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来島したファンが新たな来島者を連れてくる 小笠原村観光局が注力するエンゲージメント形成手法とは

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 「アンバサダー(Ambassador)」という言葉は一般的に「大使」と訳され、日本では芸能人などがブランド大使に任命される時に使われることが多いようです。一方、SNSの普及により個人がより簡単に情報を発信できるようになり、自分の好きな企業やブランドについて発言や推奨するだけでなく、他ユーザーへのサポートやブランドの擁護まで自ら行うファンの存在が注目されています。本連載では、ファンの力を活用して課題解決を行う「アンバサダー的アプローチ」についてお話しします。第11回では、既存顧客とのエンゲージメントに注力することで成功を収めている小笠原村観光局の事例をお伝えします。

小笠原村観光局がサポートするファン活動 認知に絞らないPR施策とは

 みなさんの会社では、マーケティング活動においての予算配分をどのようにしているだろうか。大きく分ければ、新規(獲得)なのか、既存(エンゲージメント)なのか。

 とくにEC事業者で言えば、認知から購入へ向かっていくファネル、いわゆるマスマーケティング的手法が従来主流であったため、新規側の予算配分が既存側よりも多くなっているケースがほとんどだろう。どれだけの予算を使い、露出をすればどれくらいの売上が上がるかといった確率予測がある程度できるので、コンバージョンに重きを置くEC事業者において、新規獲得を重視した予算配分は、ある意味当然なのかもしれない。

 しかし、近年ファンを重視したアプローチに対する注目の高まりや、実際に取り組みを推進している企業が増加してきているなか、既存顧客を重視したかたちで予算配分を見直すことを考える必要性も出てきているのではないだろうか。

 新規顧客よりも既存顧客を重視するとはどのようなことなのか。ひとつのケースとして、ある事例をご紹介しよう。

 2011年に世界自然遺産に登録された小笠原諸島。行ったことがある人はご存知かもしれないが、ここには飛行場がないため、島へ行くには小笠原海運が週に一度運行している「おがさわら丸」に24時間揺られる以外の方法はなく、アクセスが良いとは決して言えない。しかし、一度行った人はその魅力のとりこになり、移住までしてしまう人も少なくないらしい。

 実際に、今回著者が話を聞いた小笠原村観光局の事務局長 根岸さんも、小笠原の魅力のとりこになり、移住をしたひとりだ。

 小笠原村観光局では、小笠原諸島のファンに魅力を発信してもらう取り組みとして、「小笠原アンバサダープログラム」を推進している。ファンイベントを開催したり、名刺をプレゼントしたりと、さまざまな企画を通じて、ファンによる活動をサポートしている。

小笠原アンバサダープログラム ファンイベントの模様
小笠原アンバサダーに配布される名刺

 このプログラムは、いわゆる既存顧客向けの取り組みである。もちろん、小笠原村観光局では既存顧客向けの取り組みだけでなく、新規顧客獲得のためにさまざまなPR施策を展開しているが、単純な「認知を取るためだけ」の活動はしていない。

 先述のとおり、島へ行くには24時間かかる。決してアクセスが良いとは言えないため、気軽には行きづらい。その状況で「小笠原へ行こう」「小笠原へ行きたい」と思ってもらうには、事前に小笠原の魅力に触れ、体験してもらったうえで、明確な目的意識に基づいて、アクションを促す必要があるわけである。そういった取り組みのひとつが、さまざまな場所で開催されている小笠原魅力発見イベント「小笠原アカデミー」だ。

 小笠原アカデミーとは、

  • 聞いたことはあるけど、小笠原って一体どこにあるの?
  • いつか行ってみたいけど、いつ行けばいい?
  • アクセスは?
  • アクティビティは?

 といった疑問を解決できるトークイベント。小笠原の地酒であるラム酒や料理を楽しみながら、島の魅力に触れることができる。小笠原諸島について少しでも興味がある人には、ぜひ一度参加してみてもらいたい。

 次ページでは、事務局長の根岸さんとお話した際のエピソードをお伝えしよう。

※この続きは、会員の方のみお読みいただけます(登録無料)。



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