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ECzine Day 2024 June

2024年6月6日(木)10:00~17:40(予定)

ECホットトピックス(AD)

2030年までにEC収益を増やせるかが小売業の正念場 XPRICE事例に見るリテールメディアの重要性

 顧客一人ひとりの嗜好に合わせた買い物体験やコミュニケーションの創出が不可欠となった、現代のEC運営。ファーストパーティデータの価値の高まりとともに、自社ECサイトをプラットフォームとして解放し、収集したデータとともに活用するリテールメディアが注目を集めている。本記事では、2024年2月21日に開催された「第17回 イーコマースフェア 東京 2024」に登壇したRokt合同会社のセッションをレポート。家電を中心とした総合ECサイト「XPRICE」の事例から、これからの時代の自社EC戦略や「購入の瞬間」に目を向けた体験価値向上、ECリテールメディアの可能性について紹介する。

買い替えサイクルが長い家電特有の課題が自社EC強化のきっかけに

 Cookie規制や個人情報保護意識の高まり、法整備によって、重要度が増しているファーストパーティデータ活用。月間数百万セッションを記録する家電のEC専門ショップ「XPRICE」ではその価値に着目し、現在は自社ECを軸に適切なデータ活用と情報提示を行い、顧客が自分との結びつきを強く感じられるような「レレバントな体験(※)」の構築に挑んでいる。

 ※『BtoC向けマーケティングオートメーション CCCM入門』(岡本泰治・橋野 学、インプレスR&D、2015年)では、類似用語として「レリバンシー」の意味について次のように紹介されている。

「直訳では『関連性』だが、マーケティング用語として使うときには『その人にとって意味がある』『興味・関心がある』『好みや嗜好に合う』といったニュアンスとなる。文脈によっては『自分ごと』と言い換えることもできる。」

 XPRICEの事業戦略やマーケティングを統括するエクスプライス株式会社 取締役 マーケティング本部長の城守豪氏は、実店舗をもたず100%オンラインで売上を創出するXPRICEについて「自社ECだけでなく楽天市場など主要プラットフォームも網羅するチャネル戦略をとっている」と紹介。同サイトは、メーカー各社と接点をもつ小売の強みを生かしたプライベートブランド(PB)展開や延長保証・家電設置サービスなど、利用体験の充実化にも目を向けることで、「楽天ショップ・オブ・ザ・イヤー2021」などの賞も獲得している。

エクスプライス株式会社 取締役 マーケティング本部長 城守豪氏
エクスプライス株式会社 取締役 マーケティング本部長 城守豪氏

 城守氏は、モール展開について「高い集客力と知名度拡大の機会を得られる」とメリットを語る一方で、出店料や手数料の負担やプラットフォームごとのレギュレーションへの対応、マーケティングを実施する際の制限などといった課題を挙げた。

「家電は、購入サイクルが年単位と他商材と比べて長い傾向にあります。たとえば、冷蔵庫を購入した人に『新しい冷蔵庫を買いませんか』とアプローチしても、買い替えるのは数年後です。当社としては、たとえば製氷機のフィルターやクリーニングなど関連する商品やサービスを提案したいところですが、アプローチできる期間の制限やセグメントの粒度を踏まえると、モールでこうしたレコメンドを実施するのは難しくなっています。マーケティング施策のパフォーマンスを上げるためにも、自分たちで顧客情報をもち、有益なアプローチができる自社ECへ注力すべきだと考えました」(城守氏)

鍵となるのは「レレバントな体験」

 自社ECであれば、性別・年齢・居住地域といったデモグラ(属性)から購入商品、決済手段など様々な「購買データ」を得られる。Rokt合同会社 ビジネス開発 ディレクターの大野皓平氏は、「こうしたファーストパーティデータの活用方法は無限大」とした上で、秘められた可能性を最大限に引き出すため、「購入の瞬間」に着目する重要性を強調した。

『トランザクション・モーメント』と呼ばれる顧客が商品を購入する瞬間は、オンライン上の行動の中で幸福度が最も高いタイミングだといわれています(Rokt調べ)。しかも購入や決済の瞬間は、マルチブラウザ・マルチタスク時代のオンライン行動の中で、ほぼ唯一の『ながら』で行動しない、集中している時間だといえるでしょう。

 そのタイミングで、データ活用による顧客理解を通して、その顧客が真に求めている情報提供(=レレバントな体験創出)をすれば、さらなるエンゲージメントを引き出せるはずですが、まだこの価値に気づいていなかったり、具体的なアプローチ方法を見出せていなかったりといった事業者が多いのが実情です」(大野氏)

「みんな平等」を謳う日本だからこそ、響く提案がある

 自社ECを利用する顧客へのレレバントな体験提供と、事業者の収益性向上につながる付帯収入創出の両立をすべく、「Eコマースの『購入の瞬間』に宿る可能性の解放」にチャレンジするRokt。大野氏は「顧客にとってレレバントな体験構築や広告事業を通した付帯収益の創出を目指すEC事業者と、ECの『購入の瞬間』に顧客にリーチしたい広告主との間にRoktの機械学習エンジンが入り、顧客を含めた三者がwin-win-winとなる関係を目指しています」と語る。

XPRICE×Rokt
XPRICEの購入完了画面上に表示されるRoktによる広告オファープレースメントの例。XPRICEでは、顧客が購入を完了した直後の瞬間に、自社ECサイトで収集するファーストパーティーデータとRoktのAI・機械学習技術を活用して一人ひとりの顧客にとってレレバンス(関連性)の高い外部広告主からのオファーを提示し、顧客体験をパーソナライズしながら、広告収入という付帯収益を創出している

 事業者がファーストパーティデータの活用を進める際、「データを利用された顧客が嫌な気持ちにならないか」と不安を覚えるケースもあるだろう。しかし大野氏は、日本の対象者の80%が「レレバントな体験を作り出すためにファーストパーティデータを活用しているECサイトでは、普段以上の金額の買い物をする」と回答した自社調査を提示し、次のように述べた。

「グローバル平均は71%ですが、それよりも高い数値が出ています。わかりやすい例を挙げると、家電量販店で購入した際にカフェなど近隣施設のクーポンが発行されてうれしいといった経験がないでしょうか。データ活用に抵抗感を覚えるのは、その結果導かれる提案が個々人のニーズと合致していないからです。自身の行動や欲求、嗜好と合った広告であれば、グローバル以上にデータ活用を受け入れてくれる。日本の生活者にはそんな風潮があるといえます」(大野氏)

Rokt合同会社 Business Development Director 大野皓平氏
Rokt合同会社 ビジネス開発 ディレクター 大野皓平氏

「日本は、教育の中で『みんな平等』といった概念が刷り込まれているきらいがあると感じています。しかし皆さん、『あなただけの特別感』を享受して嫌な気持ちにはなりませんよね。こうした特別感を演出してもらえるのなら、自分のデータを提供しても良いと考える方は少なくないでしょう。XPRICEも、顧客に喜んでいただくためのファーストパーティデータ活用を進めています」(城守氏)

「良い意味で異常」 Rokt Ecommerceがもたらしたメリットとは

 もともと、広告施策としては音楽アプリや光回線など、家電と関連する事業者のインセンティブ施策のみを実施していたXPRICE。「Rokt Ecommerce」の導入は、自社の付帯収入獲得につながるというメリットを感じながらも、購入後に新たなオファーを提示するのは「スムーズな体験を損なわないか」「顧客からクレームが出て、ブランドに影響しないか」といった、漠然とした不安を抱えていたと城守氏は振り返る。

 しかし、結果は良い意味で予想を裏切った。2023年に導入し、これまで顧客からネガティブな問い合わせはなく、逆に「あのオファーをまた見たい」といった声が寄せられたという。数字面でも、広告表示1,000回あたりの収益性を示すeCPMパフォーマンスは6,680円、平均ポジティブクリック率は8.3%と、既存の広告やCRMのアプローチと比べて「良い意味で異常値をたたき出している」と城守氏は補足した。

「既にある程度の売上が立てられている自社ECに新たな仕組みを入れて、ネガティブな反響が生まれるのは避けたい。その気持ちはよくわかります。しかし、前出の調査結果にもあるように、適切なオファーをお届けすれば顧客に喜んでいただけるのです。自社ECという既存資産を生かしながら、ブランド価値を損なわない方法で収益を高められたのは、XPRICEの今後にとっても良いことだと思っています」(城守氏)

生き残りをかけ、顕在層・潜在層双方にアプローチできるチャネルを作ろう

 近年のリテールメディア興隆の背景には、Cookie規制やオンライン施策を強化するプレーヤーの増加、広告配信面増加によるブランドコントロールの難しさなど、デジタル広告における課題が存在する。城守氏自身も、顧客獲得に取り組むマーケターとしての視点から、既存チャネルだけで数字を伸ばす限界を感じることがあるという。

今日のデジタル広告における課題

「従来、広告を打つ際には顕在層を意識し、P-MAXのショッピング広告やリスティング、リタゲ広告に力を入れてきました。広告では費用対効果が合わないことや相性の良さも加味し、認知拡大はSNSなどを使った戦略をとるなど、ファネルごとに複数のチャネルを使い分けています。

 ただし、マーケティングチャネルの数が増え管理が複雑化し、広告費もこの数年上がり続ける一方で、マーケター視点でも『潜在層からでも一気にコンバージョンが獲得できる手法がないか』と考えていたところでした」(城守氏)

 大野氏は、こうした今日のマーケターの課題に「購入の瞬間」をメディア化したRoktならうまく応えられると語る。

「顧客獲得効率を追求すると、どうしても顕在層向けの広告に投資が集中しがちです。顕在層向けの施策は飽和し尽くしていて、新たな広告チャネルで潜在層に近い顧客獲得ができないかという広告主様の悩みはよく聞きます。『Rokt Ads』は適切なモーメントにレレバントなオファーを届けることで、潜在層寄りの顧客を獲得できるため、インクリメンタルコンバージョン(その施策をやらなければ獲得できなかった純増分のコンバージョン)が多いのも特徴です」

 一方、XPRICEの運営者(EC事業者)視点から見ても、原価の高騰や為替変動、物流2024年問題、人口減少によるマーケットの縮小など、小売事業だけで利益を出し続けるのが困難になりつつある市場環境に危機感を覚えていた城守氏。今回、Rokt Ecommerceを導入した背景には「リテールメディア事業に早期に着手し、収益の一つの柱を作らなければ生き残れない時代になるのではないか」という考えもあったそうだ。

「Roktとのコラボレーションは、実際に収益にもつながりましたし、間違いのない選択でした。XPRICEがこれまでの事業で育ててきたデータとモーメントが合致すると、広告主としては顕在層だけでなく潜在層にもインパクトを与えられる。この発見を得られたのは大きいです」(城守氏)

 グローバルコンサルティングカンパニーのBain&Companyの調査によると、2021年から2030年の間に主要小売事業者の収益構造は大きく変わり、物販事業と付帯事業が50%ずつになると予測されている。

「ファーストパーティデータを収集できる小売事業者は、それを生かして付帯収入を獲得し、収益性を高めながら本業の競争力を強化する時代に突入しています。既に自社ECでデータ収集を進めている事業者は、有利な立ち位置にあるといえるでしょう」(大野氏)

 独自のAI・機械学習技術を活用して、「購入の瞬間」というこれまでソリューション開発がなされていなかったタッチポイントに着目し、新たなものやサービスの流れ、マネタイズの機会を生むRoktの動きは、デジタルマーケティングの世界にも新しい風を吹き入れるはずだ。「Eコマースの可能性を解き放つ」というミッションが、日本の小売事業者の未来をどう切り拓き、市場価値向上に寄与するか。今後の展開からますます目が離せない。

Rokt活用でビジネスの可能性を広げる様々なブランド事例を紹介

 導入事例ページでは、リテールメディア進出で自社プラットフォームの価値向上に成功したWILLER、チケットぴあ、Peachなどのインタビューを掲載しています。レレバントな体験提供の先にどんな成果が得られるのか、検討材料としてぜひご活用ください。

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提供:Rokt合同会社

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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