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ECzine Day 2024 June

2024年6月6日(木)10:00~17:40(予定)

アパレルECの今を語る

[対談]アーバンリサーチ坂本さんと「アパレルECトップクラスの企業」になるための「組織」を語る


アパレルEC関連のさまざまなゲストをお招きし、メガネスーパーでECを統括する川添隆さんと対談していただくこのコーナー。第7回は、アーバンリサーチの坂本さんにご登場いただきます。在庫一元管理、社内の評価制度を整えて、オムニチャネルに邁進するUR。目指すはアパレル業界でEC国内トップクラスの企業とのことです。

きめ細かいアーバンリサーチのECは10年前に1人体制で始まった

川添(メガネスーパー) 改めまして、坂本さんのこれまでのキャリアをお伺いできますか。

坂本(アーバンリサーチ) 1980年に今の会社に入社しまして、それから店長、バイヤー、マネージャーを経て、アーバンリサーチ第一号店をアメリカ村に出店した際に、責任者として従事していました。10年ほど前に、社長を含めた戦略会議で、これからWEB事業をやっていこうと議論していまして、実際に誰がやるのかという話になった時に、僕が一番最初に「やります」と手をあげたら、「どうぞどうぞ」と皆に言われてしまったと。

川添 10年前と言えば、モール型のファッションECサイトは存在していましたが、ブランド側の自社ECサイトというのは非常に少なかったはずです。たしかに、10年前だとそうなりますよね(笑)。

坂本 それから約10年間、WEB事業部のマネージャーとして取り組みました。ECに限って言うと、WEBデザイナーはいたんですが、運営に関しては、ほぼ、僕1人でやっていました。3年ごとにだいたいの目標を立てて、達成して、ようやく現在は90名ほどのスタッフがいる体制になり、事業部長をしております。

川添 3年ごとの目標設定というのが、非常に興味深いですね。僕がはじめてお目にかかったのは、この直近の3年間のはじまりというところでしょうか。

坂本 そうですね、3、4年前ですか。それまで、事業が多忙であったことと、本社が関西ということもあり、メディアに出ることがなかなかできずにいたのですが、ある新聞社さんのアパレルの座談会に呼んでいただいた際に、お会いしました。座談会の後の飲み会で、話が弾みまして、川添さんのお話を聞いていて、「この方は絶対成功するやろな」と期待していたら、いま、メガネスーパーで非常に活躍していらっしゃって、やっぱりなと。

川添 ありがとうございます(汗)。僕は以前から、坂本さんにお会いしたいと思っていました。アーバンリサーチさんのサイトは、ひとことで表現すると、すごくきめ細かいんです。モデル撮影のポージングや写真の構図などはもちろん、ボタンの配色、フォントの大きさなど、サイトの細かいところまで気を配られているし、バナーのデザインやキャンペーンは、タイトルやキャプションなども非常にユニーク。奇をてらっておもしろいのではなく、自然に入ってくるおもしろさというか。前職から今まで、自分たちのサイトもこういうサイトにしなきゃいけないと、研究して参考にさせていただいています。

直接お会いして坂本さんのお話を聞いて、そういったサイトにするまでに、何度もトライアンドエラーを繰り返されているんだなと、実感しました。今は事業部長というお立場ですが、サイトづくりはどこまで見ていらっしゃるんでしょうか。

坂本 基本的に、最終決裁は僕がしています。WEB事業部の管轄は、かなり幅が広くて、採寸、商品ページのアップ、コンテンツ、特集の制作、広告まわり、マーケティング、受注、カスタマー、販促といった業務ごとにチームを分けて、それぞれにチームリーダーがいます。そのリーダーを集めて、定例をして、しっかりと方向性を合わせるという形でやっていますから、新しい施策や、WEBデザインの大きな変更もその議題に上ります。僕が、WEBプロデューサーみたいな役割を担うこともありますね。

川添 3年ごとに目標を立てられたということですが、最初の3年はどのようなお取り組みだったんでしょうか。

坂本 まずは、自分自身がECとはなんぞやを勉強することが一番重要だと考えていました。カスタマー、メールのやり取り、商品手配もすべて担当して、売上目標を立てて、次のステージに上がるための準備をしていましたね。とはいえ、先ほど経歴をお話ししましたが、店長、バイヤー、エリアマネージャーをやってきたこともあり、ECも結局は接客じゃないかと感じていました。

川添 坂本さんは、自ら手を挙げられたということでしたが、WEBにはお詳しかったんでしょうか。

坂本 まったくなく、メールも打てなかったですね(笑)。キーボードの配列を見て、どうやって覚えたらいいのかと頭を悩ませるところからでした。

川添 そこからECをやると手を挙げられたのはとても大胆ですね(笑)。アーバンリサーチさんの事業は軌道に乗ってらっしゃったわけですから、フルフィルメントの運用代行会社やモールECが提供する運用代行サービスにすべて委託するという選択肢もあったのではないでしょうか。

坂本 それは、当社の習性、社長の考えかたでもありますが、まずは自分で、とことん納得いくまでやってみようと思いました。やってみた結果、一部を委託することもあるかもしれないけれど、やってみる前にすべてお任せするという発想はなかったです。

WEBについては、知識はなかったものの、嫌いではありませんでした。当時、すでに自分でパソコンを持っていて、家でインターネットにつないでいましたし。適当にボタン押すと、すぐバグってしまう時代でしたから、ノートパソコンも3台くらいはつぶしていました。それに、WEBの知識は、WEB上にありますから。必要な情報を検索して、勉強していきました。ASPカートの説明書は、当時ものすごく分厚かったので、最初からすべて読むのはあきらめて、実践から始めましたけれど。

進めていくうちに、先ほど川添さんが言われたように、「外部に任せたらどうか」「ECのためにそんなにたくさん人を採用しなくてもいい」という声も聞かれるようになりました。僕自身、勉強はしているけれど、自問自答しても答えが出ないこともありましたから。それでも、自分たちでやっていくメリットを考えてみれば、実店舗を出店していくよりも明らかにコストが低く、1人でも大きな売上を作ることができる。ECは将来的に、絶対に価値があるものになる。そう言い続けて、事業部を広げていったという過程もあります。

川添 10年前ほどに、ZOZO立ち上げ時に出店された方や、自社ECに取り組まれていた方々を、僕は勝手に「EC第一世代」とお呼びしているのですが、本当にいろいろな苦労があったはずです。あるEC担当者は、ブランドの責任者に胸ぐらをつかまれたと聞いています。皆さんのおかげで、今僕らが、ある程度社内で必要な事業だと認識されて、ECに取り組むことができると思っています。では、次の3年はどのような時代だったのでしょうか。

坂本 次のステージは、クオリティを上げること。それには、プロレベルの経験者が必要だと考えました。WEBデザイナーの採用から始まり、画像でブランド価値を上げていくために、プロのカメラマンも採用しましたし、WEB広告まわりを見てもらうために、広告代理店に勤務していた者を採用しました。

最初の3年間は、知っている人だけが知っているというサイトで、本当に濃いお客様が集まってくださっていました。アクティブ会員が80~90%を占めていましたから。加えて、ブランドも増やしました。はじめは1つのブランドだけだったのですが、3つ、4つと増やすうちに、売上が前年比300~500%となり、弾みがつきました。

そうなるともう、僕1人で、机の上にパソコンを置いただけの事業規模ではいけないと。在庫を持たずに、注文が入ると各店にFAXを送って、「ある」と回答があった店に、僕自身が車でピッキングに回ったりしていましたから。それが、売上が上がったことで在庫を持つ必要があり、写真撮影のためにスタジオが必要になりという背景もあって、売上規模を上げるための環境を作ることに取り組みました。

川添 在庫を持たずに、坂本さん自ら周辺店舗へピッキングされていたとは驚きです! 本当にお1人でやられていたんですね。今振り返ると、その経験は絶対によかったんじゃないですか。僕もそうですが、自分で頭や手足を動かしてやると見えてくるものは確実にありますよね。そしてECを拡大したいと思った時には、絶対に「人」が必要になるし、その人の力が勝負を決めます。けれどそこで、写真のプロ、WEB広告のプロを社員として採用するという決断は、本当に英断だと思います。そういったプロは絶対数は少ないものの、確実に次の大きな成長に必要になりますし。坂本さんは創業メンバーでもあられるので、意見が通りやすいというのもあったのでしょうか。

坂本 いや、そんなに簡単には通らなかったので、何度も繰り返し言い続けました。最初から、全部まとめては通らないので、通りそうなところから1つずつ、通して、実績を出しての繰り返しでした。

株式会社アーバンリサーチ WEB事業部 部長 坂本満広さん。1980年アーバンリサーチ入社。店長、バイヤーを経て1985年に店舗マネージャーに就任。1997年には、URBAN RESEARCHアメリカ村店(1号店)の責任者として従事。2004年から、通販の責任者として事業を展開し、約10年で売上高を80億円にした。2015年より現職。

川添 そういう粘り強さ、胆力が会社を変えていったんですね。そして、直近の、最後の3年はどのようなお取り組みをされたんでしょうか。

坂本 在庫を一元化して、モールも含めてすべてつないでいくことを、それ以前から考えていました。基幹システムとの調整や、会社全体にかかわる判断でもありますので、なかなか話が進まなかったのですが、9、10年目にしてようやく形が整ったというところです。

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この記事の著者

ワダ スミエ(ワダ スミエ)

2013年11月11日〜2023年3月31日までECzine編集部在籍。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

コマースプロデューサー 川添 隆(カワゾエ タカシ)

組織で動く企業の中で、組織・チーム・ユーザーのバランスをとりながら”組織Eコマース&デジタル推進”を泥臭く改革進める人。2社の企業再生経験があり、独自の方法論と実践を通じてEコマース事業において、1社では売上を10倍以上に、5社では2倍以上に増加させてきた。2017年より代表を務めるエバンで小売企業...

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