大前さんは制作会社の会長を務めながら、ウェブチャットボットのサービス「Tagment」を開発する会社の社長、またBBT大学の専任教授も務めています。わかったようでわからない、AIやチャットボットの現状と活用方法を詳しく説明していただきました。
AIの基準は、機械学習を活用しているか否か
チャットボットはシナリオを事前にプログラムしている
森野 まずは基本的な部分から教えてください。AI、人工知能、チャットボットなどの名前が出てこない日がないぐらい話題になっていますが、結局のところ、これらはどういったもので、どう違うのでしょうか?
大前 あるサービスがAIを活用しているかどうかは、機械学習を利用しているか否かで認識しています。機械学習によって予測を立てる、行動を最適化する、言動の最適化を自動的に行う、というのがAIかなと。
対してチャットボットとは、「こう聞かれたらこう答える」と開発者がシナリオを作っておき、あらかじめ準備された答えを返すというのが基礎的なしくみです。そこにAIを入れて人間らしい会話をさせることもできますが、世の中の大半のチャットボットは、開発者が事前に準備した台詞を返しています。
森野 なるほど。チャットボットはあらかじめ、シナリオを作っておかないといけないということですね?
大前 そうですね。チャットボットの裏側に、IBMの「Watson(ワトソン)」などのAIが入っていると状況は大きく変わってくると思いますけどね。
最近、囲碁や将棋でAIが人間に勝ったニュース等から「AIが人間を駆逐する」といったふうに捉えている人は、AIを少々、過大評価しているのではないでしょうか。これらは囲碁、将棋に特化した人工知能を作った結果であって、他の分野で人間に勝てるわけではありません。
囲碁や将棋のような特定分野についてひたすら学習させ、人間では不可能な大量の計算を行った結果、人間では気づかないわずかな差に気づき、成果の違いを発見することができたということなんです。これが基本的な現在のAIの使われかたなんですね。
森野 確かに、囲碁で人間に勝ったAIが、店頭で接客できるかと言われればできないでしょうね。人工知能って「万能知能」みたいなイメージがあったのですが、今のところは狭い分野に特化しているんですね。
大前 AIを売り物にしている企業の内部で、人間が汗水たらして学習させているわけです。それって最初から、人間が対応したほうが早いんじゃないか?という笑い話もあります(笑)。
もちろん、ある水準を超えると人間を超えた能力を発揮するのですが、その水準を超えるまでは人間が蓄積させるか、方向性を与えないとなかなか発達しない。それがAIの現状だという認識です。