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おさえておきたいEC・通販先進企業

独自のDX戦略に力を入れるユナイテッドアローズのビジネスモデルとは


 ユニークで質の高いセレクトで国内外の注目を集める、アパレル大手のユナイテッドアローズ。実店舗だけでなくECサイトなどをはじめとしたデジタル活用にも積極的です。独自のDX戦略について、同社の基本的なビジネスモデルとともに解説します。

 高感度なセレクトが強みの株式会社ユナイテッドアローズは、国内はもちろん海外からも高く評価される大手アパレル企業です。同社では全国的な実店舗の展開だけでなく、近年はデジタルを使った施策も強化しており、新しいトレンドへの対応も進んでいます。

 この記事では、そんなユナイテッドアローズの基本的なビジネスモデルに触れつつ、新たに採用している独自のDX戦略について詳しく解説します。

株式会社ユナイテッドアローズの企業情報・事業内容の概要

 まずは、株式会社ユナイテッドアローズの基本的な企業情報や事業の内容について、確認しましょう。

株式会社ユナイテッドアローズの企業情報

 以下の表では、株式会社ユナイテッドアローズの企業情報を簡単にまとめています。

社名 株式会社ユナイテッドアローズ
本社所在地 東京都渋谷区神宮前三丁目28番1号
設立年月 1989年10月
代表者名 代表取締役 社長執行役員CEO 松崎 善則
株式公開 東証プライム市場上場
資本金 30億3,000万円
おもなグループ会社
  • 株式会社コーエン
  • 台湾聯合艾諾股份有限公司
  • 悠艾(上海)商貿有限公司
  • CHROME HEARTS JP合同会社 など

株式会社ユナイテッドアローズの事業内容

 株式会社ユナイテッドアローズの事業内容を理解するうえで必要なのが、市場の細分化です。同社では、トレンドマーケットを以下の4つに分類してアパレル事業を展開しています。

  • ハイエンドマーケット
  • トレンドマーケット
  • ミッド・トレンドマーケット
  • ニュートレンドマーケット

 国内アパレル市場におけるラグジュアリーブランドと同等の位置づけの「ハイエンドマーケット」では、貴金属ブランドの「Chrome Hearts(クロムハーツ)」を展開。

 感度の高いトレンドマーケットでは「UNITED ARROWS(ユナイテッドアローズ)」「BEAUTY&YOUTH(ビューティアンドユース)」といったブランドを展開しています。

 さらに、ミッド・トレンドマーケットには「green label relaxing(グリーンレーベルリラクシング)」を、ニュートレンドマーケットには「coen(コーエン)」といったブランドを割り当てています。

 なお同社では、デイリーカジュアルや日用品、郊外型衣料品店などをヴォリュームマーケットと位置づけており、この領域はカバーしていません。

 あくまでラグジュアリーブランドや都市型・準都市型衣料品店としてのポジションに特化した事業展開が、同社の強力なブランドを支える力となっているといえるでしょう。

株式会社ユナイテッドアローズの沿革

 以下の表では、株式会社ユナイテッドアローズの沿革を簡単にまとめています。

年月 沿革
1989年10月 東京都渋谷区(神宮前2丁目)に株式会社ユナイテッドアローズ設立
1999年12月 クロムハーツ事業の本格展開開始
2006年9月 ビューティ&ユース ユナイテッドアローズ 1号店オープン
2008年5月 株式会社コーエンを子会社として設立
2009年9月 自社運営通販サイト「ユナイテッドアローズオンラインストア」オープン
2012年12月 日本取引所グループによる「第1回企業価値向上表彰」大賞を受賞
2013年8月 台湾聯合艾諾股份有限公司(UNITED ARROWS TAIWAN LTD.)を子会社として設立
2019年12月 悠艾(上海)商貿有限公司(UNITED ARROWS SHANGHAI LTD.)を子会社として設立
2022年 3月 自社運営通販サイトを「ユナイテッドアローズオンライン」としてリニューアルオープン

 1990年代前後から事業を開始した株式会社ユナイテッドアローズは、90年代の成長を経て、2000年代より次々と新たなブランドを立ち上げ、商品の差別化やプライベートブランドの取り扱いを始めました。

 海外からもファンが来店する同社の実店舗は、現在台湾や上海へも進出しており、アジア地域でのブランド認知が広まりつつあります。

 また、2009年に立ち上げたオンラインストアも2022年には「ユナイテッドアローズオンライン」としてリニューアルオープンを遂げ、本格的なEC強化に向けて動き出しているところです。

株式会社ユナイテッドアローズの強みやDX戦略

 ここでは、株式会社ユナイテッドアローズが他社との差別化に成功している強みやビジネスモデル、そして近年強化しているDX戦略について解説します。

おもなビジネスモデル

 株式会社ユナイテッドアローズのビジネスモデルでは、以下の3要素を磨き上げることで競争力につなげることを目指しています。

  • ヒト(接客・サービス):高いホスピタリティに基づいた高度な接客やサービス
  • モノ(商品):世界的な広い視野で適産、適選された顧客ニーズを満たす商品
  • ウツワ(施設・空間・環境):全ての顧客接点における真の心地よさを追求した施設・空間・環境

 また、企業名にもなっているブランド「ユナイテッドアローズ」を広告塔としたブランドポートフォリオ戦略もビジネスモデルの一つです。同戦略からは、ヴォリュームマーケットには手をつけず、消費者の「憧れ」にマッチしたお店のイメージを広く定着させることを目指す姿勢が感じられます。

 ユナイテッドアローズブランドの店舗は国内でも40店舗程度と、店舗数としてはラグジュアリーブランドに近いものがあります。このようなビジネスモデルを維持することで、アパレル企業が陥りやすい薄利多売体質の事業経営ではなく、余裕を持った経営につなげているといえるでしょう。

展開しているDX戦略の特長

 優れたブランディングと実店舗経営の力もさることながら、株式会社ユナイテッドアローズが近年力を入れているのがDX戦略です。

 2021年4月、同社はDX推進センターを設立し、広告宣伝や販促におけるデジタルシフトを加速させています。

 ユナイテッドアローズはECサイトなどのオンライン空間も大切な顧客体験の場である「ウツワ」と認識しています。そのため、オンラインでの顧客とのコミュニケーションを積極的に増やし、来店促進に向けたデジタルマーケティング施策を実行してきました。

 DX推進の一環として、顧客へのインタビューやデータ解析を進めるなかで見えてきたのが、店舗での豊かな顧客体験の重要性です。デジタルから得られた情報をもとに、店舗で顧客に最適な提案を届けることで、来店したことのないEC顧客の離反を防ぐことができています。

 また、同社ではSNSも活用してOMO(オンラインとオフラインの併合)の実現に取り組んでいます。店舗スタッフによるライブコマースやオンライン接客、ブログ更新などを通じて、オンライン上で顧客との接点を構築し、購入や来店促進につなげるための取り組みです。

 加えて、同社はバックオフィス業務のDXにも積極的で、AIを採用した正しい需要把握と、AIによる商品管理を実践し、高度なサプライチェーンの構築に努めています。

 現場スタッフの勘や経験に頼らないデータドリブンなアパレル企業として、同社は生まれ変わりつつあるといえるでしょう。

株式会社ユナイテッドアローズの最近の動向

 ここでは、株式会社ユナイテッドアローズのここ数年の動きについて、注目したいトピックをピックアップして紹介します。

ZOZOTOWN撤退でEC事業は2019年以降新体制へ

 株式会社ユナイテッドアローズは、アパレルECのパイオニアでもあるZOZOTOWNからの撤退を、業界でも比較的早い段階で表明したことが話題になりました。

 手数料の削減や自社ブランドの形成が狙いとされており、2019年以降の新体制発足や、ECサイトのリニューアルオープンに先立っての発表となりました。

2022年3月に自社ECサイトとアプリをリニューアルオープン

 上の沿革でも触れましたが、株式会社ユナイテッドアローズは2022年3月に自社ECサイトとECアプリをリニューアルし、新たな一歩を踏み出しています。

 具体的には、自社ECの運用を業務委託体制から自社運営に切り替え、OMO施策に特化した機能を拡充させました。また、自社物流センターにフルフィルメント拠点を置き、各種サービスレベルの改善を図ることで、顧客体験価値向上を目指しています。

売上高の8割強が定価販売 粗利率がコロナ前の水準上回る

 2023年3月期上期の連結業績によると、株式会社ユナイテッドアローズの売上高は約574億円で、前年同期から約13.9%の増加が見られました。

 同社は新型コロナウイルス感染拡大期間を経て、不用品番見極め在庫の適正化や、春夏シーズンにおける春物のセールをなくすなどの改革を行い、販売スタッフの接客時間を最大化させることに成功しました。このような体制見直しにより、コロナ前の2020年3月期比で9割弱の水準まで売上が回復したと考えられます。

 今後はSNSを通じた情報発信など、接客以外の部分の貢献度を可視化してさらなる成果につなげていくとのことです。

株式会社ユナイテッドアローズの気になるトピックス

 そのほか、株式会社ユナイテッドアローズの気になるトピックスについて、以下でまとめています。

2023年3月1日:ユナイテッドアローズ ハウスカード会員様向け新サービス「AIR TRUNK」を提供開始 循環型の収納サービスで洋服との暮らし方を提案

 ユナイテッドアローズは、ハウスカード会員に向けた新サービスとして、宅配型トランクルーム(荷物保管)サービス「AIR TRUNK(エアトランク)」の提供を開始した。

2023年2月28日:「ユナイテッドアローズ オンライン」に新決済サービス「コンビニ後払い(スコア後払い)」を導入

 ユナイテッドアローズは、自社オンラインストア「ユナイテッドアローズ オンライン」において、新決済サービス「コンビニ後払い(スコア後払い)」を導入した。

2022年12月16日:「ユナイテッドアローズ グリーンレーベル リラクシング」がキッズ商品売上の1%をNPO法人フローレンスへ寄付

 ユナイテッドアローズは、サステナビリティ活動「SARROWS(サローズ)」の取り組みとして、「ユナイテッドアローズ グリーンレーベル リラクシング」の12月17日(土)~25日(日)におけるキッズ商品売上の1%を寄付する「1% チャリティキャンペーン」を開催。

2022年12月1日:ユナイテッドアローズ、2022年中間期EC売上は前年比7%減 自社ECは刷新後に改善傾向へ

ユナイテッドアローズの2022年4‐9月期(中間期)におけるEC売上高は、前年同期比7.0%減の155億2800万円だった。自社ECサイトは今年3月のリニューアル後、当初は売り上げを落としたものの、改善傾向にある。

2022年10月31日:株式会社ユナイテッドアローズ 環境省が実施する「製品・サービスのカーボンフットプリントに係るモデル事業」に参加

 ユナイテッドアローズは、サステナビリティ活動「SARROWS(サローズ)」の取り組みとして、環境省が実施する2022年度の「製品・サービスのカーボンフットプリントに係るモデル事業」に参加。

2022年10月6日:関西最大級のリノベーションショールーム「MYRENO OSAKA」内に、初のモデルルームを10月8日(土)オープン

 ユナイテッドアローズは、グローバルベイス株式会社と大阪ガスマーケティング株式会社がオープンする、マンションリノベーションに特化したショールームとしては関西最大級となる「MYRENO OSAKA(マイリノ オオサカ)」内に、初のモデルルームをオープン。

2022年8月9日:ユナイテッドアローズ、商品廃棄率0.1%へ引き下げ目指す

ユナイテッドアローズは4日、サステナビリティに関する目標数値および行動指針を発表した。「サーキュラリティー」「カーボンニュートラル」「ヒューマニティー」のカテゴリーで、2031年3月期を達成目処とする7つの数値目標を設定した。

2022年7月14日:ユナイテッドアローズ、新疆綿の使用停止 人権問題

セレクトショップ大手のユナイテッドアローズは2023年の秋冬向け商品から、全ブランドで中国の新疆ウイグル自治区で生産された綿花の使用を中止することを決めた。

まとめ

 株式会社ユナイテッドアローズは、高感度なセレクトショップとしての絶対的な地位を確立していますが、その背景には丁寧に考えられたブランドポートフォリオ戦略があります。

 消費者の日常に寄り添うのではなく、最高の顧客体験が得られる憧れのブランドを育ててきた同社では、ECをはじめとするデジタル戦略もサービスの一環として捉え、自社独自の優れた体験の提供を進めてきました。

 計算されたハイエンドな空間が整う実店舗と、顧客満足を第一に考えるECの融合は、今後の同社のさらなる成長を支える力となるはずです。

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この記事の著者

EC研究所(イーシーケンキュウジョ)

ECについての情報を調べ、まとめてお届けします。

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