これまで、小売店や飲食店などの店舗を運営する企業にとって、顧客との接点は実店舗が中心でした。しかし近年では、ECサイトやSNSなど幅広い接点を活用できるようになっています。なかでも注目されているのが、スマートフォンを通じて顧客との接点を確保できる店舗アプリです。
この記事では、店舗アプリの概要や機能、メリット・デメリット、選定ポイントについて解説していきます。
店舗アプリとは
店舗アプリとは、店舗が販売促進や顧客の囲い込みのために導入するスマートフォンアプリのことです。
スマートフォンの普及によって、消費者の可処分時間の多くがスマートフォンの操作に費やされるようになり、スマートフォンを通じた顧客とのつながりを重要視する企業が増えています。
店舗アプリは会員証やポイントカードとしての役割を持つだけでなく、デジタルクーポンの配信やプッシュ通知、キャンペーン情報の案内など、販促に活用できるさまざまな機能を兼ね備えています。
店舗アプリによくある機能
店舗アプリのおもな機能について紹介します。なお、店舗アプリはサービスによって特徴が異なるため、以下で紹介する機能はあくまで一例です。
会員証・ポイントカード機能
店舗アプリは会員証として顧客の情報管理に活用できます。購入金額が大きい・利用回数が多い顧客には割引や特典を設けるなど、ランクアップ制度を導入することも可能です。その際、従来の紙の会員証では手間がかかっていた情報変更やカードの新規発行が不要となるため、手続きにかかる時間を短縮できます。
また、QRコードやバーコードを利用して店頭でのポイント付与やポイント利用など、アプリ内で簡単にポイントを管理できます。
クーポンの配布
キャンペーンなどを実施する際、顧客にデジタル化したクーポンを配布できます。特定の顧客のみに配布したり、クーポンの利用期限や回数を設定したりすることも可能です。
また、誕生日クーポンや友達紹介クーポンなど、特定のタイミングでの特別感の高いクーポンの発行は、顧客との信頼関係を深め、再来店を促すのに効果的です。
プッシュ通知の配信
スマートフォンのプッシュ通知機能を活用し、顧客に新着情報を案内することができます。プッシュ通知は内容が確認されやすい傾向があり、効果的な販促が可能です。
ただし、大量のプッシュ通知は顧客に煩わしさを与えてしまうおそれがあります。顧客にとってメリットが大きい情報を中心に、厳選して配信することが重要です。
商品ギャラリー
店舗アプリ内で、カタログ的に自社の商品やサービスを紹介することができます。カテゴリ別で商品を掲載したり、新商品はトップに表示したりするなど、効果的なPRが可能です。
店舗アプリ導入メリット・デメリット
それでは、店舗アプリの導入には、どのようなメリットとデメリットがあるのかを見ていきましょう。
メリット①:顧客との接点確保
既存顧客との接点(タッチポイント)を確保する手段のひとつとして有効です。来店時以外にも顧客との接点を持つことで、キャンペーン案内やクーポン配布などの施策を効率よく実施できるでしょう。
また、プッシュ通知を活用したり、定期的にアプリへログインしてもらったりすることで、顧客に自社の存在を思い出させる効果も見込めます。
メリット②:ロイヤルカスタマーの育成
店舗アプリを通して顧客との接触回数を増やし、差別化を図ることで、自社に愛着を持ってもらえるようになります。その結果、いわゆるロイヤルカスタマーとして、売上に貢献したり、宣伝を積極的に行ってくれたりする可能性があります。
メリット③:顧客情報の収集と分析
顧客がどのようなコンテンツを閲覧しているか、どのようなクーポンが人気か、どのキャンペーンが効果的だったかなどを確認・分析できます。また、顧客の属性ごとにデータを抽出することで、自社顧客の特性分析や対象を絞った販促を実施することも可能です。このように自社のコアとなるターゲット層の設定、マーケティングの効果分析などを実施することができます。
デメリット:アプリインストールのハードルの高さ
店舗アプリには多くのメリットがある一方で、欠点もあります。そのひとつが、アプリインストールのハードルの高さです。
Fuller社が実施した調査によると、スマホユーザー1人あたりの平均所持アプリ数は、103個と言われています。メッセージツールやブラウザなどあらかじめインストールされているアプリを考慮すると、ユーザーが自らインストールするアプリの数は限定的といえるでしょう。多くの企業が店舗アプリの導入を実施するなかで、自社の店舗アプリを選んでもらうことは難しいといえます。
また、インストールおよびインストール後の定着化のためには、顧客にとって価値のあるアプリであり、ストレスを感じさせないUIであることがポイントです。
店舗アプリの選び方
次に、店舗アプリを選定するうえで押さえておくべきポイントを紹介します。
開発方法
店舗アプリは、スクラッチ開発で自社独自のものを作成することもできますが、手軽に導入したいのであれば店舗アプリサービスの利用が有効です。両者には以下のような違いがあります。
スクラッチ開発 | 店舗アプリサービスの利用 | |
---|---|---|
コスト | × | 〇 |
カスタマイズ性 | ◎ | △ |
メンテナンス負荷 | × | 〇 |
開発期間 | △ | 〇 |
他システム連携 | 〇 | × |
スクラッチ開発は細かいカスタマイズが可能な一方、コストが高く、導入後のメンテナンスにも負荷がかかります。
店舗アプリサービスでは、一定のテンプレートをもとにアプリを作成できるため、スクラッチ開発よりもコストが抑えられ、導入期間も短くすみます。自社の求める機能が店舗アプリサービスで満たされているようであれば、有効な選択肢といえるでしょう。
コスト
コストも、店舗アプリの重要な選定ポイントです。一般的にスクラッチ開発を実施する場合、料金は店舗アプリで実現したい内容により都度見積りとなります。
一方で店舗アプリサービスを利用する場合、料金体系はサービスによっても異なりますが、一般的には初期費用・月額費用・個別開発費用などが発生します。自社のニーズに合う機能を確保したうえで、コストパフォーマンスがよいかどうかを比較検討しましょう。
導入実績
スクラッチ・店舗アプリサービスいずれの場合においても、導入実績は重要なポイントです。とくに店舗アプリサービスにおいては、自社と同じ業界の実績が多いほど、自社のニーズに合う機能が充実している傾向があるため、事前にしっかりとチェックすることをおすすめします。
【特徴別】おすすめのサービス
おすすめの店舗アプリサービスを紹介します。
GMOお店アプリ
「GMOお店アプリ」は、GMOデジタルラボ社が提供する店舗アプリサービスです。 飲食業や美容業などの事例が多く、2,000社以上の導入実績があります。わずか1か月程度という短期間での開発が可能で、開発方法もテンプレートにカスタマイズを施す形であるため、コストを削減できます。
UPLINK
「UPLINK」は、USEN社が提供する店舗アプリサービスです。9,200店舗以上もの豊富な導入実績があり、デジタルチケットや顧客との直接トークなどオリジナリティ溢れる機能を提供しています。 大手企業であるUSEN社による手厚いサポート体制も、魅力の一つといえるでしょう。
Yappli
「Yappli」は、ヤプリ社が提供する、アプリをプログラミング不要(ノーコード)で作成可能なアプリプラットフォームです。さまざまなアプリを開発することができますが、店舗アプリ向けの機能も充実しています。 クーポン配布やスタンプカード・ポイントカード・カタログ提供など、基本的な機能は網羅しています。500社以上の導入実績があり、信頼性も高いといえるでしょう。
まとめ
店舗アプリの概要やおもな機能、メリット・デメリット、おすすめのサービスについて解説しました。スマートフォンの利用が一般化した現代において、店舗アプリは有効な顧客とのタッチポイントとなります。今回ご紹介した選定ポイントや注意点をふまえ、ぜひ導入を検討してみてはいかがでしょうか。