ECサイトがメディア化を目指して、失敗しないために
まず土屋さんは、大手企業によるEC運営会社の買収や、メディア企業がEC事業を始めていることになど触れ、EC事業者を含めたネット業界が「メディアコマース」に注目している現状を確認。
土屋さんが所属するアラタナでは、「dia STANDARD」というモノにフォーカスしたメディアの立ち上げを手がけたほか、グループ会社にファッションメディア「ハニカム」を持ち、メディアにECの機能をつけ、販売を行っている。1着数十万円のアイテムもある高額商品を扱うサイトだが、「きちんと情報発信していけば、高単価なモノも売れる」と、メディアコマースに手応えを感じていると言う。
こうしたノウハウを活かし、CMSを基本としたメディアコマースシステムも提供しているが、「簡単に手を出してほしくない」と警鐘を鳴らす。
「多くのイケてる会社さんがメディアに力を入れているので、皆さん、自社もやらなきゃいけないと焦る気持ちがあると思います。実際アラタナにも、ここ1年で、大変多くのお客様からメディアコマースについてお問い合わせをいただいています。
ただしこの背景には、他社との差別化や収益アップといった課題を解決してくれるのがメディアコマースだ、一発逆転ができるのではないか、という期待があるのではないでしょうか。流行りに乗って始めても、最低半年は継続しなければ意味がありません。自社でそれができるのかを含め、冷静に考えていただければと思います」
メディア先行型のメディアコマースと混同してはいけない
冷静に考えようと前置きした上で、そもそもメディア、キュレーション、コマースの役割について再確認。
「そもそもメディアは、価値あるコンテンツが掲載されていて、読みたいと人が集まってくるものです。そこにキュレーションという提案が加わって、『読んで面白かった』から『買いたい』という次の行動に促します。メディアコマースにはこの2つが欠かせません。
そして、メディアコマースに取り組む企業のパターンとして、メディア先行型、EC先行型の2つがありますが、メディア先行型のパターンは、メディアに広告収入以外のマネタイズ手法として、ECの機能をつけようというものです。こういった背景があるのですが、メディアコマースだ!と盛り上がっている空気の中にいると、忘れてしまいがちです」
そして、もう1つのパターンが、EC先行型のメディアコマースである。すでに独自の強みを持つECサイトで、さらに提案力を上げたい、SEOなどのためにもコンテンツ強化していきたいと考えてメディア化するのが、「理想的なパターンです」と土屋さんは言う。
「他社との差別化、付加価値の提案ですから、ECサイトのフェーズとしては後半です。『なんとなくライフスタイル提案したい』といったご相談も多いのですが、そういう事業者さんは大半がまだそのフェーズまで至っていないのではないかと感じます」
それでも、メディア化、コンテンツマーケティングには取り組みたいところ。次ページでは、明日からできる取り組みを紹介する。