実店舗もネットショップも老舗 香川のうどん本陣山田家
お遍路さんで知られる四国八十八ヶ所霊場の1つ、香川県・八栗寺。そこへ向かう坂道の途中に、行列ができる店がある。1978年創業、さぬきうどん屋の老舗、うどん本陣山田家だ。車でうどん屋めぐりをするにしても、決して便利とは言えない場所だが、ゴールデンウィークには2万人以上が来店したこともあったという。
数あるさぬきうどん屋のなかで、山田家の特徴は、その格式の高さにある。まるで旅館のような歴史ある店舗は、江戸時代から続く旧大庄屋の屋敷を改築したもの。日本庭園を眺めながら、ゆっくりと食事が楽しめることから、会食や接待に利用される機会も多い。
実店舗で確固たる地位を築きながら、ネットショップへの着手は早く、1994年10月に開設。なんと、楽天市場よりも早い。現在では、ネットショップの売上が土産うどん販売の15~20%を占める。
開設19年にして、見えてきたものとは。株式会社山田家物流 代表取締役社長の山田康介さんにお話をうかがった。
はじめての売上は月1万円くらい 失敗したと思いました
――山田家さんは、1994年10月に、自社サイトでネットショップをオープンされてますね。一説によれば日本初のネットショップとも言われています。開設のきっかけは?
「社内に、パソコン通信に詳しいスタッフがいて、『やったほうがいい』と提案が出ました。まだ当時は、インターネットが普及しはじめたくらいで、どうなるかわからない技術だったのですが、当時の社長(現会長)が若いスタッフのやる気を汲んで、やってみようということになったんです。
当社のネットショップが日本初かはわからないのですが、確かに、参考になるような他のサイトが見つからないので、写真と簡単な商品紹介だけを掲載しました。ネットショップの提案をしてきたスタッフも、パソコン通信に詳しいとはいえ、プログラミングの本とにらめっこしながら手探りの状態で。周囲からは、『何をやっているんだろう』くらいに見られていたそうです。
売上が軌道に乗ってからも、しばらくは受発注システムを組まずに運営していたので、繁忙期になると、夜中まで事務作業をさせてしまっていました。今でも、当時手伝ってくれた営業部長や課長と酒を飲むと出てくる、思い出深い話です」
――運営はすぐ、軌道に乗りました?
「はじめての売上は月1万円くらいで、正直失敗したと思ったそうです。時期尚早かなと。社内的にも、赤字部門であるネット通販をやめようという意見が多く出ていました。
でも、その頃には他のネットショップも出てきて、成長しているところもありました。まだまだやれることはあるんじゃないかと思って、『もう一度だけチャンスが欲しい』と、当時、工場長をしていた私自ら担当になり、営業部を中心に企画を始めました。
とはいえ、限られた予算でサイト作成、運転資金、広告費をまかなうのは大変でした。いろいろと模索した結果、楽天市場なら出店直後の運営費や広告費があまりかからないこと、また、楽天という企業自体が急成長していたことから、再起をかけて出店することにしました」