聞けないEC知識

Web接客ツールでECサイトの売上拡大を図るための必要知識


 近年、多くの企業が活用しているWeb接客ツールは、オンライン上における見込み顧客とのコミュニケーションを自動化できる有用なソリューションです。本稿では、そんなWeb接客ツールの特徴やメリットに加え、代表的な製品例を紹介します。

 自社で運営するECサイトやサービスページにおけるCVR (コンバージョン率)を上昇させるためには、サイトに訪れた見込み顧客と適切なコミュニケーションを図る必要があります。そこで、近年多くの企業で導入されているソリューションの一つが「Web接客ツール」です。

 今回は、Web接客ツールの特徴や導入するメリット、選定のポイント、代表的なサービス例を紹介します。

Web接客ツールの概要

 まずは、Web接客ツールの概要と、活用が広がる背景について見ていきましょう。

Web接客ツールとは?

 「Web接客ツール」とは、オンライン上における見込み顧客とのコミュニケーションを自動化させるためのソリューションです。

 Web接客ツールは、CVRやLTV(顧客生涯価値)などを効率的に上昇させるために用いられます。自社サイトに訪れた見込み顧客に対して、「チャットボットによる問い合わせへの対応」「行動履歴に応じた適切な情報提供」などの自動化されたオンライン接客を実施することで、成約率の向上を図るのです。

Web接客ツールの活用が広がる背景

 近年、Web接客ツールの活用機会は増加傾向にあります。そのおもな理由は「日本におけるECサイト市場規模の拡大」「人材不足による顧客対応力の強化」の2点です。

 新型コロナウイルスによるパンデミック発生以降、実店舗の営業自粛や顧客減による打撃を受けた多くの企業が、ECサイト経由での売上拡大を図るようになりました。ECサイトにおける顧客体験を高めるうえでは、実店舗と同等の接客レベルを実現する必要があります。

 そこで必要とされる施策の一つが、Web接客なのです。実店舗の運営が不安定になっている近年では、特にアパレル業界や美容業界などで積極的にツールの導入が進められています。

 また、少子高齢化や中小企業をはじめとした多くの組織における人材不足も相まって、DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進が喫緊の課題となっています。

 このような背景から、接客業務の負担を大幅に減らせるだけでなく、効率的に売上拡大につなげられるWeb接客ツールの活用が増加傾向にあることは、必然の流れといえるでしょう。

Web接客ツールを導入するメリット

 Web接客ツールの導入を検討するうえでは、ツールの活用で得られる恩恵について把握しておく必要があります。ここでは、Web接客ツールのおもなメリットを3点紹介します。

顧客満足度やCVRの上昇につながる

 Web接客ツールでユーザーニーズに即した情報提供やコミュニケーションを実施すれば、顧客満足度の向上やCVR上昇が期待できます。

 商品やサービスにある程度関心がある状態で自社サイトを訪問したユーザーでも、不明点を抱えたままでは成約には至りづらいでしょう。そこで、Web接客ツールを導入し、ユーザーが知りたいと感じる情報をリアルタイムで届けられるようにすれば、自社プロダクトに関する疑問が解消されます。

 たとえば、ポップアップ機能を持ったWeb接客ツールであれば、はじめて自社サイトに訪問したユーザー向けに初回限定クーポンを提供するなど、ユーザー属性に合わせた柔軟なアプローチが可能です。

 そのほか、アパレル系ECサイトでチャットボット機能を活用し、各ユーザーにマッチした商品やサイズの提案を行うことで売上拡大につなげた例もあります。

直帰率や離脱率を下げられる

 Webマーケティングにおいて、自社サイトを訪問したユーザーがCVに至らないままサイト離れた割合を示す「直帰率」「離脱率」を下げる取り組みは、非常に重要です。

 直帰率とは、1ページだけで離脱した割合を指します。離脱率は他ページを閲覧したユーザーも含む離脱割合を示す数値ですが、Web接客ツールを導入することで、これらの数値を下げることが可能です。

 自社サイトに訪れたユーザーが「商品が多くて選べない」「どれがいいか分からない」といった状況に陥った際に、適切なフォローができなければ、ユーザーがサイトを離れるリスクが高まります。

 そこでWeb接客ツールを通じて適切なタイミングでユーザーフォローを実現することで、直帰や離脱の防止、再来訪促進などにつなげられるのです。

ユーザーデータを収集蓄積できる

 Web接客ツールは、オンライン上でやり取りしたユーザーデータの収集や蓄積も可能です。収集したデータは、同じユーザーが再訪した際により的確なアプローチをするために活用するだけでなく、膨大なビッグデータとして分析することで、今後のマーケティング戦略の策定にも活用できます。

 Web接客ツールで収集可能なデータは、ユーザーの購買履歴や問い合わせ履歴といった「行動データ」に加え、性別や年齢、住所、職業といった「属性データ」などです。

 このようなデータを分析することで、自社サイトを訪問したユーザーがどういったニーズを抱えているのかを可視化できるため、より効果的なWeb接客の実現やサイトの設計・サービスそのものの改善もできます。

Web接客ツールの種類

 Web接客ツールの種類は「ポップアップ型」「チャット型」に加え、それらの機能を兼ね備えた「ハイブリッド型」に大別されます。ここでは、それぞれの特徴を解説します。

ポップアップ型

 ポップアップ型のWeb接客ツールには、PCやスマートフォンの画面上におすすめの商品やサービスなどをポップアップで表示させる機能が実装されています。また、お得なキャンペーン情報を告知したり、クーポンを発行したりすることも可能です。

 ポップアップ機能の活用することで、ユーザーの状況に合わせて適切なタイミングで訴求や行動喚起を行えます。自社サイトのCVRの低さに課題を感じている企業にとっては特に有効といえるでしょう。

 一方、ユーザー視点で見ればWebサイト閲覧中に半強制的にポップアップが掲載されることになります。高い視認性はポップアップ機能のメリットではありますが、過剰なポップアップはユーザーにとってストレスになりかねない点には留意が必要です。

 ポップアップは「誰に」「どのタイミングで」「どのように」表示させるかを設定できるため、商品ページやLPなど、なるべくクロージングに近いタイミングで表示させるのが理想的でしょう。

 画面のスクロール量に応じた配信も可能ですので、関心度の高いユーザーに絞ってポップアップを表示するという選択肢もあります。

チャット型

 チャット型のWeb接客ツールは、チャットボットがユーザーとコミュニケーションを行う機能を持っています。チャット型の場合、ユーザー側が入力した内容に沿って接客を行うため、比較的容易に表示設定を行うことが可能です。

 チャットの設置位置は、Webサイトの右下部分など、ユーザーの視認性や可読性の妨げにならない場所が一般的でしょう。

 チャット機能を活用すれば、ユーザーからの問い合わせへの素早い対応が可能になります。そのため、「問い合わせに対応する人員が不足している」「直帰率・離脱率が高い」といった課題の解決にも寄与します。

 またシステムを活用することで、人件費を削減しながら効率的な接客を実現したり、属人的になりがちなサービスの質を均一にしたりすることも可能です。

 なお、チャットボットは「シナリオ型」「AI型」の2種類に大別されます。

 シナリオ型は、あらかじめ自社で設定したシナリオに沿って、ユーザーを誘導していくチャット機能です。ユーザーが表示された選択肢のいずれかを選択すると次の選択肢が表示され、最終的に最適な提案内容が提示されることになります。

 一方のAI型は、人工知能を利用したチャットボットです。ユーザーが入力した質問内容に対する最適な回答を、蓄積されたFAQデータからAIがピックアップして、自動で返事する仕組みになっています。AI型は、データが蓄積されるほど人工知能も学習を深めるため、月日の経過とともに、より最適な回答の実現が可能になっていくでしょう。

ハイブリッド型

 ポップアップ型とチャット型の両方の機能を兼ね備える「ハイブリッド型」のWeb接客ツールでは、自社の目的に応じてさまざまな機能を利用できます。

 たとえば、営業部門ではポップアップ型を活用してユーザー情報の収集を行い分析に役立てる、販売部門ではチャット型を活用して顧客とのコミュニケーションを図る、といった使い分けが可能です。

 ただしハイブリッド型は機能が豊富な分、費用が高額になりやすいという点には留意が必要です。

Web接客ツールの選定ポイント

 Web接客ツールの導入で売上拡大につなげるためには、自社に合ったサービスを正しく選定する必要があります。ここではWeb接客ツールの選定ポイントを紹介します。

自社の使用用途にマッチした機能のツールを選ぶ

 Web接客ツールの導入を検討するにあたり、まずは自社が解決すべき課題を明確にしたうえで、それに即した機能を持つツールを選ぶ必要があります。

 まずは、「Web接客ツールを何のために導入するのか」「自社のマーケティング施策とマッチしているのか」といった視点から、自社サイトの抱える課題を明確にしましょう。そのうえで課題を解決するために必要な機能を考え、適切なツールを選定します。

ツール導入後の運用体制を構築する

 Web接客ツールは、導入して終わりではありません。売上拡大につなげるためには、ツール運用のための社内体制を構築する必要があります。オウンドメディア運用などのデジタルマーケティング施策と同様に、時間をかけてPDCAを回し、成果を最大化させましょう。

 たとえば、チャット型を導入すればよくある質問に対してはある程度自動で対応できますが、定型外の質問に対応していくためには、データの収集・分析による改善が求められます。

 そこで、Web接客ツール導入後にアクセス解析ツールやMA(マーケティング・オートメーション)と連携します。そのうえで、データの取得・蓄積に関する社内ルールを作成すれば、Web接客の質の効率的な向上が可能になるでしょう。

 しかし、このようにWeb接客ツールを運用していくためには、デジタルマーケティングに関する専門的な知識が必須です。社内リソースが足りない、あるいはナレッジが不足しているケースにおいては、外部専門家への依頼も検討してみましょう。

費用対効果も踏まえておく

 Web接客ツールの導入によって得られる利益が、システムの導入や運用にかかるコストに見合わなければ本末転倒です。自社に必要な機能を備えつつも、余分な機能のない適切なコストのサービスを選ぶことが肝要です。

 前述したようにWeb接客ツールを導入する目的を明確化し、自社の課題解決に役立つ仕組みや機能を見極めることが重要です。

代表的なWeb接客ツール5選 

 ここでは代表的なWeb接客ツールについて、各ツール特有の強み、導入が推奨される企業を解説します。 

KARTE(カルテ)

 「KARTE」は株式会社プレイドが提供する、多様な機能を備えたハイブリッド型のWeb接客ツールです。KARTEの強みは多彩なユーザーニーズの分析機能にあり、ユーザーのカーソル移動やサイト内の行動履歴に応じたアプローチができます。さらに、リアルタイムの有人チャット機能も備わっています。

 KARTEでは、自社サイトにユーザーが訪問したその瞬間から過去の膨大な行動ログを参照することで、リアルタイムでの訪問ユーザーのニーズや行動を解析可能です。

 ベンダー側企業によるツール活用の事例紹介や導入企業のWeb接客施策の成功事例も公開されているため、自社で活用する際のヒントを得られやすいでしょう。

 価格面では、膨大なデータ分析などの多彩な機能を備えている分、比較的高額です。そのため、特にWeb接客に注力したい企業や規模感の大きなサイトに導入する場合に適したツールといえるでしょう。

  • 利用料金…要問い合わせ
  • タイプ…ハイブリッド型

Sprocket(スプロケット)

 「Sprocket」はポップアップ型のWeb接客ツールです。最適なタイミングでポップアップ表示を行う「プラットフォーム」と、仮説立案から企画、検証、改善までの運用代行を行う「コンサルティング」の2つのサービスを提供しています。

 ユーザー行動データの収集・分析を通じてユーザーの不安や疑問などを調査する機能や、約150もの業界別成功シナリオを持っている点が特徴です。

 Sprocket はECサイトやBtoBサービスサイトなど、300サイト以上の改善実績があります。導入後も、接客シナリオ作成やデータ分析などのサポートを受けられるため、社内にリソースやナレッジが不足している場合でも安心して運用できるでしょう。

 Sprocketはポップアップ型であるため、ある程度機能や値段がわかりやすい商材を扱う企業向けといえます。

  • 利用料金…要問い合わせ
  • タイプ…ポップアップ型

Flipdesk(フリップデスク)

 「Flipdesk」は1,500サイト以上の導入実績を誇る、ハイブリッド型のWeb接客ツールです。

 タグの設定だけで運用をスタートできるうえ、自社サイトに設置したタグからユーザーの属性情報や購買情報、行動履歴などを収集できます。集めたデータをもとに属性や興味・関心ごとにユーザーをグルーピングすることも可能です。それにより情報ミスマッチの削減や最適なコミュニケーションを実現し、サイトの成果につなげます。

 Flipdeskでは運用マニュアルと無料の問い合わせ窓口があり、ツールの管理画面もシンプルで使いやすいため、Web接客ツール運用の属人化を防げるでしょう。

 月額8,000円から導入可能と、BtoBのサービスとしてはわかりやすい料金体系も魅力であり、低リスクでWeb接客を導入したい企業に適したツールといえるでしょう。

  • 利用料金…8,000円~/月
  • タイプ…ハイブリッド型

Repro(リプロ)

 「Repro」は、世界66ヶ国で導入実績のあるハイブリッド型のWeb接客ツールです。「Webのみ」「アプリのみ」「Web・アプリ横断」と、3パターンの導入方法が用意されています。

 Reproは、さまざまなユーザー接点から収集したデータを分析し、ユーザーをセグメントする仕様です。それにより、メール配信やサイト内ポップアップなど、ユーザーごとに最適な施策を実現可能です。分析データは、メールマーケティングへも活用できます。

 Reproの専任スタッフが、サイトの現状分析や施策立案、ツールの運用、効果検証、改善までワンストップで行うため、自社内におけるWeb接客ツールの運用体制の構築が難しい企業でも安心して導入できるでしょう。

  • 利用料金…要問い合わせ
  • タイプ…ハイブリッド型

CODE Marketing Cloud

 「CODE Marketing Cloud」は、LPのCVR改善や離脱防止のために開発されたシステムで、Web接客ツールとしてはポップアップ型に分類されます。

 ツール独自のユーザーデータの分析機能に加え、Google AnalyticsやMAとの連携機能もあるため、自社が過去に収集したビッグデータを活用した良質なWeb接客を提供可能です。

 Flipdeskのようにタグを設置するだけで運用をスタートできるため、専門的な知識やクリエイティブ制作も必要ありません。旅行や不動産など、業界ごとに最適化されたWeb接客テンプレートが用意されているため、自社のビジネスモデルに特化したWeb接客を行いたいと考える企業に適しています。

  • 利用料金…要問い合わせ
  • タイプ…ポップアップ型

まとめ

 ユーザーの購買チャネルが実店舗からオンラインに移行しつつある昨今、Web接客ツールは自社の売上を拡大するためのソリューションとして有効です。Web接客ツールを導入すれば、自社サイトに訪問したユーザーに対し最適なオンライン接客を提供できるようになり、顧客体験やCVRの向上が望めます。

 Web接客ツールの導入にあたっては、自社の運用目的を定義したうえで、自社にとって必要な機能を備えたコストパフォーマンスの高いツールを選定しましょう。

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EC研究所(イーシーケンキュウジョ)

ECについての情報を調べ、まとめてお届けします。

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