ふるさと納税とは?
ふるさと納税は2008年からスタートした制度で、生まれ故郷や応援したいと思った自治体に対して、公的かつ任意で寄付できます。
テレビやインターネット上でも話題に取り上げられていることから、一般的に広く知られている節税制度です。そのせいか、総務省発表のデータによれば、令和2(2020)年度のふるさと納税における控除が適用された人はおおよそ552万人であることが判明しています。
知っておきたい!ふるさと納税3つの主な仕組み
ふるさと納税の仕組みをきちんと把握するためにも、最初に3つの主な仕組みについて理解しておきましょう。
返礼品がもらえる
ふるさと納税の代表的な仕組みに、寄付先からの返礼品があります。ニュースやSNSなどでも話題になったこともあるため、「ふるさと納税をすると返礼品がもらえる」仕組みについては多くの人が見聞きしたことがあるのではないでしょうか。
わかりやすく解説すると、ふるさと納税をした人は、寄付先の地域の特産品やサービスなどが返礼品(お礼)として手元に届きます。
返礼品は食べ物からサービスまで自治体によってさまざまです。寄付先は好きな地域を選べるので、返礼品をもとに寄付先を選べます。
寄付した金額の一部が条件付きで控除される
ふるさと納税で支払った寄付金は、一部が条件付きで税金控除の対象になります。ふるさと納税によって控除されるのは所得税と住民税です。したがって、ふるさと納税で税金が控除される条件は、住民税と所得税を支払う納税者であることが原則です。
控除される金額は、一般的にふるさと納税で支払った寄付金から2,000円を引いた金額ですが、その金額の上限は個人の納税額や家族構成などに基づき異なります。
そのため、所得が多く納税額が高額である人ほど、ふるさと納税を活用すると恩恵を受けられるでしょう。逆に、年収が低い方や所得税や住民税の納税義務が発生しない方は、ふるさと納税による税額控除を受けられません。
条件次第で確定申告が免除
2015年、確定申告することなく手軽にふるさと納税ができる「ワンストップ特例制度」が導入されました。
ワンストップ特例制度とは、
- ふるさと納税先の自治体数が5団体以内
- 納税先自治体にワンストップ特例適用に関する申請書を事前提出
という条件を満たせば、寄付金額に応じて翌年度分の住民税を確定申告せずに控除される制度です。
ワンストップ特例制度によって、ふるさと納税した人全員が確定申告をしなくてもよくなったという利便性から、ふるさと納税の人気に一気に火がついたと言ってもよいでしょう。
ちなみに総務省が行う「ふるさと納税に関する現況調査」(2021年度実施)を見ると、ワンストップ特例制度導入前の平成26(2014)年度は約43.6万人に対し、平成27(2015)年度は129.5万人と、ふるさと納税の控除適用者は約3倍に増加していることがわかります。
ふるさと納税を行うメリット・デメリット
ふるさと納税はメリットが多いように見えますが、デメリットもあります。
メリット
前述の通り、ふるさと納税のメリットは次のものが挙げられます。
- 返礼品がもらえる
- 住民税と所得税の控除ができる
- 好きな自治体を選んで寄付できる
- 返礼品を第三者にプレゼントできる
- 利用方法によってはポイントがもらえる
- ふるさと納税の使用目的が選べる
利用者が増加している最大の要因は、条件さえ満たせば所得税控除や翌年納める予定の住民税の一部が控除されることです。
それだけでなく、好きな自治体を自分で選べるため、好きな返礼品から逆算して寄付先を選べるという点でしょう。返礼品は自分宛てだけでなく、第三者宛てにすることも可能なので、返礼品を贈り物として利用できるのもポイントです。
最近では、ポータルサイトが多種多様になっただけでなく、寄付金をクレジットカード払いにすることも可能になりました。 日ごろからポイントを貯めている方にとって、ポータルサイト選びや支払い方法の選び方によってはポイントを効率よく貯められるチャンスと言えそうです。
また、ふるさと納税は自治体に対して寄付金の使用目的を指定できます。ふるさと納税を受け入れている各自治体では、医療や福祉、自然保護など使用目的を明らかにしていることが一般的です。
デメリット
好きな自治体に寄付でき、好きなものを返礼品として選べ、さらに所得税や住民税の控除まであるふるさと納税は、納税者にとってお得な制度ですが、デメリットも考慮しなければなりません。
ふるさと納税のデメリットは、
- お得な節税に直結するわけではない
- 確定申告でもワンストップ特例制度利用でも申請が必要なので手間がかかる
- ワンストップ特例が使えない場合がある
- 人によっては控除上限額の算出が難しく寄付する金額が定めづらい
- 控除上限金額を超えると自己負担
ふるさと納税はあくまで「2,000円分の自己負担金を超えた寄付金について、翌年の税金を自治体に払うことで先払いしたことになる」という控除制度です。
利用者側は「2,000円以上の返礼品を選ぶことでプラスになる」という考えで、寄付先を選ぶ必要があります。 残念ながら、ふるさと納税をしたからといって現金ですべてが還付されるシステムではないため、上限金額を超えた分は自己負担しなければなりません。
もちろん、人によっては所得税分が確定申告により還付金として少額還付される場合もありますが、確定申告するとワンストップ特例が使えなくなります。
特に、個人事業主でECサイトを運営しているという場合は、売上金額次第ではふるさと納税によって逆に損してしまったり、ワンストップ特例が使えなかったりすることを考慮しなければなりません。売上が定まらないという場合は、自己負担にならないよう寄付金額を調整するという手間が発生します。
ふるさと納税方法を6ステップでわかりやすく解説
ふるさと納税と聞くと、人によっては面倒な手続きを経ないと利用できないと思うかもしれませんが、ふるさと納税そのものはかんたんにスタートできます。
次の6ステップをふめば初心者でもふるさと納税を始められますので、参考にしてみてください。
- 寄付金額の上限目安を確認する
- 寄付する自治体と返礼品を決める
- 自治体の指示に従って納税する
- 返礼品と受領証明を受け取る
- 確定申告時にふるさと納税について記載する
- 住民税は翌年分から控除
それぞれ、詳しく紹介します。
1.寄付金額の上限目安を確認する
まず、自身の年間所得や家族構成などの情報に基づいて、寄付金額の上限目安を確認します。個人事業主やフリーランスは確定申告書の控えを用意し、給与所得をもらっている方は源泉徴収票や1年間の給料明細を手元に用意してから上限目安を調べましょう。
寄付金額の上限については、各自治体の窓口や総務省のホームページ・ふるさと納税各種ポータルサイトにある「寄付金上限シミュレーション」でかんたんに算出できます。
ポータルサイトを利用する際に注意したいのが、シミュレーションやリストなどで確認した寄付上限額はあくまで目安と捉えること。実際の寄付上限額を超えずふるさと納税をするためにも、シミュレーションで出た金額よりも8割の金額がいくらになるかも併せて算出することをおすすめします。
2.寄付する自治体と返礼品を決める
自身の寄付上限額を確認したら、寄付先と返礼品を決めましょう。一般的に、ふるさと納税の各種ポータルサイトを活用して寄付先と返礼品を選択します。
主なふるさと納税ポータルサイトは次のとおりです。
- 楽天ふるさと納税
- ふるさとチョイス
- さとふる
- ふるなび
- ANAのふるさと納税
- au PAYふるさと納税
- ふるさとプレミアム
- ふるさと本舗
自身の寄付上限目安ギリギリの金額を寄付しないように注意しながら、候補先を選びましょう。
「寄付した場合の返礼品として、〇〇円相当の品を送ります」などの記載を確認し、自身の寄付上限金額から8割を超えてない範囲で返礼品を選ぶのがポイントです。
3.自治体の指示に従って納税する
応援する自治体および返礼品が決まったら、寄付する自治体の指示に従ってふるさと納税に申し込みます。 ポータルサイト利用の場合は申込フォームを利用することが一般的ですが、自治体によって受け付け方法が違うため、必ず申し込み方法を確認しましょう。
また、自治体によって寄付金額の納付方法も異なるため、併せて確認します。
4.返礼品と受領証明を受け取る
申し込みが完了し納付も完了したら、返礼品が届くのを待つばかりです。返礼品が届くと、「寄付受領証明書」が送られてきます。「寄付受領証明書」は確定申告の際に使うものなので、無くさないよう大切に保管しましょう。
5.確定申告時にふるさと納税について記載する
確定申告の時期になったら、「寄付受領証明書」を手元に用意して確定申告の書類作成に移ります。ふるさと納税で寄付した金額は「寄付金控除」と書かれている場所に自治体へ寄付した金額から2,000円を引いた額を記入します。もし複数の自治体にふるさと納税をした場合は、寄付金額の合算から2,000円を引いた金額を申告しましょう。
会計ソフトや国税庁が提供する「確定申告書作成コーナー」では、寄付金額から2,000円を引いた金額を自動計算してくれるので、便利です。なお、あらかじめワンストップ特例制度の申し込みをしている場合は、確定申告不要です。自身が利用できる条件に当てはまる場合は、ふるさと納税後に申し込むことをおすすめします。
6.住民税は翌年分から控除
注意したいポイントとして、ふるさと納税の控除対象である住民税は翌年分から控除対象となることを覚えておくと便利です。
所得税は確定申告することで、人によってはいくらか還付される可能性がありますが、住民税については翌年分から差し引かれます。これは住民税控除の対象となるワンストップ特例制度も同様ですので、最低限覚えておきたいところです。
ふるさと納税を始めるうえで注意したいこと
最後に、事業をされている場合だけでなくフリーランスでECサイトを運営している場合でも注意しておきたいポイントをご紹介します。
手元の資金に余裕があるときに行う
ふるさと納税は税金を前払いするということから、暫く手元に現金がなくなることになる点も考慮しなければなりません。 住民税控除の恩恵は翌年度になるというだけなく、所得税は確定申告後でないと還付されないためです。
最近はふるさと納税の資金をクレジットカードで納付できるようになり、とても使いやすくなりましたが、たとえクレジットカードを利用したとしても一時的に寄付した分のお金が手元からなくなります。 ふるさと納税を検討している場合は、資金に余裕があるかどうかをあらかじめ確認のうえ無理のない範囲で行いましょう。
自己負担金のことを忘れない
ふるさと納税初心者ほど見落としがちなのが、自己負担金の存在です。ふるさと納税では、2,000円が自己負担金として差し引かれることをあらかじめ考慮したうえで返礼品を選ばなければなりません。
ふるさと納税をすると決めたら、2,000円は自分が負担しているということを念頭に置いたうえで寄付先を決めることが大切です。
ワンストップ特例制度が使えない可能性が高いことを念頭に入れる
ワンストップ特例制度は一般的に給与所得を得ている人が使いやすいように整えられていますが、一方でワンストップ特例制度を利用できない人もいます。
代表的なのは、何らかの形で確定申告を行っている人、あるいはする予定がある人です。特に、事業者およびフリーランスの多くは確定申告が必要なため、ワンストップ特例制度の利用対象外です。
その他にも、
- 5つ以上の自治体にふるさと納税した人
- 医療費控除や住宅ローン控除を受けようとしている人
- 何らかの事情で確定申告をする給与所得者
もワンストップ特例制度利用対象外であるため、ワンストップ特例制度利用前に自身の状況を把握する必要があります。
個人型確定拠出年金(iDeCo)や小規模企業共済を利用している場合
個人型確定拠出年金(以下iDeCo)や小規模企業共済を利用している場合、寄付金上限額を算出する際は入念にチェックしましょう。
iDeCoや小規模企業共済による掛け金は、確定申告で「小規模企業共済等控除」として所得控除を受けられます。 つまり、iDeCoなどの控除により所得税と住民税を軽減できる一方で、ふるさと納税の控除上限額も下がってしまうのです。
同様に住宅ローン控除や医療費控除を受ける場合も、ふるさと納税の控除上限額に影響します。特に所得税から差し引きできなかった分の住宅ローン控除は、翌年の住民税で控除されます。
ふるさと納税をする際は、各種控除について考慮しないとふるさと納税の控除上限額が変わってくるため、余分に納税することのないようにしたいものです。
最近のふるさと納税シミュレーションには、小規模企業共済等控除や住宅ローン控除・医療費控除を入力する項目がありますので、忘れず入力しましょう。
まとめ
ふるさと納税は地方・地域活性化や災害復興支援などで自治体を応援するために寄付をする新しい制度です。 所得税の控除や還付、翌年にかかる住民税の控除が期待できるだけでなく、返礼品と言う形で恩恵も受けられます。
また、各種ポータルサイトや上限額シミュレーターも充実していることから、初心者でもポイントさえ押さえれば始めやすいと言えます。
これからふるさと納税を検討している方は、上限額を入念にシミュレーションして自身が寄付できる金額がいくらまでなのかを確認しながら、上手にふるさと納税を活用しましょう。