置き配盗難の責任を取るのは誰？
置き配指定した荷物が盗難にあった場合、誰の責任になるのか見ていこう。まず、盗難を含む置き配トラブルの状況確認からだ。
増える置き配トラブル
ヤマト運輸が2024年11月に発表したアンケート調査によると、他社も含めた置き配の利用経験者は、全体の78.5％に上った。全国を8つのエリアに分けたエリア別の利用率も75.5～81.4％と、地域による差はあまりない。
消費者トラブルの改善に取り組む国民生活センターによると、代表的なトラブルは「お届け完了の写真には確かに商品が写っているものの、商品そのものが見当たらない」というもの。ほかにも、「宅配バッグごと盗まれてしまった」「自宅ではないところに届けられた」「風雨で荷物が傷んだ」といったケースもある。
置き配トラブルは、盗難だけではない。誤配や破損、紛失もある。東京都消費生活センターによると、置き配に関する相談件数は年々増加。コロナ禍前の約3倍となっている。都市部には、建物や部屋番号間違いなどの誤配も少なくないだろう。
- 2019年度：105件
- 2020年度：378件
- 2021年度：337件
- 2022年度：319件
- 2023年度：368件
- 2024年度：361件（4～12月まで）
その一方で、置き配トラブルの発生率は10万件に1件未満だという調査結果もある（LOCCO・Tポイント・ジャパン調べ）。国土交通省が公開している宅配便の取扱実績によると、2023年は50億733万個だ。前述したヤマト運輸のアンケートによると、最も利用する受け取り方法に置き配を選んだ人の割合は、33.8％。50.7憶個の33.8％は、17.1億個となるため、仮に10万件に1件未満という数字で試算すると、年間で約1.7万件という計算になる。
置き配盗難の責任は誰にあるのか？
では、置き配盗難の責任は誰にあるのかというと、それは原則として利用者だ。発送元（販売元）でも配送会社でもないという点に注意したい。発送元は、配送会社に荷物を預けたら業務完了で、配送会社は利用者に荷物を届けたら業務完了ということだ。
発送元による配送の利用規約に「指定場所への配送が完了したら、その後のトラブルには一切責任を負わない」といった内容が盛り込まれているのが一般的。利用者はそれに同意した上で配送を依頼している場合が多いことに加えて、置き配を指定した時点で配送完了後のトラブルを引き受ける意思があるとみなされることも覚えておきたい。
ただし、利用者が指定していないにもかかわらず置き配にされてしまった場合は、発送元または配送会社の責任となる。誤配による盗難は、配送会社の責任だ。
それでも置き配の利用が進む理由
そうしたリスクがあるとわかっていながらも、置き配の利用が進むのには理由がある。
- 宅配便取扱個数の増加
- 再配達率低下への取り組み
- ドライバー不足
- CO2排出量問題（環境問題）
宅配便取扱個数は右肩上がりで、近年ではコロナ禍の影響で取扱個数が急増した。2019年は43.2億個だったが、2020年には48.4億個となり、2021年の49.5億個、2022年の50.6億個、2023年の50.1億個となっている。
一方、再配達率は減少傾向にある。2020～2023年の間は、11～12％で推移した。2023年4月には11.4％だったものの、1年間で1ポイント下がり、2024年4月には10.2％へと低下。しかし、宅配便の取扱個数が増加傾向にあるため、2021年は約5億5,000万個、2022年は約5億9,000万個、2023年は約5億7,000万個という数が再配達されたことになる（国土交通省調べ）。
再配達を担っているのはドライバーだ。ドライバー不足はもちろんのこと、再配達にかかるドライバーの労力や荷物を運ぶ車両から排出される二酸化炭素量も問題になっている。国土交通省によると、再配達の労力はドライバー6万人分に相当し、年間25.4万トン（推測値）の二酸化炭素が排出されるという。
以上のことから、社会全体として置き配を利用する流れは今後も進んでいくだろう。
もし置き配の荷物が盗難にあったら
本来、もっとも責められるべきは、当然ながら荷物を盗んだ犯人であることに間違いはない。置き配の持ち去りは刑法で窃盗罪に該当する。10年以下の懲役または50万円以下の罰金に処される犯罪だ。そこで、ここでは、万が一置き配の荷物が盗難にあった場合にはどのようにしたら良いかという対処法を取り上げる。
配送状況を確認する
荷物が見当たらない場合、以下の手順に沿って確認を進めよう。
- 配送状況の確認（アプリ、Webサイト、電話など）
- 配送先と置き配指定の確認
- 家族による受け取りやそのほかの配送トラブルの確認
まずは、配送状況を確認しよう。配送状況の確認には、配送会社のアプリやWebサイト、メール、電話といった方法があり、LINEで配送状況の確認ができるようにしている業者もある。
Webサイトやメールの場合、荷物の追跡番号（トラッキングナンバー）が必要だ。メールのURLなどから飛んだ先のWebサイトに入力することで、自分の荷物がどのような状況にあるのかを確認できる。電話の場合には、営業所やドライバーなど、配送会社によって確認先が異なるため、指定の方法に沿わなければならない。
比較的簡単に確認できるのは、配送会社のアプリまたはLINEだ。追跡番号を入力する手間もなく、荷物の配送予定日を（時間指定があればそれも）自動的に知らせてくれるので便利。なお、受け取り日時や場所の変更もスマホひとつで設定可能だ。
次に、配送先と置き配指定の確認をしよう。自分が注文した商品の配送先が自分が設定したと思っている場所と一致しているかの確認だ。配送先を自宅にしたつもりが、ロッカー受け取りやコンビニになっていないか、荷物が郵便受けや物置、車庫などほかの場所に入っていないかを見る。それと同時に、自分が確実に置き配を指定したかもチェックしておこう。
配送済みかつ配送指定にも間違いがない場合には、家族が荷物を屋内に入れている可能性もあるので、そこも確認しよう。防犯カメラの映像を確認できるなら、そこも要確認だ。
発送元または配送会社に連絡する
それでも荷物が見当たらない場合は、盗難や誤配、紛失の可能性が高い。この段階になってから、発送元または配送会社に連絡することをおすすめする。発送元や配送会社のほうでも、荷物が不達かどうかを確認する。配送トラブルを補償する会社もあるので、確認が必要だ。
たとえば、Amazonでは置き配の補償があり、商品の再送や返金に対応する。通常は対面などを希望する人が置き配を指定した場合でも、補償対象となる。ただし、Amazonによる状況確認が不可欠だ。
楽天市場は、置き配の盗難や紛失、破損を補償しないが、配送会社に日本郵便を指定している。楽天スーパーロジスティクス（RSL）から出荷された荷物の場合、日本郵便の置き配保険を利用できる場合があると案内している。日本郵便の置き配保険は、ゆうパックで郵送された場合、1万円を上限として盗難を補償するというもの。補償対象にならないものや申請期限、利用回数などの条件もある。
Amazonや楽天市場のような大手ECモールではそうしたサービスが提供されているが、一般的に発送元は置き配盗難を補償しない傾向にある。
警察に被害届を出す
利用者や配送会社の確認を経て、置き配の荷物が盗難にあったと判断された場合には、すみやかに警察に電話のうえ被害届を提出しよう。たとえ戻って来ないかもしれないと思っていても、被害届を出さなければ始まらないし、犯罪発生の事実や再犯防止のために被害届を出しておくほうが良いだろう。被害届の提出時には、購入商品の配送完了通知や注文情報など、盗難の証拠となる書類を持参しよう。
置き配の盗難を証明するには、防犯カメラの映像が有力だとされている。マンションなどには防犯カメラが設置されている可能性が高いため、防犯カメラの映像を確認できるか管理者に聞いてみよう。戸建ての場合、防犯カメラの設置や防犯用セキュリティサービスへの加入をしている場合には、映像を確認しよう。
また、駐車中も録画できるドライブレコーダーがあり、置き配指定場所が画角に収まるようなら、記録に残っているかもしれない。なお、警察による現場確認があるため、現状をなるべく保存しておくこともおすすめする。
置き配の盗難防止策8選
ここからは、置き配の盗難防止策について取り上げていこう。代表的な盗難防止策を8つ紹介するので、参考にしてほしい。
受け取り場所を玄関前から変更する
2020年3月24日、Amazonの配送設定のデフォルトが、置き配（玄関前）に変更された。帰宅してすぐに目につく玄関前は、便利な反面、置きっぱなしになる可能性も高く無防備だともいえる。そこで、置き配の指定場所をほかの場所に変更するという方法を挙げておきたい。
たとえば、Amazonや楽天市場では、玄関前に加えて、宅配ボックスや郵便受け、メーターボックス、物置、車庫といった選択肢がある。宅配ボックスや郵便受けは鍵つきのものがほとんどだが、鍵を持ち歩く必要のない暗証番号でロックするタイプのほうが便利だといえるだろう。
Amazonの場合には、建物内管理人やご近所の方という選択肢もある。建物内管理人はマンション向け、ご近所の方は戸建て向けだろう。ご近所さんとの関係値によるだろうが、身近なところに受け取ってくれる人がいるのであれば、お願いしても良いのではないだろうか。
ロッカー受け取りサービス
通勤や通学の途中にいつも立ち寄る場所があるという人におすすめしたいのが、ロッカー受け取りサービスだ。ロッカー受け取りサービスとは、荷物の受け取り指定ができるロッカーのこと。配送業者が荷物を預け入れ、利用者はいつでも好きな時間に受け取りが可能だ。Amazonロッカーやはこぽすがよく知られている。
設置場所は、駅やコンビニ、スーパー、ドラッグストア、ショッピングモール、郵便局、駐車場、公共施設など。店舗外にあれば24時間受け取り可能だが、店舗や施設内に設置されている場合には、営業時間内に受け取らなければならない。預かり期間は配送日から3日間で、利用者は通知される暗証番号で開錠する。
受け取り可能な荷物のサイズや重量、種類には限りがあり、期限内に受け取れなかった場合の対応も各社それぞれに異なる。利用条件を事前に確認しておく必要はあるが、いつも立ち寄る場所でついでに荷物を受け取れるのは、ありがたい話ではないだろうか。
なお、PUDOステーション（宅配便ロッカー）であれば、荷物の受け取りだけではなく発送も可能だ。
コンビニ受け取りサービス
ロッカー受け取りサービスにも登場したコンビニだが、コンビニ受け取りサービスにはコンビニならではの良さがある。
- 代金の支払いが発生する荷物の受け取りも可能
- ロッカーよりも対応できる荷物のサイズや重量、種類が多い
- 保管期間がロッカーよりも長い
- 人による受け取り対応
セブンイレブンやファミリーマート、ローソン、ミニストップ、デイリーヤマザキなどが対応している。コンビニは国内に約5万件あるので、通勤通学途中のコンビニを指定しておけば、受け取りに立ち寄ることはそれほど難しくはないだろう。
ただし、コンビニと提携しているショップの荷物しか受け取ることができない。たとえば、Amazonの荷物はセブンイレブンで受け取れない（2025年3月時点）といったことが現時点での課題だが、誰もが行くコンビニでの受け取りも、玄関前の置き配に代わる有力な選択肢のひとつだろう。
コンビニ以外の店頭受け取りサービス
コンビニ以外の店舗でも受け取りサービスを実施しているところがある。ゆうパックは全国の郵便局で受取可能だ。着払いや代引き、重量のあるものでも預かってくれる。郵便局に定期的に足を運ぶ人には、そう大きな負担にはならないはずだ。また、楽天では楽天市場で購入した商品を提携している一般店舗の店頭で受け取ることもできる。
家に宅配ボックスを設置する
宅配ボックスを設置するのも、置き配の盗難防止策のひとつだ。戸建て住宅に住んでいる人で、玄関先の置き配が便利と感じているならば検討したいところ。宅配ボックスにもたくさん種類があるので、ここで見ていこう。
- 簡易型：宅配ボックスをワイヤーで固定するタイプ（工事不要）
- 据え置き型：宅配ボックスをアンカーなどで固定するタイプ（要工事）
- 壁掛け型：住宅の外壁などにビスで固定するタイプ（工事不要 or 要工事）
- 壁埋め込み型：住宅の門などに埋め込むタイプ（要工事）
- 貫通型：住宅の外壁に埋め込むタイプ（要工事）
- 門柱型：インターホンや郵便受けと一体になっているタイプ（要工事）
設置がもっとも簡単なのは、簡易型だ。宅配ボックスとワイヤーロックなどを購入し、固定すれば完了する。固定先は柱やドアノブなどだ。自力で設置できることや設置後の移動も簡単なのが魅力だといえる。
据え置き型とは、宅配ボックスをアンカーボルトや接着剤などで床に固定するタイプのこと。工事が必要だが後づけが簡単で、設置場所を選べるのが利点だ。固定するため、容量の大きな宅配ボックスの設置も可能となっている。
床に物を置きたくない場合におすすめなのが、壁掛け型だ。家の外壁などにビスで固定する。後づけも可能で、床に固定するタイプより宅配ボックスの大きさや耐荷重量が低くなるものの、床面をスッキリさせておける。電動ドライバーなどの工具が必要となるため、工事を依頼するのもありだろう。ただし、家の外壁に取り付ける場合には、ハウスメーカーの保証を事前に確認することをおすすめする。
壁埋め込み型とは、門や塀などに埋め込むタイプの宅配ボックスのこと。郵便受けと一体型かセットになっていることが多い。配達員が外側から荷物を入れ、利用者は内側から受け取る。外構工事の際に施工するため、新築やリフォーム時にしか選択できない。それを住宅の外壁で行うのが、貫通型だ。
表札やインターホン、郵便受け、照明などと一体になっているのが門柱型。後づけは可能だが工事が必要で、玄関前に設置されることが多い。デザインは豊富なもののスリムなタイプが多いため、受け取れる荷物のサイズや重量には注意が必要だ。
置き配盗難防止グッズを利用する
置き配盗難防止グッズの代表ともいえるのが、鍵つき置き配バッグだ。ボストンバッグのようなデザインやソフト素材でできている箱型のタイプが主流で、バッグ開閉部用の鍵と固定のためのワイヤーロックがセットになっているものが多い。配達員に施錠してもらい、利用者が開錠する。
固定できる柱やドアノブ、窓格子などがあれば、戸建てやマンション、アパートなどを問わずどこでも使えるだけでなく、一定の置き場所を取らないことや使わないときには折りたたんで収納できる点も魅力だ。
防犯カメラを設置する
防犯カメラの設置という選択肢もある。置き配盗難という万が一の事態に備えるだけでなく、通常の防犯対策としても有効な手段だ。また、配達員が通常、どのように荷物を扱っているかを確認することもでき、その意味で破損防止にもつながるといえる。
おすすめしたいのは、スマホやタブレット、PCで画像が確認できる機能を持つ屋外型防犯カメラだ。カメラの選び方は、画質や録画時間、動画の保存先、人を検知し通知する機能、夜間の画像の品質、設置や設定の簡単さなどがある。防塵や防水対応かどうかも確認しておこう。
一部の自治体では、自治会や家庭用の防犯カメラ購入に補助金を交付している。補助金の交付には、補助対象や補助率、金額の上限といった条件があるため、詳しくは自治体へ確認してみると良いだろう。
置き配の盗難保険に加入する
置き配の盗難保険への加入は、厳密には盗難防止策ではなく盗難対応策だが、紹介しておこう。コロナ禍による置き配の利用やそれに伴う置き配トラブルの増加を受け、損害保険が協業で置き配盗難保険を用意している。
前述した日本郵便の置き配保険が、それだ。現時点では、損保ジャパンと三井住友海上、東京海上日動の各社が協業する形で、日本郵便の配達物についての置き配保険を運用している。その内容は、最大1万円を年2回まで補償するというもの。
また、そのほかの配送会社による場合には、損保ジャパンが個人用火災保険で置き配盗難に対応するとしている。適用されるのは、保険開始日が2021年1月1日以降のものなので、それ以前に加入している場合は適用外だ。
なお、政府による再配達削減施策「置き配ポイント」の実施や配送会社を対象とする置き配保険が徐々に広がってきているため、利用者向けの置き配保険が今後どうなっていくか注視していこう。
盗難対策を講じて置き配を上手に活用しよう
ここまで、置き配の盗難の現状や責任の所在、被害にあった場合の対処法、盗難防止策について見てきた。ドライバー不足や配送車両から排出されるCO2削減目標など、再配達問題の背景には社会課題が存在する。
そのような理由から、置き配はますます求められていくだろう。しかし、置き配の荷物が盗難にあった場合の責任は、原則として利用者にあるということを忘れてはならない。ここで取り上げた盗難防止策を踏まえて適切な対応を取り、これからも置き配を活用していこう。
