越境ECの構想→直営店のインバウンド対応 その理由は?
徳田(世界へボカン) まずは、日本百貨店がどんな事業を展開されているのか改めて教えてください。
浮ケ谷(日本百貨店) 創業は2010年で、私は2020年に創業者から事業を引き継ぎ、代表に就任しました。現在は、日本各地の食品や雑貨、工芸品を集めたセレクトショップを、東京・神奈川・埼玉など首都圏を中心に展開しています。直営店の数は一時的に絞っていますが、期間限定のポップアップストアを全国各地で展開して顧客接点を広げています。
徳田(世界へボカン) 現在(2025年8月取材時)、自社ECサイトはリニューアル中で販売機能を一時停止し、店舗での販売に注力されているとお聞きしました。その理由と、立ち上げからこれまでの運営について教えてください。
浮ケ谷(日本百貨店) 私が社長に就任した当初、オンラインの販売チャネルは存在していませんでした。2020年といえば、ちょうどコロナ禍の真っ只中。直営店を中心とした事業の立て直しを進めつつ、リブランディングのタイミングで、コンセプトを体現するアクティビティを発信する「ウェブマガジン」としてサイトを立ち上げました。
リブランディング以降は、テレビをはじめとする各種メディアに取り上げられる機会も増え、情報発信の受け皿としての役割も担っています。現在はPRメディアにとどまらず、販売機能を強化する方針でサイトのリニューアルを進めています。
徳田(世界へボカン) そう考えられたきっかけは何だったのでしょうか?
浮ケ谷(日本百貨店) 既存事業の立て直しを進める中で、次の成長にはチャネルの拡大が不可欠だと考えました。日本百貨店としてはECにまだ伸びしろがありますが、日本の人口減少を踏まえると、中長期的には越境ECや海外出店といった海外展開も視野に入れています。
徳田(世界へボカン) 浮ケ谷さんから越境ECのご相談をいただいた際に、店舗を活用したインバウンド戦略についてアドバイスさせていただきました。最初に秋葉原の店舗(日本百貨店しょくひんかん)にうかがった際にその立地の良さと広さ、品揃えの多さに驚いたんですよ。
これは大きな強みだと感じたのですが、インバウンド来店客の様子を見るとじっくり商品を見てくれていても、何も買わずに出て行ってしまう方が多くて……これはもったいないと感じたんです。POSを見ても、インバウンドのお客さまは抹茶やわさびといった定番商品の購入に偏っていたので「せっかく4,000種類も商品があるのなら、まずは海外の潜在顧客のニーズを知るためにも、今店舗に来ているインバウンドのお客さまとのコミュニケーションを見直した方が良い」とお伝えした記憶があります。
浮ケ谷(日本百貨店) 越境ECのターゲットや商品選定に悩んでいたので、「確かにそのとおりだ」と納得させられる気づきがありました。英語POPの導入は限定的で、インバウンドのお客さまにとっては商品の違いが分かりづらく、何を選べばいいのか迷う状況だったのです。
たとえば醤油を買おうとしても、何十種類も並んでいれば日本人でも迷います。海外から来た方であれば、なおさら違いが分からなければ選びようがありません。お客さまが商品を理解できず購入に至らなければ、ターゲットや嗜好性に関する解像度も高まりません。そこで、まずは実店舗での改善から取り組むことにしました。