グーグル・クラウド・ジャパンが、大規模リアルカンファレンス「Google Cloud Next Tokyo」を、2025年8月5日~6日に開催した。2日間とも「AI」がキーワードとなった。1日目の基調講演では、同社の日本代表 平手智行氏が冒頭で「2025年はAIエージェント元年といわれている」と強調。「Google Cloud」におけるAI活用の現在地などを語った。

Googleは、2025年だけでAI開発に約12.7兆円もの追加投資を行うと発表している。これは2024年から73%の増額であり、力の入れようがうかがえる。
AIの波は、EC業界にも押し寄せている。1日目のブレイクアウトセッションの一つに、三越伊勢丹が登壇した。同社のオンラインストアグループ EC運営部 今村毅氏は「当社は、AIを活用した顧客体験向上施策を推進している。鍵となるのがパーソナライズ」と話す。

オンラインストアを2020年にリニューアルした同社。館業から“個客業”へビジネスモデルを転換するという。そこで重視しているのが、セレンディピティを演出するレコメンドだ。
同社では、Google Cloudが提供するECサイト向けのソリューション「Vertex AI Search for Commerce」を活用している。具体的には、顧客一人ひとりの好みを理解した上での提案に取り組んでいる。
たとえば、同社にとって毎年大きなイベントとなるランドセルの販売。受注生産によって注文から納品まで7ヵ月程度あくケースがあり、顧客との継続的な関係構築が課題となっていた。その間にオンライン上で的確なレコメンドができれば、別商品の購入につながる。
一方で、閲覧履歴をもとにレコメンドをすると、既にランドセルを購入済みの顧客に対して、繰り返しランドセルを提案してしまう。類似商品の提案から一歩踏み込む上で、AI活用が効果的だったとのこと。

「学習の余地はまだまだあるが、顧客を理解した提案に近づいている。定量的には、Vertex AI Search for Commerceの導入前と比較して、CTR約1.4倍、カート追加率約1.2倍、CVR約1.3倍となった」(今村氏)
発展途上ではあるが、今村氏は「データ量の拡大と質の向上で精度はさらに上がっていくはず」と、期待の色をのぞかせた。