帝国データバンクは、設業、トラック・バス・タクシードライバー、医師などの「働き方改革」を進めるために2024年4月より適用される時間外労働の上限規制を踏まえ、運送業界のいわゆる「2024年問題」に対する企業の見解について調査を実施した。
同調査は、TDB景気動向調査2023年12月調査とともにおこなわれたもので、調査結果の詳細は次のとおり。
「2024年問題」全般への影響、約6割の企業でマイナスを見込む
建設業や運送業、医師などでこれまで猶予されていた、時間外労働の上限規制が適用されることによって生じる人手不足や、輸送能力の低下などが懸念される「2024年問題」全般についてたずねたところ、「マイナスの影響がある」企業は59.9%となった。他方、「影響はない」は22.3%、「プラスの影響がある」は1.6%だった。
さらに、物流の2024年問題に限ってみると、「マイナスの影響がある」企業は68.6%だった。特に、「卸売」(79.6%)や「農・林・水産」(78.9%)など6業界で7割超の企業がマイナスの影響を見込んでいる。
企業からは「物流コストが増加すれば、製品単価の上昇につながり、景気は後退する」(繊維・繊維製品・服飾品卸売、大阪府)や「現状も部材不足の納期遅延が多い。物流問題が生産計画に波及し、さらに悪化するかもしれない」(電気機械製造、群馬県)といった声があがっている。
他方、企業の1.5%では「プラスの影響がある」としており、「長い目で見れば自由な時間が増えるため、若い人も入りやすくなり、運送業界にとっても良いはず」(鉄鋼・非鉄・鉱業製品卸売、東京都)といった前向きな声が寄せられていた。
「2024年問題」全般に対する具体的な影響、企業の66.4%が「物流コストの増加」を見込む
「2024年問題」全般に対して具体的な影響をたずねたところ、「物流コストの増加」が66.4%ともっとも高かった(複数回答、以下同)。次いで、「人件費の増加」(41.0%)、「人手不足の悪化」(40.0%)が4割台、「配送スケジュールの見直し」(32.4%)が3割台で続いた。
業界別にみると、「物流コストの増加」は『製造』(80.4%)で8割を超え、「卸売」(79.2%)と「農・林・水産」(75.2%)が7割超。また、「配送スケジュールの見直し」は「製造」(45.7%)や「卸売」(45.6%)、「小売」(36.4%)といった主に荷主側となる業界で高かった。
物流の2024年問題への対応策、「運送費の値上げ(受け入れ)」が43.3%でトップ
「2024年問題」のうち、特に物流の2024年問題に対して、対応(予定含む)をおこなっているかたずねたところ、「対応あり」とする企業は62.7%だった。他方、「特に対応しない」企業は26.4%と4社に1社となった。
さらに、「対応あり」とした企業に対して、具体的な対応策をたずねたところ、「運送費の値上げ(受け入れ)」が43.3%でトップとなった(複数回答、以下同)。次いで、「スケジュールの見直し」(36.3%)や「運送事業者の確保」(24.9%)、「発着荷主と運送事業者双方での連携強化」(24.2%)、DXなど「業務のシステム化や効率化の推進」(20.0%)が上位に並んだ。
業界別にみると、「運送費の値上げ(受け入れ)」は「運輸・倉庫」(51.5%)、「卸売」(50.2%)、「農・林・水産」(50.0%)で5割以上となった。企業からも「物流コストアップは交渉により抑制したいが、一定程度は受け入れる」(広告関連、東京都)といった声があがっていた。
そのほか、DXなど「業務のシステム化や効率化の推進」は、「金融」(44.4%)や「不動産」(28.3%)、「サービス」(27.5%)で高く、「ドライバーの確保・育成」では、「運輸・倉庫」が53.6%と突出して高かった。また、「荷待ち・荷役時間の把握・削減」は、「運輸・倉庫」が32.4%ともっとも高く、「製造」(12.2%)や「農・林・水産」(9.1%)が続くが、総じて荷主側企業からの対策意識が低い様子がうかがえた。企業からも「時間指定の縛りや、荷役作業に対する荷主側の意識改革がなされない限り、根本的な解決にならない」(紙類・文具・書籍卸売、東京都)といった厳しい声が聞かれた。
物流の2024年問題、2024年4月が直前に迫るなか、対応を決めかねている様子も
物流の2024年問題へ「特に対応しない」企業に対してその理由をたずねたところ、「これまで通りで問題が生じず、対応する必要がない」が34.6%でトップとなり、「2024年4月以降、問題が生じた際に対応を検討する」(33.6%)が続いた(複数回答、以下同)。
「2024年問題」に対する支援策、企業は「金銭的支援」や「人材育成・確保支援」などを求める
「2024年問題」全般に対して求める支援策や政策などについてたずねたところ、補助金や助成金など「金銭的支援」(34.0%)と「人材育成・確保支援」(32.3%)が3割台で上位となった(複数回答、以下同)。以下、「高速道路料金などの見直し」(29.3%)や「時間外労働の上限規制の猶予期間の延長」(26.6%)、「ルールなどの周知徹底」(21.5%)が2割台で続いた。
他方、自動運転やロボット技術など「新技術開発支援」は低位にとどまるが、「高速道路での自動運転の新技術開発など、単に補助金を出すことなどではなく、先を見据えた対策を支援する体制を国に設けてほしい」(メンテナンス・警備・検査、静岡県)といった前向きな意見も寄せられた。以下、「自社だけでは対応策が検討できない」(27.5%)や「どのように対応すればよいか分からない」(15.8%)が続き、2024年4月が直前に迫っているなかであっても、具体的な対策が見つからず、対応を決めかねている様子も表れている。
調査概要
- 調査期間:2023年12月18日~2024年1月5日
- 調査対象:全国2万7,143社
- 有効回答企業数:1万1,407社(回答率42.0%)