消費者のリアル回帰もライブ配信は終わらない
今回の特集では、主にアパレルをメインに体験について掘り下げた。アパレルと言えば、デジタルファーストのブランドもあるが、多くの場合は実店舗を持ち、販売スタッフがリアルな接客を行うビジネス形態となっている。
コロナ禍の営業自粛等によりリアルな接客の機会が奪われたわけだが、その代わりに従来リアルコミュニケーションをメインとしていた職種であっても、デジタル活用が進むことになった。販売スタッフで言えばLINEやチャット、ウェブ会議システムを通じて接客をしたり、SNSでのライブ配信、ライブコマースを行うといった具合だ。
とはいえコロナ禍が落ち着けば、やはり対面接客に勝る体験はなしとの考えから、デジタル活用も下火になるという説もなくはなかったが、久保田さんはとくにライブ配信について、今後も増えていくだろうと予測する。
「来店やECへの誘導、そして売上につながっているのでしょう。来店前にデジタルでコミュニケーションが取れていれば、『いつもSNS見てます』といった具合にリアルで初対面でも会話が弾むはずです。ライブ配信を行うプラットフォームはLINE、Instagram、YouTube、TikTokなどさまざまです。アパレルならどこで配信すれば効果があるといった一律の正解はなく、自社ブランドやスタッフのアカウントに対してフォロワーが多いところで行うと良いでしょう。ライブ配信を行うまでの間に、どれだけフォロワーとコミュニケーションを積み重ねてきたかが、ライブ配信の成否を分けるとも言えます」
アパレルでよく用いられるのがInstagramだが、従来はフィード動画、IGTV、リールなど動画を投稿・視聴できる場所と動画の長さや形態で種類が異なった。だが、単体アプリ「IGTV」の提供は2022年3月に終了しており、取材時点ではInstagram動画(元IGTV)とリールに二分できる。
久保田さんはメインで活用すべきはリールとストーリーズだと言う。リールは、15秒の短尺動画として始まったが、カタログの商品をタグ付けするとInstagramから離れることなく商品を購入できるようになるなどソーシャルコマースの機能も備えていることに注目したい。
「SNSのユーザーに若い層が増え、スマートフォンで視聴する縦長動画が基本フォーマットになり、TikTokで慣れた短尺動画がメインストリームになってきていると言えます」
そもそもユーザーは、調べ物をしていて検索等で引っかかる場合などを除いて、プラットフォームにはエンタテイメントを求めて来ているものだ。人気クリエイターがどのプラットフォームに注力し、どのような動画クリエイティブを制作しているのかは、プラットフォームを活用する企業活動にも影響してくるため、ウォッチしておきたい。