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おさえておきたいEC・通販先進企業

開発力とグローバル拠点が強みの山善が展開するビジネスモデルとは


 リーズナブルな家電製品を手がける山善は、消費者向けの商品はもちろんですが、実際にはBtoB事業での成功が同社のビジネスモデルに大きく貢献しています。この記事では、山善の成功を支える開発力や、同社のグローバル拠点がどのように事業へ貢献しているのかについて解説します。

 リーズナブルな家電製品でお馴染みの株式会社山善は、自社ECサイト「くらしのeショップ」において消費者向けのサービスを行っています。しかし、実際には消費者向けの事業だけでなく、BtoBの事業の支えが大きい点も忘れてはいけません。

  この記事では、そんな山善のビジネスモデルを支える、強力な開発力と国際色豊かなグローバル拠点がどのような役割を果たしているのか詳しく解説します。

株式会社山善の企業情報・事業内容の概要

株式会社山善の企業情報

 次の表では、株式会社山善の企業情報を簡潔にまとめています。

社名 株式会社山善
本社所在地 大阪府大阪市西区立売堀2-3-16
設立年月 1947年5月
代表者名 最高経営責任者 長尾雄次
株式公開 東証プライム上場
資本金 79億900万円
おもなグループ会社
  • ヤマゼンクリエイト株式会社
  • ヤマゼンロジスティクス株式会社
  • 株式会社トラベルトピア など

株式会社山善の事業内容

山善のビルのイメージ

 株式会社山善の事業内容は、大きく次のふたつに分類されます。

  • 生産財関連事業
  • 消費財関連事業

 生産財関連事業の内容としては、工作機械の生産・加工といった機械事業、生産現場における消耗品や付帯設備を手がける機工事業などがあります。

 また近年は、世界各国に向け機械事業や機工事業を紹介・提案して販路を拡大するグローバル事業、そして自社で培ってきたエンジニアリング力やテクノロジーを活かしクライアントの問題解決に取り組むソリューション事業にも力を入れ、強みを最大限国内外で発揮しています。

 消費財関連事業は、人にも地球にもやさしい住まいを実現する住建事業と、家電からインテリア、さらにはレジャー商品までを取り扱う家庭機器事業の2つから構成されています。

 特に家庭機器事業については、自社ECサイト「くらしのeショップ」を通じて販路を拡大するなど、消費者とのタッチポイントは近年増加傾向にあります。

株式会社山善の沿革

山善の沿革のイメージ

 次の表では、株式会社山善のこれまでの歩みを簡単な沿革にてまとめています。

年月 沿革
1947年5月 創業者 山本猛夫が山善工具製販株式会社を創立
1962年10月 大阪株式市場第二部に上場
1967年2月 アメリカに現地法人を設立
1971年11月 株式会社山善に社名変更
1978年 家庭機器分野へ進出
1991年4月 VI(ビジュアル・アイデンティティ)を導入
社章を変更
2005年4月 「山善グループ企業行動憲章」を制定
2006年1月 株式会社日伝と共同出資で株式会社プロキュバイネットを設立
2012年4月 事業部制を導入
2016年12月 商社初の「レジリエンス認証」を取得
2017年4月 東邦工業株式会社を完全子会社化
2019年4月 中小企業の事業承継支援をスタート

 1947年、戦後間もない時期に創業された株式会社山善は、工具販売を中心に展開したのち、家庭用家電などの取り扱いや不動産業にも着手し、BtoC、BtoB両方でノウハウの蓄積を進めました。

  1960年代後半にはすでにアメリカへの進出を実現しており、早期からグローバルなものづくりやセールスの土壌を整えていたことがわかります。

  2000年代に入ると企業間電子取引にも注目し、株式会社プロキュバイネットを設立することで、ものづくり現場における工場用副資材(MRO)調達の効率化・標準化のサポートを進めてきました。

  2010年代以降はBCP対策の強化によりレジリエンスを獲得したほか、事業継続のための社内体制の整備や取引先である中小企業の事業支援にも取り組むなど、安定したビジネスの継続に向けた活動を進めています。

株式会社山善の強みや特徴

山善の強みや特徴のイメージ

 株式会社山善は、自社の開発力や豊富なグローバル拠点を活用した独自のビジネスモデルを構築しています。事業の強みや特徴について解説します。

株式会社山善のビジネスモデル

 株式会社山善では、「生産財」と「消費財」を別事業として展開しています。

 生産財関連事業部のビジネスモデルでは、工作機械やロボット、部品といった製品を生産財関連事業部が仕入れたうえで、各地の販売店や海外のディーラーに販売・輸出してエンドユーザーに届けています。

 一方の消費財関連事業のビジネスモデルは、家電やシステムキッチンなどを消費財関連事業部が調達を行い、地域ディーラーや工務店、家電量販店、自社ECサイトに卸し、エンドユーザーに届けるものです。

 また、家電メーカーとしてのイメージが強い株式会社山善ですが、実は生産財が売上の約6割を占めています。工業製品のほうが消費者向け商品よりも単価が高いことが一因と考えられますが、海外に対して豊富な販売先を有していることにも起因しています。

株式会社山善の事業の強み

 株式会社山善の事業のおもな強みは、次の3つです。

  • プロフェッショナル集団
  • 提案営業力
  • グローバルネットワーク

プロフェッショナル集団

 山善には、半世紀以上にわたって生産財と消費財の異なる領域でニーズの解消に努めてきた経験とノウハウがあります。多様化するニーズに迅速かつきめ細かく対応する「プロフェッショナル集団としての誇り」こそ、同社の強みのひとつです。

提案営業力

 生産財においては数千社の仕入先とのつながりを活かした商品知識を駆使し、さまざまな機器を最適に組み合わせるコーディネート力を強みとしています。

 消費財においては単に商品を流通させるのではなく、商品やサービスを通して人々の生活が豊かになるよう、多様なアイデアを生かした商品の提供に努めています。

グローバルネットワーク

 海外との関わりが深い山善では、従業員の約4割が海外で活躍している点も特徴です。地域や国籍を超えて人材を確保し、業務を遂行できる環境を充実させている希少な国内メーカーであり、その点も同社の強みといえるでしょう。

 上記に加え、近年のDX需要の拡大に向け、同社は基幹システムの導入による情報の一元化や、顧客情報などのAIによる分析といった、事業適応計画も推進しています。現場の改善活動の強化やECの強化、AIによる需要予測の精度向上によって、品揃えの強化や新規ビジネス創出などの顧客価値の最大化を目指します。

 同計画は2022年2月から2026年3月まで実施される予定で、データを活用した生産性の高いオペレーションへの変革による生産性の向上や、コスト削減といった目標を掲げています。

株式会社山善の最近の取り組み

山善の最近の取り組みのイメージ

 ここでは、株式会社山善の最近の取り組みについて解説します。

2019年3月期にEC売上高190億円を達成

 株式会社山善は、2019年3月期にEC売上高の最高値となる190億円を達成しました。同社では2018年4月以降「YAMAZEN」ブランドのPB商品の在庫量増加に取り組んできました。

 今回の売上達成も在庫増加がおもな要因であると分析し、2桁成長を実現しています。

AIスタートアップと資本業務提携を結ぶ

 2021年3月、株式会社山善は家庭用ゲーム機「プレイステーション」の生みの親として知られる、技術者兼実業家の久多良木健氏が率いるアセントロボティクス株式会社との提携を発表しました。2016年に創設されたアセントロボティクス株式会社は、AI関連事業を手がけるスタートアップ企業です。

 本提携の目的は、アセントロボティクスで開発したAIロボット向けソフトウェアを山善の販路を活かして販売することです。 自動化対応事業で数年後は売上高100億円という目標の達成に大きく貢献することが期待されています。

中小企業を対象とした事業承継支援に参入

 株式会社山善は2019年より、中小企業を対象とした事業承継(M&A)支援事業へ参入を開始しています。 同社の支援サービスは、後継者難に悩む得意先企業などの株式を取得し、役員など幹部を派遣のうえ、経営管理やガバナンス(企業統治)を指南するというものです。

 相次ぐ中小企業の廃業は、リスク分散ができなくなったり、今後のビジネスの継続性を脅かしたりする可能性もあります。そのため、同サービスを通じて得意先の廃業や競合他社による買収リスクなどを回避することで、自社の持続的成長にもつなげていく狙いです。

株式会社山善の気になるトピックス

太陽光発電のイメージ

 最後に、株式会社山善の気になるトピックスについて、まとめておきます。

2024年01月10日:「ロジス足利」にLMS・WMSを導入、全事業部横断で物流資産をシェア 短距離配送により「グリーン物流」を推進

 山善は、2023年9月に栃木県足利市にある、同社家庭機器事業部の物流拠点「ロジス足利」へ、LMS(統合物流管理システム)とWMS(倉庫管理システム)を導入した。導入後のテスト期間が終了し、本格運用を開始したことにより、同物流拠点においても全事業部で運用することが可能となった。

2023年11月14日:三菱HCキャピタル、ビックカメラ、山善が物流施設におけるロボットを活用した実証事業を開始

 三菱HCキャピタル、ビックカメラ、山善は、経済産業省による委託事業「令和5年度流通・物流の効率化・付加価値創出に係る基盤構築事業」に採択された。物流施設において、単品ごとに必要な個数を在庫から運び出すピースピッキングを担う協働ロボットの効果的な活用事例の創出に向けた実証をおこなう。

 2023年10月03日:山善、人財マネジメントシステムとしてSAP SuccessFactorsを導入・稼働

 山善、SAPジャパン、ならびにEYストラテジー・アンド・コンサルティングは、山善がSAPジャパンの提供する「SAP SuccessFactors(エスエーピー・サクセスファクターズ)」を新人財マネジメントシステムとして採用し、2023年2月から本稼働していることを発表した。

2023年07月04日:拠点間輸送にRORO船を活用 「グリーン物流」を推進、「2024年問題」にも対応

 山善は、2023年6月28日より、九州と関東の自社物流倉庫の拠点間輸送において、RORO船(Roll-on Roll-off:トラックの貨物を積載したトレーラー部分のみを輸送する貨物船)の活用を開始した。

2023年2月28日:山善と大Daigasエナジー、をくだ屋技研 本社工場でDayZpower採用

 山善と大Daigasエナジーは、2023年6月末までにをくだ屋技研の本社工場にてコーポレートPPAを開始する予定。をくだ屋技研の本社工場に太陽光発電設備を設置・保有し、Daigasエナジーがその維持管理を行いながら、そこで発電された太陽光由来の再生可能エネルギー100%の電気を20年間にわたりをくだ屋技研に供給・販売する。

2023年2月8日:山善、「ロジス岡山」を稼働 LMS・WMSにより物流資産を事業部横断でシェア

 山善は、岡山県岡山市にある「ロジス岡山」を2023年1月23日より稼働した。「ロジス岡山」は、同社住建事業部の物流拠点として運用しており、今回機工事業部の小規模配送拠点としても活用する。

2023年1月31日:山善、LMS・WMSを導入した「ロジス新東京」を本格稼働 ~WMSと最新マテハン設備を連携させ、配送の効率化を実現~

 山善は、2021年10月より一部稼働を開始していた物流拠点、「ロジス新東京」を2023年1月5日より本格稼働した。同社初となるLMS(統合物流管理システム)・WMS(倉庫管理システム)に加えて、最新のマテハン設備も導入している。

2022年12月5日:生産財と消費財の双方を取り扱う専門商社の山善、次世代型経営管理クラウド「Loglass」導入でデータ主導型企業へ変革

 ログラスは、東証プライム上場企業で、生産財、消費財の専門商社である山善が次世代型経営管理クラウド「Loglass」の導入・運用を開始したことを発表した。

2022年11月9日:新型コロナウイルスに関する寄付に対して「紺綬褒章」を受章

 山善は、大阪府が開設した「大阪コロナ大規模医療・療養センター」に対し、2021年11月に加湿器など1,100万円相当の物品を寄付。この支援活動が認められ、紺綬褒章を受章した。

2022年8月4日:山善、エクスペリエンス管理ツールを採用--部門属性ごとのITニーズを把握

山善は、クアルトリクスの従業員エクスペリエンス管理ツール「Qualtrics EmployeeXM」と「Qualtrics Employee Technology Experience」を導入した。(ZDNet Japan 2022年8月4日)

2022年05月10日:オフィス・店舗向けECサイト「山善ビズコム」グランドオープン!

  山善は2022年5月10日、オフィス・店舗向けのECサイト「山善ビズコム」をグランドオープンした。

2022年2月17日:「楽天ショップ・オブ・ザ・イヤー2021」で4冠達成!! 『くらしのeショップ』が史上2店舗目となる“15年連続賞”受賞!

 山善の家庭機器事業部が運営するインターネット通販『くらしのeショップ』が「楽天ショップ・オブ・ザ・イヤー2021」において総合賞7位、「ジャンル大賞ダブルイヤー賞」を6年連続、「あす楽大賞」も2年連続で受賞した。15年連続して受賞した店舗に贈られる「15年連続賞」も受賞している。

2021年10月11日:大阪ガス系、山善と業務提携 法人向け太陽光発電で

大阪ガスは11日、子会社で業務用ガスの販売などを担うDaigasエナジー(大阪市)が法人向けの太陽光パネルの設置で機械商社の山善と業務提携したと発表した。(日本経済新聞 2021年10月11日)

2020年9月24日:山善、米シカゴの拠点に新社屋 サービス強化

機械商社の山善は24日、米シカゴの拠点を増強したと発表した。(日本経済新聞 2020年9月24日)

まとめ

  株式会社山善は、家電メーカーとしての知名度が高い一方、実際の主力売上は企業向けの生産財関連事業である点が特徴的な企業です。同社の開発力もさることながら、グローバルに張り巡らされた生産拠点と物流拠点を数多く有していることで、いかなる時代にも対応できる、強固な安定性を確保しています。

  近年はものづくりだけでなく、同社の長年のノウハウを活かした事業承継サービスの提供にも着手し、自社の周辺企業の事業安定化にも貢献しています。

  安定経営の理念と技術を広く普及し、今後も消費者はもちろん、多くの企業にとってなくてはならない会社として活躍していくことでしょう。

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この記事の著者

EC研究所(イーシーケンキュウジョ)

ECについての情報を調べ、まとめてお届けします。

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