今までの3回の連載を通じて、「アンバサダー的アプローチのはじめかた」について主にご紹介してきたわけだが、今回は実際にアンバサダー的アプローチをはじめていく上で、マーケティング活動全体の中で「人」を起点として、どのように考え、設計するべきなのか、また、その効果をどういった指標で計測していくべきなのかについて、お話ししたいと思う。
トリプルメディアを“人”軸で考えてみる
アンバサダー的アプローチはアーンドメディア領域における取り組みだけにとらえられやすいのだが、実はそうではない。また、アンバサダー的アプローチはそれ自体の実施を目的にするのではなく、マーケティングの課題解決におけるひとつの手法として活用していくことを前提に組み立てるべきなので、自社のマーケティング活動全体を俯瞰で捉え、最適化するにはどうすれば良いのかを考えてみてほしい。そうすることで、立体的なエコサイクルを構築することができるはずである。
以下の図は広告・マーケティング活動におけるメディア戦略のフレームワークであるトリプルメディア(POEM)である。EC事業者のマーケティング担当者であれば、主にはペイドメディアにおける運用型広告でコンバージョンを成果指標としていることが多いだろう。

これを人軸の視点で考えてみると、以下の図のように、企業を中心として、それぞれ「人」を起点にできる。こう考えるとアンバサダー的アプローチの考えかたは「広義」の意味でいえば、トリプルメディア(POEM)すべてに適用することができるのではないだろうか。

たとえば、ファンやアンバサダーとのコミュニケーションによって醸成されたUGCの中で周囲の反応が高かったものを広告のクリエイティブや公式SNSの投稿コンテンツとして活用してみることで、広告のクリック率や投稿へのエンゲージメントが改善されることも十分考えられる。一方、ファンからしてみると、自分の投稿が企業やブランド側の広告のクリエイティブや公式SNSの投稿コンテンツとして活用されることは素直に嬉しいと感じるはずなので、それにより、「もっと」伝えたい、「もっと」役に立ちたいという風に思ってもらうことができるだろう。
また、広告のクリエイティブや公式SNSの投稿コンテンツなど、それなりの制作費と時間を費やして作っているものをUGCで代用できるとすれば、コスト削減という点においてもメリットは大きいだろう。
ここで忘れないでほしいのは、アンバサダー的アプローチの推進において、重要な役割を担うのは「社員・スタッフ」であるということだ。ファンやアンバサダーとコミュニケーションをとっていくにあたり、ファンの熱量に企業やブランドも向き合い、応えていくことが大切であるため、アンバサダー的アプローチを推進するのであれば、熱量をもった人が担当したほうが良い。そのため、プロジェクトチームの中にファンとのコミュニケーションを楽しみながら進めていける担当者がいると、それだけで大きな力になるだろう。それに加えて、「中の人」が見えてくると、企業やブランドとではなく、「対人」でのコミュニケーションとファンもとらえることができるので、コミュニケーションも活性化しやすいはずなのだ。