ECのメディア化でどうなった?をクラシコム青木さんに聞く
――2014年2月に取材させていただいた際(記事)に、御社はもう、メディア化の次を見ていらっしゃるということでした。でも業界ではかなり、「メディアコマース」という言葉が流行っています。改めて、「北欧、暮らしの道具店」のメディア化がどういうものだったか教えていただけますか?
「ECサイトのメディア化について、2012年2月に『WebSig24/7』という場で講演させていただいたことがあります。その当時、日本の多くのEC事業者が、モールありきで考えていることに問題意識を持っていました。もちろん、集客力などモールにも素晴らしいところはあるんですが、差別化するために、販促以外の手がなかなか打てないというのがあります。僕らは2011年末に楽天市場を撤退していて、別の方法もあるし、やろうと思っていると発信することで、同じような軸で考える人が増えたらいいなと。
その講演では、メディア化がもたらす1つの効能みたいなことをお話したんですけど、この3年間、そこだけ切り取られて有効な手段だと言われ、すごく心苦しいなと思っていたんです。
僕らがメディア化に取り組んだのは、そもそもコマースとメディアが離れているから、外部のメディアに広告費を払う必要がある。それならはじめからくっつけてしまえばいいという発想から。
もう1つは、PL上のイノベーションです。原価を下げてイノベーションを起こすのは大手企業でないと難しい、だったら僕らは、販管費でイノベーションを起こそうと。急成長フェーズにおいては広告費が2~3割を占めているわけですから、これがなくなればまったく新しいビジネスになります。毎年外部のメディアに、地方のマンションが買えるくらいのお金を払っているけど、自社で使ったらもっとおもしろいことできるんじゃね?と。そうなると、表向きはECに見えて、まったく別の事業体になるんですよね」
――メディア化して、ECとしては成功したんでしょうか。メディア化前後の変化などありますか?
「いちばん大きいのは、プレスリリースを出す側からいただく側に変わったこと。売上で言えば、メディア化を始めた2012年の4倍になっています。だから、当初の狙いとしては達成できたんじゃないかな。一方で、セッション回数は7倍になっているので、セッションあたりのコンバージョンレートがものすごく下がっているということです。
それは、メディア化によって、用事がなくてもカジュアルに来ていただくことを推奨しているのに加えて、トラフィックを見るとデバイスの8割がスマートフォンになっているから。サーチ経由が25%を切って、ソーシャルメディアからの流入が3割を超えています。
スマホシフトは、いずれ皆そうなるのかもしれない。でも、いち早く対応したことで、苦しい時計の進みを自分たちでだいぶ早めちゃった感があるんです。メディア化に取り組みはじめた時には、そこまでスマホのことを意識してなかったんですけどね。これまで以上に、トラフィックを売上につなげていくのが、難しくなっていると思います」