使いやすくするためのECリニューアルなのに、なぜ?
山の上に出店しながら、全国にファンを抱えるパンと日用品の店「わざわざ」を知っているだろうか。同ブランドを運営する株式会社わざわざは、5つの実店舗と2つの自社ECサイトを通じて、自家製のパンと厳選した生活必需品の販売を行っている。2009年に平田氏が一人で創業し、今や年間売上3億円を超える企業に成長した。
「『わざわざ』は『私が実際に使ってみてよかったから、使ってみて』という家族や友人へのおすすめの延長線上にあります。売るために商品を集めるのではなく、自分自身がユーザーとして気に入ったものを販売している点が、他社との大きな違いです」
ウェブサイトやシステムデザインの実務経験をもつ平田氏は、創業時よりEC販売も行ってきた。当初はECカート用のソフトウェアを購入し、自ら自社ECサイトを構築。2012年に、クラウド型のECカートシステムに乗り換えている。
その後、2016年に再リニューアル。ECカートはそのままに、初めて外部パートナーに改修を依頼した。平田氏は「これが大きな飛躍のポイントになった」と振り返る。
「現在は経営に関する業務を中心に行っていますが、当時は自分でパンを焼いていました。そのため、厨房でもスマートフォンでサイト更新ができるようにしたのです。ただ、他ECサイトや実店舗との在庫・出荷連携がしづらい点が課題として残っていました」
そこで、「わざわざ」が3度目となる自社ECサイトの刷新を行ったのが、2024年7月のことだ。今度はカートシステムをShopifyに移行。フロントのデザインを大きく変更し、コンテンツも充実化している。加えて、送料に関する情報など細かい点にも改善を施した。
ところが、オープン直後はEC売上が前年の同時期と比べてなんと半分に落ちたという。
「リニューアル自体は2021年頃から検討しており、パートナー企業への相談も進めていました。しかし、想定外のトラブルにより、8割程度が完成した状態で構築がストップしてしまったのです。改めて別のパートナー企業を探し、なんとか形にできました。リニューアルにかなり投資していたこともあり、急いでオープンしましたが、結果は売上が半減。当初は大失敗のリニューアルだったと思います」
それが、オープンから4ヵ月が経過した2024年11月時点で、売上は前年比120%を記録している。11月だけで見ると前月比の倍だ。なぜ「わざわざ」は再び立ち上がれたのだろうか。