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2024年8月27日(火)10:00~19:15

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AIは物流業界の課題解決に役立つのか?導入メリットと活用事例を解説


 AIによる人材不足の解消や効率的な物流プロセスの構築、コスト削減の実現方法と現場での成功事例を通じて、AI技術がもたらす具体的なメリットと課題についてお伝えします。

 物流業界は人手不足やアナログ業務など、様々な課題を抱えており、多様なソリューションの導入が進んでいます。中でも注目を集めているのがAIの活用で、業務の自動化や最適化による生産性向上などの効果が期待されています。この記事では、AIの導入が物流業界の課題解決にどのように役立つのか、その具体的なメリットとデメリット、そして実際の導入事例について解説します。

物流業界が抱える課題

 物流業界は現在多くの課題を抱えており、それらの対処に企業は追われています。具体的には、以下のような課題が挙げられます。

人材不足

 物流業界の最大の問題と言えるのが、人材不足です。トラックドライバーの不足や倉庫業務に対応できる人材の不足など、多くの職種で人手が足りていない事態に陥っています。

 この業界では長距離運転に起因する長時間労働や、倉庫内業務で発生する肉体労働が常態化しています。待遇面の充実を図ることが不可欠ですが、このような環境下では人材を確保するのは難しいのが実情です。

生産性の停滞

 物流業界は業務のデジタル化があまり進んでおらず、現在もアナログ業務が主体という現場も多く見られます。これが情報の非連携や手作業の多さを生み出し、結果として業務の非効率化や属人化という生産性の向上を阻害する要因になっています。

 たとえば、アナログ作業が原因で効率的な輸送プランを構築できず、低い積載率でのトラック稼働や、ドライバーの余計な荷待ち時間が発生してしまいます。これが輸送コストの増大や環境負荷増加の要因ともなり、ドライバーの労働時間の無駄にもつながっていきます。

2024年問題

 物流業界で働く人々の頭を悩ませているのが、2024年問題です。2024年問題とは、物流業界における長時間労働の是正を目的とした働き方改革関連法案の施行により、問題の発生が予想されていることから、このように呼ばれています。

 2024年4月に施行された働き方改革関連法案により、トラックドライバーは時間外労働の上限が年960時間と定められ、これまでよりも労働時間が短縮されました。これにより、ドライバーの1日の走行距離が減り、従来通りの長距離輸送が困難になると考えられています。さらに、業界全体の売上減少やドライバーの収入減少などの問題も懸念されています。この問題を回避するために、より効率的な輸送プロセスの改善が求められています。

物流DXが注目される背景

 このような課題の解決において、注目を集めているのが物流DXの実現です。物流DXの需要拡大が進んでいるのには、以下の背景が考えられます。

配送サービスの多様化

 物流DXが求められる大きな背景として、配送サービスの多様化が挙げられます。再配達サービスや置き配サービス、リアルタイムトラッキングなど多様なサービスを付加価値として多くの事業者が提供するようになりました。

 これらのサービスは消費者の利便性を高める一方で、物流事業者にとっては業務の複雑化やコスト増加につながっています。こうした課題を解決するために、物流業界ではAIやIoTを活用したデジタルソリューションの導入が欠かせません。

利用者の急激な増加

 近年、ECサービスの普及やグローバルサプライチェーンの拡大に伴い、物流業界の業務負担が急激に増大しています。従来の業務プロセスでは、このような急速な物量の増加に対応することが困難になっています。この課題を解決するうえで有効なのが、物流DXの導入です。

 物流業務の一部または全体をデジタル化することで、業務の効率化と負担軽減を実現できます。国内外の物流業務にも専用システムを構築することで、自動化や最適化を図ることが可能です。物流DXの導入により、急激な物量増加にも柔軟に対応でき、競争力の向上とサービス品質の維持・向上を実現しながら、持続的な成長を目指すことができるでしょう。

AIを物流業界に導入するメリット

 物流DXには複数のアプローチがありますが、注目を集めるのがAIを採用した物流DXです。AIの物流業務への採用には以下のメリットがあります。

倉庫業務の効率化・自動化

 AIの導入によって、これまで手作業が一般的だった検品作業やバーコードの読み取り、棚卸しといった作業を、自動的に処理することができたり、ロボットに任せたりすることが可能となってきています。

 またAIによって倉庫内業務の最適なプロセスの提案を受けることもでき、担当者の知見やスキルに依存しない業務環境を整備できます。

コスト削減

 AIの導入により、物流業務の効率化と省人化が実現します。人材確保のためのコスト高騰が企業の悩みとなっていますが、AIを活用することで必要な人員数を最小限に抑えられます。

 倉庫内のピッキングや梱包作業、トラックの積載スペースの最適化などをAIが代替することで、大幅な省人化が可能です。また、AIによる需要予測で適切な在庫管理を行えば、保管コストの削減にもつながります。

配送時間の短縮

 AIの導入は、配送現場における業務効率化にも役立てられます。AIの活用で積載荷物や交通状況をリアルタイムで分析し、最適な配送ルートを自動で予測できます。

 この配送ルート最適化により、荷物の配送時間を短縮し、ドライバーの運転時間も削減できます。その結果、ドライバーの長時間労働の抑制にも役立ちます。AIを導入した配送ルート最適化は、物流業界の効率化と生産性向上に大きく寄与し、企業の競争力強化にもつながるでしょう。

安全運転の強化

 AIの導入は、貴重な人的資源を守ったり、重大なインシデントの発生を抑制したりするうえでも重要です。

 たとえば、AIがリアルタイムでドライバーの運転状況を監視し、居眠り運転などの危険な兆候を検知すると、即座にアラートを発してドライバーに注意を促します。これにより、ヒューマンエラーに起因する交通事故やミスの発生リスクを大幅に低減することが期待されています。

AIを物流業界に導入する際のデメリット

 AIの導入により、物流業界には多くのメリットがもたらされます。しかし、導入時には以下のような点に留意が必要です。

設備投資が発生する

 AIの導入には、初期投資と継続的なコストがかかることを認識しておく必要があります。AIツールの開発や実装、それらを活用するためのハードウェア導入などの初期段階の投資と、AIシステムを運用するための設備やシステムの保守管理にも継続的にコストがかかります。

 AIの導入を検討する際は、初期投資の規模や継続的なコストを見積もり、長期的な費用対効果を慎重に評価することが重要です。AIの導入が業務効率化やコスト削減につながるのか、投資に見合うリターンが得られるのかを事前に十分検討する必要があります。

専門人材の確保が必要になる

 AIは導入すれば強力なツールとなりますが、その機能を最大限に活用するためには専門的な知識とスキルが不可欠です。専門人材が不在では十分なパフォーマンスを発揮できません。

 そのため、AIを導入する際は、まずAIを扱える人材の確保が重要になります。ただし、AIに精通した人材は現時点ではまだ少なく、即戦力となる人材の確保は容易ではありません。そのため、自社で人材を育成していくことも視野に入れるべきです。社内でAIスキルを持った人材を増やしていくには一定の時間を要しますが、長期的な計画として取り組むことがよいでしょう。

業務フローの大幅な見直しが求められる

 AIの導入によって、従来の業務プロセスを抜本的に見直さなければいけない場合があります。そのため、AIを導入する際は、業務の進め方を見直し、現場に導入していくための移行期間を設ける必要があります。

 業務フローの見直しや移行時には時間的な負担も発生しますので、他業務との兼ね合いなど計画的な導入が求められます。AIの導入に際しては、関係者への説明や教育など、十分なコミュニケーションを図ることも大切です。

物流業界におけるAI活用の事例

 物流業界におけるAIの活用は、すでに複数の企業で進められています。具体的にどのようにAIを活用しているのか、以下の事例を参考に確認してみましょう。

アスクルによる需要予測AIの導入

 アスクルでは、自社の物流センターと補充倉庫を結ぶ拠点間での商品の横持ち(拠点間輸送)計画作成の効率化を目的に、AIを活用した需要予測モデルを導入しています。

 AIによる需要予測とは、過去の販売データや在庫データなどの蓄積したデータを分析し、高い精度で将来の需要を予測するもので、適切な在庫配置と効率的な輸送計画の立案ができ、欠品リスクの低減やコスト削減につながります。

 従来、各拠点の担当者の経験やノウハウを活かすという、属人的かつ非効率的な方法で横持ち指示を行っていました。しかし、AI導入の結果、横持ち計画作成業務の工数が75%、入出荷作業の負担が30%削減されるなど、大幅な業務効率化を達成しました。

NECと日通の物流業務自動化AI導入

 NECと日本通運は、物流業務の効率化を目的とした業務提携契約を締結し、AIとIoTの導入を積極的に推進しています。

 両社は広範な物流業務のハイテク化に向けた取り組みを進めており、短期的な取り組みとしては倉庫内業務の自動化に向けたAI導入が挙げられます。具体的には、IoTを活用して人や物の動きをデジタルデータ化し、そのデータをAIで迅速に分析することで、より効率的な業務プロセスの構築や自動化に役立てる方針です。さらに、将来的にはAIを活用した新規事業の創出も視野に入れているとのことです。

佐川急便による再配達解消AIの実証実験

 佐川急便では、AIを活用して再配達の解消につながる革新的な配送計画の実証実験を行っています。この取り組みでは、配送先で使用している電力データをスマートメーターから取得し、そのデータをAIに分析させることで、リアルタイムに無駄のない配送ルートを構築することを目指しています。

 この技術を用いることで、配送先の在宅状況を高い精度で予測することが可能となり、配送時の不在率を大幅に減らすことができます。2018年に東京大学内で行われた配送試験では、不在配送を9割も減少させることに成功しました。

 佐川急便のこの取り組みは、AIを活用することで配送業務の効率化が実現できる可能性を示しており、物流業界におけるAI活用の将来性を示す優れたプロジェクトの一つといえるでしょう。

まとめ

 物流業界におけるAIの活用は、業務効率化やコスト削減、安全性の向上など、多くのメリットをもたらします。一方で、導入には設備投資や専門人材の確保、業務フローの見直しなどの課題もあります。しかし、事例で紹介したように、すでにAIを導入している企業もあり、今後さらに普及していくことが予想されます。

 全ての業務でAIをいきなり導入するというのは困難かもしれませんが、まずは部分的にAI活用を進めて知見を深め、AIによる業務効率化を検討することをおすすめします。

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EC研究所(イーシーケンキュウジョ)

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