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ECzine Day 2024 June

2024年6月6日(木)10:00~17:40(予定)

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1年以内に人が辞める・教育に時間がかかる ECに欠かせないCS部門の裏側と現場課題に迫る

 顧客からの問い合わせ対応を行うCS部門を、利益に直結しないコストセンターと位置づけていないだろうか。スムーズなCS対応は顧客満足度を上げ、結果として長期的な売上成長やLTV向上をもたらす。CS部門の工数削減とナレッジ蓄積を実現する「KARAKURI assist」を開発したカラクリ株式会社 取締役 CPO 中山智文氏に、現場の課題と取り組むべき改善策を聞いた。

人手不足に苦しむCS部門の現場

 EC需要の増加とともに、複数のモールに出店するなど、販路を拡大しようとする事業者も増えた。しかし、裏で機能するCS部門の環境まで構築できているEC担当者は、少ないのではないだろうか。実際、購入後の顧客とつながるCS対応の現場では、人手不足や業務改善などの課題が発生している。EC担当者は、こうしたCS部門の課題にも目を向けなければならない。

 大学院でAIの研究を行っていた中山氏は、在学中の2016年にカラクリを立ち上げ、チャットボットやFAQといったツール・ソリューションを開発してきた。その中でも「KARAKURI assist」は、CS部門の負担軽減を目的としている。中山氏は開発のきっかけについて、「自身の妻がCS対応で苦労している光景を目にしたこと」と語る。

「2020年4月、私の妻がメールでCS対応を行う職に就きました。始めたばかりの頃は、上司や先輩にメールの内容を確認してもらう必要があります。入社当初の妻は、作成したメール文章の言い回しや敬語の使い方などを細かく指摘され、1日数件対応するのも一苦労でした。対応件数のノルマもあり、毎日のように残業している妻の姿を見てCS対応の大変さに気づいたのです」

カラクリ株式会社 取締役 CPO 中山智文氏
カラクリ株式会社 取締役 CPO 中山智文氏

 販売チャネルが増えれば、それだけ対応パターンも増える。モール別のルールやメールのテンプレートも煩雑になり、CS部門の業務は膨れ上がっていく。

 中山氏は、日々CS対応を行うスタッフたちが抱える課題を、「新人スタッフ目線」と「マネージャー目線」の両方からこう解説する。

「新人スタッフにとって、『参照したい情報の在り処がわからない』『どのメールテンプレートが最新版かわからない』といった課題はありがちです。加えて、上司や先輩から細かい文章の誤りを毎日のように何度も指摘され、特にリモートの場合は『精神面での負担』を感じるという声もあります。また近年は、人手不足から外国人スタッフを雇用する企業もありますが、外国人スタッフが日本語の細かいニュアンスを理解するには時間がかかります

 問い合わせ内容はクレームや返品など、好意的でないケースがほとんど。そんな中で、必要なテンプレートが見つからなかったり、細かい修正を要求されたりして疲弊し、1年以内に退職してしまう人も多いという。この現状に、CS部門のマネージャーたちも頭を悩ませている。

「新人スタッフを育てるマネージャー目線では、『新人教育に時間がかかる』『教育してもすぐに辞めてしまう』『人材確保そのものが難しい』といった課題があるのです」

 課題の根底には、社内でナレッジ化できない「暗黙知」の存在がある。ベテランスタッフが自身の経験の中で得たノウハウを、新人スタッフに口頭や個別のチャットで伝えてしまい、社内のナレッジが蓄積されないのだ。

 中には、既存のテンプレートを使いやすいようにアレンジして、自身のPCのみに保存しているスタッフもいる。

「CS部門の現場課題を解決するには、『暗黙知』を明文化し、社内のナレッジとして共有・蓄積しなければなりません。蓄積されたナレッジをもとに、生成AIやシステムでメール内容を自動チェックできる体制まで構築するのが理想的です」

生成AIによる「ワンクッション」で精神的負担も軽減

 CS部門の現場課題を知った中山氏は、暗黙知をデータ化できる「KARAKURI assist」を開発した。同ソリューションの主な機能は、「テンプレートの蓄積・整理」「文章の自動チェック」「生成AIの活用」の三つ。一つ目の「テンプレートの蓄積・整理」は、新人スタッフが初期にぶつかる「テンプレートが見つからない」という課題を解消する。

「テンプレートは、関係するスタッフが目にできるところに保存されていなければ、見つけられません。他スタッフが良いテンプレートを作成しても個人のPCに保存されていることが多く、そのスタッフの退職と同時にナレッジが失われてしまいます。KARAKURI assistはクラウド上でテンプレートを管理でき、マネージャーはそのすべてを確認できます。スタッフ全員へのテンプレートの共有も可能です。テンプレートが増えても、検索すれば該当のものがヒットします」

KARAKURI assistの操作画面
ヒットしたテンプレートを選択して組み立てることで返信用メールを作成できる(クリックすると拡大します)

 テンプレートが探し出せても、そのまま返信できるわけではない。状況に応じて細かい文言の調整が必要となる。こうした過程で誤字脱字などが発生することを踏まえ、KARAKURI assistには二つ目の機能として「文章の自動チェック」が搭載されている。

「たとえベテランスタッフであっても、打ち間違いなどのミスは起こります。しかし、すべてのメール文章を複数のスタッフで確認するのは、工数と労力が必要です。自動で文章チェックができれば、各スタッフの業務量を減らせます。日本語のミスだけでなく、会社名や製品名の正しい表記もチェック項目に追加登録できるなど、カスタマイズも可能です」

 こうした機能に加えて、2023年7月にリリースされた新機能が「生成AIの活用」だ。KARAKURI assistに「このような文章を作成して」と指示すると、リクエストに沿った内容や表現の文章が作成される。様々な言語への翻訳や問い合わせ内容をもとにしたFAQ作成などへの応用も可能だ。中山氏は、「生成AIによって『あったら良いな』を実現したい」と話す。

「お客様から長文の問い合わせメールが入った際、生成AIに要点を抽出させれば対応スピードが上がります。また、クレームなど強い表現の問い合わせメールが入った場合は、確認するスタッフの精神面に負担が生じますよね。全文を確認する前に、生成AIによる要約で『ワンクッション』挟めば、精神的負担を軽減できます。こうした使い方もおすすめです」

 CS部門の課題を様々な切り口で改善するKARAKURI assistだが、導入が難しければ本来の目的である業務効率化と離れてしまう。そのため中山氏は、KARAKURI assistを「Google Chromeの拡張機能」として開発した。

「KARAKURI assistは、新たなシステムに入れ替えるのではなく、これまでのシステムで対応できなかった部分をカバーするイメージです。使用頻度の高いテンプレートをショートカットキーに割り当てることもでき、『3回キーボードを打つだけ』でメールが作成できるほど簡単に操作できるよう開発しました」

 この手軽さが、KARAKURI assistの大きな強みだ。

新人教育期間が14ヵ月から5ヵ月に

 ニッセンは、KARAKURI assistを導入して業務効率化に成功した企業の一つだ。

 同社は各モールに屋号を変えて多店舗展開しており、オンライン上の店舗数は20を超える。楽天市場やAmazonなどのモールごとにCS対応のフローが異なる上、店舗ごとにも細かな違いが存在していた。

「多店舗展開の場合、スタッフは各モールの対応画面の使い方を覚えなくてはなりません。さらに、同社ではモール共通のテンプレートがExcelで管理されており、わざわざファイルを開いて内容を確認する手間もかかっていました。これが、自分の使いやすいテンプレートを個人PCに保存するナレッジの属人化の原因となっていたのです」

 KARAKURI assistはGoogle Chromeの拡張機能のため、各モールの管理画面を開いたまま操作できる。楽天市場でのCS対応であれば、楽天市場用のテンプレートだけを呼び出し可能だ。

 ニッセンでは、KARAKURI assistの導入により、これまで14ヵ月かかっていた新人教育期間が5ヵ月に短縮された。加えて、入社時からKARAKURI assistを活用することで、ベテランスタッフを超える成果を出す新人スタッフまで現れた。

「CS部門全体でも、問い合わせ対応時間がKARAKURI assist導入前より3割減少しています」

レビューなど顧客の求めるトーンに合わせて返答

 ウェルネスブランド「TENTIAL」では、KARAKURI assistの導入後、2週間でメールの対応効率が10〜20%向上した。KARAKURI assistの機能をメールだけでなくレビューにも応用している点が同社の特徴だ。

「メールとレビューでは、お客様が求める返答のトーンに若干の違いがあります。レビューはカジュアルな表現で投稿されるケースが多く、それに合わせて明るい雰囲気で返答したい事業者もいるのです。TENTIALは、レビューを投稿してくれたお客様へ感謝の気持ちを『より親近感のある形で返したい』と考え、KARAKURI assistの生成AI機能を活用してトーンの調整までしています」

 KARAKURI assistには、定期的に新機能が追加されている。導入事業者の業務の実態に合わせた使い方ができるよう、使い方を限定せず拡張性をもたせている点は、大きな特徴といえる。

 中山氏は「これからもKARAKURI assistを進化させていきたい」と語る。目指すのは、「新人スタッフが入社当日からベテランスタッフと同じようにCS対応できる状態」だ。

「将来的には、生成AIで一連のフローが完結するようにしたいです。完全自動化にはもう少し時間がかかりますが、生成AIが返信文の下書きまで作成する『メールドラフト自動生成機能』を12月中にリリース予定です。また、日本のCS対応には電話が使用されるケースも非常に多いため、メール対応で得られた成果を電話対応にも横展開します。現場の声を拾いながら、新機能の開発を進めていきたいです」

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提供:カラクリ株式会社

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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