集団で誤った方向へ進む危険 必要な役割とは?
一人で運営してきた、もしくは新規で立ち上げたD2C・EC事業の売上が拡大し、人員増加を検討している人もいるだろう。リソース不足解消のために組織が大きくなる中で、新たに生まれる課題が“チーム作り”だ。『だけどチームがワークしない ――“集団心理”から読み解く 残念な職場から一流のチームまで』(日経BP/縄田健悟 著)には、そんな課題と向き合うためのヒントが提示されている。
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まず押さえておきたいのが、成果を組織に属するメンバーの性格や能力だけで判断できないということだ。
おしゃべりな人だって、映画館や卒業式では、ほとんど口を開かず静かに座っているでしょう。
部下の前では不機嫌で横柄な態度を取る人も、社長の前ではニコニコ愛想よく話すかもしれません。
人間の行動というのは、実はとても状況に依存しています。逆にいうと、状況を適切にマネジメントすれば人間の行動は変えることができるのです。(P.33)
加えて、「集団浅慮」という言葉を聞いたことがあるだろうか。同調圧力などの影響により、集団での判断能力が損なわれた結果、好ましくない方向へ進んでしまう現象を指す。これを防ぐために、本書ではあえて「異論を言う役割」の設置を提案している。
集団で仕事をする意義を考えてみてほしい。一人では考えつかないアイデアを生み、それを形にするのも、価値の一つといえる。あなたの組織に、同調圧力は存在していないだろうか。
リーダーは向き不向きではなく行動スキル
組織に必ず存在するリーダー。「良いリーダーとは何か?」という問いに、はっきりと回答できない人も多いはずだ。世の中には「○○リーダーシップ」といった概念があふれている。こうした情報に惑わされているケースもあるだろう。
本書の著者・縄田氏は「リーダーシップを個人の性格や資質のみで決まるものだと考えるのは間違いのもとです。むしろ重要な視点は、リーダーシップは行動面でのスキル(技能)として捉えることです(P167)」と語っている。
その上で重要なのが「課題」「対人」の両輪を回せるかだ。目標の達成に向けて具体的な指示出しができる、かつ人間関係の調和を保てるのが理想の状態だという。
急にEC事業部のマネージャーを任されたものの「私はリーダーには向いていない」と考えている人は、本書を通じて組織運営の基本をインプットしてみてはどうだろうか。