1980年代のメーカーD2Cの先駆者? アマノフーズ公式通販の歴史
お湯を入れて待つだけでできあがる、フリーズドライ食品を数多く展開するアマノフーズの前身は、粉末調味料や即席麺具材などをOEM製造する原料メーカー 天野実業だ。現在主力商品となるフリーズドライおみそ汁は、当時工場見学に訪れる取引先など来訪者への手土産として生まれたものだったという。
「これが好評で『また食べたい』『販売してほしい』といった引き合いが増加し、商品化されたと聞いています。最初は通常業務の合間に事務所で電話・ハガキ注文を受け付け、社員自ら発送作業まで行う形で通販事業が始まったそうです」

OEMメーカーが保有する技術を生かして自社製品を作り、BtoC向けに通販から販売を開始する。近年一般化しつつあるBtoBメーカーの販路拡大ルートを1980年代に既に開拓していたアマノフーズは、いわばメーカーD2Cの先駆者ともいえよう。
「通販であれば自社のネットワークを生かしつつ、顧客と交流しながら口コミの広がりとともに一歩ずつ着実に事業を前進させることができます。電話・ハガキでの注文からFAXなど、時代に合わせて販売チャネルも進化させ、2008年に『アマノフーズ公式通販サイト』を開設しました」
中村氏は、2006年にアマノフーズに入社。2019年に現職に就任する以前は、マーケティング・広報業務を主に担当してきた。入社時の通販事業を同氏は「勢いがあり、どんどん新規のお客様を増やそうというフェーズだった印象」と振り返り、さらにこう説明する。
「主な取扱商材が『おみそ汁』という日常に近いものだからこそ、一度気に入った後にまとめ買い・定期購入などリピーター顧客へと転化しやすい部分はあるのかもしれません。
2016年にアサヒグループ傘下に加わり、店頭販売シェアの拡大も進みましたが、流通販路が拡大すれば当然通販の動きも変わります。小売の棚に置いていただけているからこそ幅広い方に認知が広がり、各チャネルの存在意義とお客様自身の使い分け方がより明確になりつつあると捉えています」