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カメラのキタムラ・逸見さん「EC」をやめる!? 実店舗を持つ日本の小売企業の未来とは

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2016/03/14 08:00

2016年3月17日、ECzineでは無料カンファレンス「ECzine Day 2016 Spring」を開催します。基調セッションのタイトルは、「ショッピング新時代、小売ECサイトの役割とは」とし、カメラのキタムラ・逸見さんにがご登壇。本記事であらかじめ、基本的なところをおさえていただくと、当日のイベントをより楽しんでいただけると思います。

カメラのキタムラ・逸見さん、「EC」をやめる!?

――今回、ECzineのイベントで基調セッションにご登壇いただき、「小売ECサイトの役割」を話していただきたいとお願いしたのですが、まさかの、逸見さんが「EC事業部長」ではなくなるという衝撃的な噂を耳にしてしまいました。

はい、クビになりました(笑)。それは冗談ですが、キタムラでさらにEC・オムニチャネル化を進めるために、私にできることは何か、会長の北村さん、社長の浜田さんと話した中で決まったことです。執行役員はそのままで、全社視点の経営企画の立場からオムニチャネルを推進していきます。オムニチャネル担当ですから、何をやってもいいわけです。ECで問題があればそちらに口を出してもいいし、お店のオペレーションで問題があればそちらに口を出してもいい。オムニチャネルは全体最適の経営戦略だと気づいたからこその立ち位置です。

具体的には、当社の場合、マーケティングが圧倒的に弱く、展開しているサービスがほとんど認知されていないので、まずはそこをやります。セミナーでお話させていただくたびに、会社案内、クーポン券、アプリの冊子を配っていますが、セミナー後に必ず、それをご利用いただいた方から、「キタムラさんにこんなサービスがあるんですね、知りませんでした」と言われるんです。

先日も、オムニチャネルのレポートを書いている学生から相談を受けたんですが、実際に店に足を運んでリサーチしてくれているにもかかわらず、「就活用の証明写真ありますよね、あれ、キタムラさん全店どこでも撮れますか?」と言われましたから。本社の人間が聞いたら、ひっくり返るくらい驚くと思います。でも、それだけ知られていないのが実態なんです。

――ECでオムニチャネルを推進された逸見さんが、基盤が整ったうえで、全体のマーケティングに取り組むわけですね。

結局は、どれだけモノが売れるかですから。店で売れても、ネットで売れてもよいという基盤は整ったので、その上で、売れる前の認知をしていただくこと、それから買っていただいた後、またキタムラに来ていただくにはどうしたらいいかを考えます。

当社の理想中の理想のお客様像は、5年に一度カメラを買い、3年に一度家族写真を撮り、3ヶ月に一度写真をプリントし、2年に一度はスマートフォンを更新し、スマートフォンが壊れたら修理に来てくださる方、ご家族です。そして、店もネットも、スマホも、どのチャネルも用途に分けてお使いくださっているお客様です。

株式会社キタムラ
執行役員 経営企画 オムニチャネル推進担当
逸見光次郎さん

オムニチャネルというと、ネットでモノを売るという話になりがちですが、お客様がお使いになっている接点と、企業が提供する接点とを合わせるのが本当のオムニチャネルですから。お客様によっては、ネットでは情報収集だけして店で買うかもしれないし、人によってはダイレクトメールやLINEのプッシュ通知のほうが情報が届くかもしれない、そういう話ですよね。

――逸見さんのご尽力により、キタムラさんは日本のオムニチャネル先進企業になられたわけですが、オムニチャネルを進めたことで、企業としての手応えを感じていらっしゃいますか?

まず、キタムラでオムニチャネルが進んだのは、全国で直営店を運営し、店のスタッフが専門知識持って、ネットを活用する習慣があったこと。私は、その成果があまりうまく経営陣に伝わっていなかったので、明確に数字で見えるようにしただけです。一度経営陣が理解したら、そこからは早かったですよ。何より、利益や経営数字が見えていると、投資がしやすくなりますからね。

オムニチャネルの基盤が整ったうえで、これからマーケティングをやっていくことで、キタムラはさらに伸びていくはずです。あちこちで言っていることですが、カメラも、写真プリントも、スタジオ撮影も、スマホも、このままの状態で続けていたら、この先ものすごく伸びていくビジネスではない。だとしたら、お客様に利用頻度を上げていただくしかないんです。カメラという「商品」単位ではなく、「お客様」単位で見ていくわけです。それが本当のLTVですよね。

それも、さきほど述べたように、キタムラはひとりのお客様ではなく、家族の単位で見ていく。お子さんが生まれた初節句からお誕生日、卒業式、結婚と写真を撮るタイミングがあって、そのお子さんにまたお子さんが生まれて、同じことが繰り返されていく。その間に、もっと写真を使っていただける機会はないのかと考えると、その機会はたくさんあるんです。

先ほど就活の証明写真の例を出しましたが、時代にあわせて、撮影するだけでなくスマホにデータを送って、企業の就活ウェブエントリーにそのまま使えるようなサービスも提供している。でも、知られていない。だから、知っていただくためにマーケティングをやるんです。知っていただけば、今後もっと、キタムラは伸びていく余地があると考えています。

――マーケティング系のテクノロジーだと、プライベートDMPを導入されたというニュースも出ていました。

ECは数字が見えていますから、そこからちゃんと見える化していこうという取り組みです。まずは、自分たちが持っているデータをきちんと見て、お客様の傾向を把握していく。一眼カメラを買うのは男性が多く、写真プリントは女性、iPhoneの修理は18歳~20歳。いつも出しているTカードのヒストグラムですが、こういったことをさらにきちんと見ていこうと。

そのうえで、もともとTポイントカードの取り組みをしているわけですから、Tポイント会員の似たような傾向のお客様に来ていただけないだろうかといったことを考える。手当たり次第の新規顧客ではなく、いかに合わせて使っていただくかを考えていきます。

――オムニチャネルが整った上でのマーケティング、成果が楽しみです。一方で、オムニチャネルがキタムラさんほど進んでいる企業さんは、まだ少ないのが実態だと思いますが。

実際の取り組みできている・できていないはあると思いますが、考えかたとしては進んできていると思います。昔はそれこそ、ネットvs実店舗でしたが、最近は、どちらかがどちらかをうまく使いたいという発想になってきていますよね。それだけ、どこの会社も業績が厳しくて、必死で考えているんでしょう。

――ネックは実店舗のテクノロジー活用のように思いますが、原因はどこにあるのでしょうか。

まず、データ活用について言えば、難しいことをする必要はないんですよね。皆さん、たとえば「カメラを買い、その数ヶ月以内にプリントもしたのはこういう人です」と一生懸命分析して導き出すのですが、「それがわかって、どうするの?」と。先ばかり見て、施策に行く前に止まってしまう場合が多いんです。

そうではなくて、カメラを買ってくださった方に、次にプリントに来ていただくためにはどうしたらいいのか。どのチャネルを使い、どの情報を組み合わせてお届けするのが効果的なのか。そういう話ができるかどうかだと思います。昔は、目の前のお客様にあわせて、きちんとそういう接客ができていた。キタムラの店では、今もできていると思います。ただ、それが全体のマーケティングという取り組みになっていないから、私はそれをやりたいんです。

大規模な企業であれば、データ活用の意味はあると思いますが、小規模ならやらなくてもというのが私の考えです。私が以前、書店員をしていたときに、売上のデータがわかるのが2日後でしたから、本に入っている短冊を数えて、「正」の字を書いて注文していましたよ。目的が明確なら、それでどうにかなるんですよね。

――データでなく、ほかのテクノロジーはどうですか?

私は、店では必ずウェブを活用して、集客するべきだと思っています。ホームページやFacebookはそんなにお金かけずに始められますから、まず入り口を作り、そこからお店への案内やネット通販をやっていく。その後、ほとんどの小売さんがポイントカードを持ってますから、そこにつないでいけばいい。でも皆さん、実店舗とは別に、ネット会員を立てがちなんですよね。

実店舗のスタッフがテクノロジーがわからないという以前に、経営者の理解がない、ヨコの組織の協力がないといった、組織の話になります。だからご相談を受けると、「経営者に数字でわかるように説明していますか?」、経営者の方の場合には、「部下に対して、どういう評価をしていますか?」という話から始めます。

それを防ぐためにキタムラでは、社内評価として「関与売上」を設けていますが、それくらい、経営者の評価は大事なんです。事業間で競争させるのは、モノが売れる時代だったらいいのですが、今は、たくさんあるモノのなかから選んで買う時代ですから、あわなくなってきていますよね。


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