マニアックな商品でも、検索で露出すれば売れるかもしれない
松尾さんの著書、『沈黙のWebライティング』(エムディエヌコーポレーション刊)は、世界最強のWebマーケターである「ボーン・片桐」という主人公が、経営の危機に瀕した老舗旅館のWeb集客を救うという内容だ。ハードボイルドテイストで描かれるそのストーリーは、Web集客で陥りがちな幾つもの罠を取り上げ、それらの罠を回避するための思考法を教えてくれる。本書は、2015年1月刊行の『沈黙のWebマーケティング』の続編という立ち位置で、今回はコンテンツ制作におけるライティングノウハウに特化して解説されている。
Webマーケター「ボーン・片桐」のモデル(?)として注目を集める松尾さんだが、元々はミュージシャンだったという経歴がおもしろい。
「大学卒業後、京都の音楽制作会社に就職しました。そこで舞台音楽の制作などに携わったのですが、自分の名前で飯を食べたいと思い、フリーランスとして独立することを決めます。ただ、元々制作畑の人間だったので、仕事をどうやって受注すればいいかわからない。そんなとき、当時ベストセラーだった『ウェブ進化論』(ちくま新書)という本に出会ったんです。その本には『どんなにマニアックな商品でも、検索エンジンで露出すれば売れるかもしれない』 ということが書かれていました。そのメッセージに雷に打たれたような衝撃を受けた私は、自分が弾いたピアノ伴奏を『ピアノフレーズ集』という商品にしようと考えたんです。世の中にはピアノが弾きたいけれど弾けないミュージシャンがいる、その人たちにとって自分のピアノ演奏はきっと役立つだろう、と。そして、そのフレーズ集を販売するためにサイトを作り、そのサイトを『ピアノ伴奏』『ピアノ素材集』などの検索ワードで上位表示させたところ、飛ぶように売れたんです」
つまり、「自社ECサイトのSEO」だ。この成功により、松尾さんの元には「SEOのノウハウを教えてほしい」といったコンサルティングの依頼が増えていったという。やがて、自分のSEOのノウハウをテンプレート化することに成功した松尾さんは、オリジナルのサイトテンプレートとSEOに関するアドバイスのサポートがパッケージとなった『賢威』という商品の販売を開始する。この賢威は、正しく効果のあるSEOを学べるということで多くの人から支持され、上場企業でも導入されるようになった。その後、コンサルティングの依頼が増えてきたため、ウェブライダーという会社を設立するに至る。賢威を販売し続けて約10年。その間、SEOはどのように変わってきたのだろうか。
「当時のSEOはキーワードの含有率を調整したり、HTMLソースを触ったりするだけで上位表示できることがありました。しかし、今はそんな単純な方法では上位表示できません。今の検索エンジンは、検索エンジンを使うユーザーがどんな情報を求めているのか? という意図を理解し、ユーザーが見たい・読みたいと思うコンテンツを上位表示させるのです。つまり、ユーザー目線でのコンテンツ制作が大切です」
では、松尾さんが考える「検索ユーザー目線でのコンテンツ」とは、どのようなものなのか? ECサイトにおけるコンテンツ作りへの活かし方とともに、松尾さんに聞いてみた。