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ECzine Day 2024 June

2024年6月6日(木)10:00~17:40(予定)

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ソーシャルギフトでBtoB需要拡大も視野に ギフト特化のブランド戦略で成功を収める八代目儀兵衛

 日本の主食として長年親しまれている「米」。代々京都で米屋を営む一家で育った橋本隆志さんが米の価値を正しく伝えるべく立ち上げたのが、ECで「お米ギフト」を届けることを主軸に実店舗展開・業務用卸などを行う株式会社八代目儀兵衛だ。今回は、さらなる販路強化のために同社が2022年3月に実施した自社ECのリニューアルを大解剖。ギフトEC推進におけるブランド戦略や、近年注目を集めるソーシャルギフト(eギフト)の展望について、同社の取締役 CMO 神徳昭裕さんに話を聞いた。

老若男女に親しまれる米をギフトに 目を引く商品づくりでUGCを生む好循環を

 橋本隆志さんが江戸時代後期の1787年から続く家業を存続しながら、2006年に設立した株式会社八代目儀兵衛。設立のきっかけは米の消費量や生産農家の減少、食生活の変化による米の価値低下に創業者の橋本さんが危機感を覚えたことにあったと神徳さんは振り返る。

「正しいお米の価値を伝えるには、商圏を絞らずに販売する必要がある。そう考え、八代目儀兵衛は創業当初からECでの販売を行っています」

株式会社八代目儀兵衛 取締役 CMO 神徳昭裕さん

 米をギフトで届ける点に着目した理由としては、日本に住んでいれば誰もが一度は食べたことがあり、年代・性別を問わず贈って喜んでもらえる商材であることに加え、八代目儀兵衛独自のギフトとして楽しめるアプローチができると考えたからだと言う。

「当時は市場が空白の状態であったことも舵を切った理由のひとつですが、当社の創業者は『五ツ星お米マイスター』の資格を持っており、高級料亭やホテルなどへ料理に合ったブレンド米を卸していました。そこで『洋食に合うお米』『おむすびに合うお米』というように用途に合わせたお米を提案し、バリエーションを楽しんでもらうギフトとして生まれたのが、いちばん人気の商品『十二単「満開」』です」

 「十二単『満開』」は、2合米12種を米の種類別に色分けした風呂敷に包んだギフト商品だ。主に内祝いとして購入されており、八代目儀兵衛は同商品を軸にさまざまなギフト需要・価格帯に応じた商品を展開している。

「2020年まではEC売上の98%がギフトでしたが、あるテレビ番組で取り上げていただいたことをきっかけにご自宅用の需要が増え、現在は約80%がギフト、20%がご自宅用という売上構成になっています」

 八代目儀兵衛でギフトを購入する顧客の主な流入経路は検索、次いでInstagramとなっていると説明する神徳さん。顧客自身が手に取るのではなく、親族・友人・知人など大切な人へ贈るギフトの特性を踏まえ、開封した瞬間に華やかな気持ちになるような商品づくりを意識した結果、「Google ショッピング タブの一覧内でも目を引いて選ばれやすく、かつもらった人も『こんなにかわいいギフトをもらいました』と投稿したくなる好循環が生まれている」と語る。

「お米は見ためだけで差別化を図ることが難しく、ブランドが重要になる商材です。ネーミングバリューを重視するとどうしても『魚沼産コシヒカリ』のようにわかりやすいものが選ばれますが、産地や銘柄が一般の方には知られていなくても、おいしいお米はたくさん存在します。その価値を知ってもらいやすくするために、たとえば『ミシュラン3つ星レストランの●●で使われている』など実店舗の名前を挙げたり、京都の地の利を活かした商品名やストーリーを前面に出して商品開発をしたり、メッセージを伝えたりといったことを意識的に行っています。

 また、多くの方に知っていただくという観点ではSEO対策に力を入れています。ギフト需要は主に『結婚祝い』『出産祝い』『法事・弔事』の3本柱で成り立っていますが、これらに関連するビッグワードは大手モールなどがすでに検索結果の上位を占拠しており、商品数やアクセス数の多さで当社は太刀打ちできません。そこでビッグワードに紐づくサジェストに目を向け、たとえば『香典返し 喜ばれる』『結婚祝い おしゃれ』というキーワードで上位を獲得できるように工夫を施しています」

物流オペレーション改善にもつながるギフトECの必須要件とは

 EC起点でビジネスを始め、「京の米料亭」「銀座米料亭」といった実店舗を展開するなどチャネル拡大にも積極的な八代目儀兵衛だが、2022年3月に抜本的な自社ECリニューアルを実施。2019年に入社し、CMOという立場からデジタル強化に取り組む神徳さんにとって、このリニューアルは必要不可欠なものであったと語る。

「八代目儀兵衛に入社し、さまざまな施策展開を検討する中で自社ECの課題が明らかになってきました。基幹システムもフロント・バックエンドのシステムも7、8年ほど前に作られたもので構築したメンバーはもう在籍しておらず、仕様書も存在しない。UI/UXやデザインの改善を行うにもコーディングの知識が必要で、限られたリソースの中で迅速に対応するのは難しい状況でした。顧客の使いやすさをより追求するため、そして八代目儀兵衛の世界観や商品そのものが持つパワーをより効果的に伝えるにはリニューアルが必要だと考え、動き始めました」

 神徳さんの入社から3ヵ月後には基幹システム・自社ECリニューアルのプロジェクトが始動したが、各システムの選定に約3~4ヵ月、基幹システムの移行に約1年を要した。並行して進めた自社ECリニューアルは、プロジェクト開始から約1年半後にようやく実現したと言う。

「八代目儀兵衛の方向性をしっかりと提示すべく、『ブランドとして何を伝えるか』という構想から改めて練り直しました。急いでリニューアルを行っても失敗しては意味がないと考えて要件定義に時間をかけましたが、中でも苦労したのがカートシステムの選定です。

 今回カートシステムを選ぶにあたり、『ギフト対応できること』を最優先としていましたが、のしの種類を選べるようにしたり、メッセージカードを入れたりといった当社の要件を十分に満たすカートシステムはなかなか見つかりませんでした。ところがある日、ほかの食品ギフトECを見ていた中で『aishipGIFT』と出会い、ギフトECに最適化された機能をきちんと実装できる点に魅力を感じました」

 八代目儀兵衛でギフトを注文する顧客の中には、冠婚葬祭にともない初めてギフトを贈るというケースも多く存在する。百貨店などの実店舗では要望を聞いた上で適した水引や表書きの記載内容を提案できるが、ECでこれと同様のサービスを提供するのは難しい状況であった。

「顧客から『どののしを選んだら良いのか』といった問い合わせをいただくことも多く、リニューアル以前は実際に注文をいただいた後に当社が水引の種類や表書きの記載内容に不備がないか、メッセージカードに誤字・脱字がないかといった確認をすべて人の目で行うようにしていました。

 もちろんリニューアル後も確認自体は行っていますが、水引や表書きの選択はギフトオプション設定時に顧客が『結婚祝い』『香典返し』といった目的を選ぶと、ビジュアルとともに適切な選択肢が自動で提示されるため、EC上で間違いの防止を実現しています。また、のしについてのマナーがわかるコンテンツなども作成し、顧客が自力で解決しながらスムーズに購入できる仕組みを整えた結果、リニューアル後の問い合わせ件数が大幅に減り、物流のオペレーション改善にもつながりました」

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 カートシステムをASP型に変更したことで、同社はコンテンツ更新の人員を増やすことにも成功した。従来はコーディングの知識を要したため、専任の担当者1名が自社EC運用を行っていたが、現在はかんたんなHTMLの知識を身につけた3名ほどで役割分担をし、季節ごとの訴求内容の変更や特集ページの作成も容易になったと神徳さんは続ける。

「リニューアルを機に、外部のメッセージカードサービスとのASP連携も実現しました。以前よりメッセージカードサービスは活用していましたが、別途同サービスへID登録をしてメッセージを作成し、カード番号を控えて注文画面の備考欄に記載いただくなど、デジタルなはずなのに、アナログな作業を要する状況でした。すると、面倒だと離脱してしまったり、心を込めてメッセージを作成している最中にセッションが切れてカートの中身が空になってしまったりとさまざまな問題が生じていたのです。

 連携後は注文フローの中でメッセージカードの作成ができるほか、すでにカードを作成済の方はマイページから該当するメッセージを選べるようになりました。こうした1つひとつの改善が実を結んだのか、リニューアル初月の売上は前年比110%以上、翌月は前年比140%以上に成長しています。カートシステムを移行した直後は数字が落ちるかと思ったのですが、すでに前年以上の数字を記録しているので今後がより楽しみです。今回のリニューアルでデータ収集環境も整備したため、これからはCRMにも注力したいと考えています」

デジタル活用で事業をステップアップ オンオフの体験をつなぎ顧客接点増強へ

 自社ECリニューアルにより、顧客体験の向上と社内オペレーションの円滑化、顧客データの可視化を実現した八代目儀兵衛。前出のように今後はCRMにも注力する予定としているが、神徳さんは「顧客にさまざまなシチュエーションで当社のお米を活用してほしいと考えている」と言う。

「ギフトECは、購入する顧客と実際に商品を手にする顧客が異なる点に大きな特徴があります。当社に限らず、『2回め以降の購入率をどう上げるか』は各社課題として取り組んでいると思いますが、ライフイベントごとのギフトを贈る機会にいかにアプローチできるか、そしてギフトを購入しながらも実際に商品を手に取ったことがない顧客に、どうやって八代目儀兵衛のお米を体験してもらうか。こうした機会創出が今後の鍵になるととらえています。

 また、結婚、出産、法事・弔事以外にもたとえば新築祝い、快気祝いなど開拓できるギフト需要はまだまだ存在します。一見するとニッチなところもカバーし、今後はよりさまざまなギフトのご要望に応えていくことを目指していきたいです」

 さらに神徳さんは、ギフトEC以外に自宅向けや業務用卸、八代目儀兵衛の米を使った料亭とさまざまなチャネルを展開する同社の特徴を活かし、「顧客接点の増強にチャレンジしたい」と続ける。

「たとえば、ECで購入した顧客に対して自宅向けのお米購入時や料亭で使えるクーポンを配布する、もしくは料亭を利用してくださった顧客にECで使えるクーポンを配布するなど、八代目儀兵衛のブランド全体で利用頻度を上げる取り組みができるのではないかと考えています。オンラインとオフラインの体験をつなげる上で、『aishipGIFT』のクーポン機能も有効活用していきたいです」

 直近の八代目儀兵衛は飲食店などへ米を卸すだけでなく、「大手企業から米に関する商品のおいしさ改善やプロデュース、コンサルティングの依頼なども増えた」と語る神徳さん。サプライチェーンを通さずにバリューを提供する取り組みが増えるにつれ、「ソリューションとして提供できる幅を広げる必要性がある」という考えに行き着いた八代目儀兵衛の今後の展望について、神徳さんはこう語る。

「お米の価値をより多くの方にしっかりと広げながらも、事業をさらにステップアップさせるには、八代目儀兵衛とクライアント企業の2社だけで取り組みを進めるのではなく、顧客とのタッチポイントを生み出すことが欠かせないと考えています。

 たとえば、当社がプロデュースやコンサルティングを手掛ける飲食店やメーカーを一覧化し、クーポンなどを配布して八代目儀兵衛のお米を支持する顧客が外食や商品購入する際の選択肢を増やす、該当する企業や実店舗の商品をECで販売するといったことができれば、かかわるすべての人々にメリットを創出することが可能です。時間はかかるかもしれませんが、自社ECの売上を拡大しながらもデジタルを使い、新たな出会いの場を生み出していけたらと思います」

ギフトを受け取った顧客へのCRMやBtoB需要にも応用可 ソーシャルギフト(eギフト)の可能性

 なお「aishipGIFT」では、2022年5月に自社EC内で追加の機能開発なしにソーシャルギフト(eギフト)への対応を実現できる「ソーシャルギフト機能」をリリースしている。同機能を用いると、顧客が普段愛用する自社ECから住所を知らない友人や知人に容易にギフトを贈呈できる環境を作ることが可能だ。また、事業者にとっても顧客体験やLTVの向上、ギフト需要拡大による売上増が見込めるばかりでなく、これまでソーシャルギフト(eギフト)の主戦場となっていたモール出店時の「顧客情報を入手できない」という課題をクリアすることができる。つまりソーシャルギフト(eギフト)は顧客・事業者双方にwin-winとなる可能性を秘めた存在であると言えよう。

 神徳さんも近年のソーシャルギフト(eギフト)需要には注目しており、八代目儀兵衛なりの活用法を模索しているところだと説明する。あくまで案のひとつではあるが、このように構想を語った。

「当社には、ノベルティや福利厚生としてお米ギフトを活用したいといったご相談が頻繁に寄せられます。こうしたBtoB需要に『ソーシャルギフト機能』を活用できるのではないかと考えているところです。従来は依頼をいただいた企業の方から送付リストをいただき、当社が転記して送付手続を行っていましたが、個人情報受け渡しの問題もある上、ギフトを受け取る相手が必ずしも企業が把握する住所への送付を希望しているとは限りません。ソーシャルギフト(eギフト)という形で企業が社員に権利を付与し、好きなタイミングで好きな場所に各々が送付依頼できるようになれば、喜んでいただける方がより増えるのではないでしょうか」

 また、「ソーシャルギフト(eギフト)を受け取る相手が任意で個人情報を提供する」という点を活かし、従来のギフトECでは実現が難しかった継続的な顧客接点創出にも着目していると神徳さんは続ける。

「自社ECで同機能を実装するメリットは、もちろん許諾を得た上ではありますが、ソーシャルギフト(eギフト)を受け取った方に向けても、今後プロモーションを展開できる可能性がある点だと私は考えています。たとえば、送付先登録欄にニュースレター登録のチェック項目を設ければ、希望する方に向けて後日メルマガ配信やCRMを実施することができます。

 ギフトECはひとりの顧客が複数人に送付するケースが多いため、ブランドや商品の利用(体験)人数自体を増やすことは比較的容易でした。しかし、ギフト送付先にはプロモーションを実施できないため、せっかく生まれた顧客接点を活かしきれないもどかしさがあったのも事実です。ソーシャルギフト(eギフト)はこうしたハードルを乗り越えることができる。そんな可能性を感じています」

 サードパーティCookieの規制など、個人情報の収集・活用が困難を極める昨今。これからは自社EC起点でデータを収集できるチャンスを逃さず、いかに有効活用していくかが事業者の明暗を分けると言っても過言ではない。ソーシャルギフト(eギフト)は、既存顧客の力を借りながら、新たな顧客との出会いを輪のように広げることができるだけでなく、いつでもどこでもつながることができるデジタルの利点を活かしながらブランド力を高めるポテンシャルに満ちたアプローチ方法のひとつと言えよう。自社で扱う商材や顧客の特性、需要を鑑みつつ、BtoB、BtoC双方の視点から商材開拓を試みてはいかがだろうか。

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【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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