LINEのEC戦略は、「プッシュコマース」と「つながり」
LINEの上級執行役員島村武志さんは、8月の戦略発表会で、経産省の報告書による「ECの浸透率3.11%」というデータを挙げ、「大いに改善の余地がある。今後この市場を伸ばすにあたり、LINEで何ができるのかを徹底的に考えた」と発言しました。
島村さんによれば、「どうしてこうなっているかを分析すると今のECの姿が見えてくる。ECの現状は、商品の検索を経て購入に至る『Pull Commerce』である。一方、LINEが掲げるECの新しいコンセプトは『Push Commerce』。つまり商品を購入する際の気づき、関心を直接ユーザーに与えて購入を促すスタイルのECを実現する」と言います。
さらに「BtoCの商取引全体から見ると、まだほんのわずかに過ぎないこの3%強を競合と奪い合うのではなく、LINEが狙うのは、EC市場全体の拡大で得られるその先の市場であり、その際の武器となるのが、『LINEコミュニケーション』で培った人と人との“つながり”である」と戦略を明確にしています。
買うために集うのではなく、すでにあるグループが購入する強み
LINEによるコミュニケーションを活かした「つながりによる消費」は、言い換えれば「巻き込み力による消費」と言えます。他社でも、既存サービスにおいてグループ購入やギフトサービスは存在していました。しかし、そのほとんどがうまくいっていません。あの楽天でさえ、共同購入は撤退したほどです。
そんな状況の中、今なぜLINEが共同購入やギフトに参入したのかといえば、LINEの機能にはグループ機能があり、すでに多数のグループが動いているからです。そのグループの仲間にお店がセールスするのではなく「一緒にどう?」と友だちがPushし、勧められ、さらに自分も買うことで商品代金が安くなる(=自分が買わないと高くなる)というような仕組みを提供できます。こんな強みは他にありません。
さらに強力なのはギフト機能です。グループ購入では自分が欲しくなければ購入しなくてすみました。ギフト購入は友達へ「共同で」ギフトを贈ることが目的です。本来、お祝いやお礼など「想いをこめて」贈るものですが、「仲間内でのお付き合い」の側面もありますから、中には「賛同せざるを得ない人」も出てくるかもしれません。これまで比較的低単価だったMALLですが、贈り物・ギフトのグループ購入機能の充実で単価の上昇が期待されます。今後ギフトによるショップのMALL参入が増えれば、品揃えはますます豊富になり、華やかさも増すことでしょう。
これまでもプッシュ型コマースとしては、メルマガでショップやモールから商品の案内、LINEでもLINEセールのお知らせなどをPUSHで通知していました。それを強化する「つながりによる消費」の第一弾が8月から始まっている「グループ購入」、そして第2弾が11月から始まった「LINEギフト」となります。それぞれ詳しく見ていきましょう。