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ECzine Day 2024 June

2024年6月6日(木)10:00~17:40(予定)

これからのブランドと接客を考える

年間1,500枚の直筆手紙送付で4割以上がリピート顧客に 伊藤久右衛門が大事にする1to1の接客とは


 小売のありかたや接客の概念に劇的な変化が訪れ、変わりゆく時代の中で、企業・ブランドを運営する方々は自身の個性や長所を活かしながら、新たな挑戦を続けていることでしょう。当連載では、PLAY inc.の四元さんが小売や接客、ECビジネスに携わる方とともに「これからのブランドと接客」について語ります。今回は、株式会社伊藤久右衛門 WEB営業部 部長 足立容子さんとの対談です。

手間ひまをかけて差別化する 伊藤久右衛門流・顧客との向き合いかた

四元(PLAY inc.) まずは、足立さんがECビジネスに携わるようになったきっかけを教えてください。

足立(伊藤久右衛門) 社会人人生のスタートは、コンピューター専門学校の先生でした。しかし、1年ほどで勤め先が倒産してしまい、次にスポーツバイクの専門店に入社しました。ここでECビジネスの立ち上げに携わり、楽天市場やYahoo!ショッピングで自転車を売るようになりました。

 当時はインターネットで自転車を売る文化がまだ根づいておらず、「本当に10万、20万もするような高価な自転車が売れるのだろうか」と思っていましたが、驚くほどに売れたんですよね。しかし競合が増えてくると、型番商品は価格競争に巻き込まれてしまいます。そこでものを売るならオリジナル商品のほうが良いな、ブランディングなどにも携わりたいなという想いから、2005年に伊藤久右衛門へ入社しました。デザイナーとして入ったのですが、途中でWEB営業部に異動して今に至ります。

株式会社伊藤久右衛門 WEB営業部 部長 足立容子さん

四元 伊藤久右衛門と言えば、有人チャットなどを用いて1to1のコミュニケーションをしっかりと行っているイメージですが、現在の運営スタイルに行き着いた理由は何だったのでしょうか?

足立 端的に言えば、「効率化で勝負しても勝てない」と気づいたからです。今はコンビニに行けばいつでも気軽においしいスイーツが手に入る時代ですし、投資するリソースを踏まえたら、どう頑張っても当社のような中小企業はAmazonの買いやすさに勝てません。「じゃあどこで差別化したら良いの?」と考えた結果、こうした大手小売やEC企業にはできない「手間をかけること」や、こうした姿勢が見える商品を作ることに力を注ぐしかないというと行き着きました。

 当社が扱っているスイーツ類は、冷凍冷蔵など物流コストがかかる割に商品単価が低く、ECで成果を上げるためには客単価向上に目を向ける方も多いかと思います。もちろん、できるだけ1回のお買い物で多くの商品を買ってもらおう、今よりも少し上のプライスゾーンを狙ってみよう、といった取り組みを当社が行っていないわけではありません。しかし、それよりも欲しいものを買いに来た時に心地良い体験を提供したほうが「また伊藤久右衛門のスイーツが食べたい」「家族や友人への贈りものを買う際に、伊藤久右衛門を利用しよう」と思ってもらえ、結果的にお客様との関係性が深まると思っています。スイーツは客単価が低いからあまり1to1の接客が行われていないのであれば、逆に当社はそこでNo.1になろう。ここがチャンスなのではないか、と思っています。

四元 たしかに、大手に勝とうと思っても真っ向勝負では難しいですよね。自社の強みをうまく見つけているなと思います。

足立 ちなみに、当社は年間1,500枚ほど購入してくださったお客様に直筆で手紙を書いているんですよ。

四元 すごいですね。

足立 ほかの業務の合間に担当者4名ほどが書いてくれているのですが、改めてデータを見たところ、手紙を受け取ったお客様のリピート率が42.2%であることがわかりました。

四元 それは驚異的な数字ですね。

足立 そう思うと、この取り組みは手間がかかっていても決して無駄ではないですよね。

四元 自分に置き換えて考えても、数百円から数千円のスイーツを買って手書きでお礼の手紙が届いたら驚きますし、お店の名前を忘れないと思います。手紙は購入金額や「購入後、1週間以内に送付しましょう」といったように、何か決まりを設けているのでしょうか?

足立 そこは各担当者の気持ちに任せています。というのも、決まりごととして「やりましょう」と伝えると、「義務」になってしまいますよね。やらされている感を持って手紙を書くと定型文になってしまい、お客様にも響かないと思うんです。そのため、お客様対応をしているメンバーには「好きなタイミングで好きなように書いて良いよ」と伝えています。

 自分ごととしてとらえても、手紙を書く時は何か理由があるから筆を執りますよね。たとえば「孫の誕生日にプレゼントとして買いました」と伝えてくれたお客様であれば、「喜んでくれたかな?」と私たちも気になります。ECだとお客様の顔を思い浮かべるのが難しいという声もありますが、こうした交流を通してお客様のことを理解し、1人ひとりに合ったアプローチをしていきたいと思っています。

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この記事の著者

ECzine編集部 木原 静香(キハラシズカ)

ECに関する情報を、さまざまな切り口からお届けできればと思います。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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https://eczine.jp/article/detail/10902 2022/02/15 12:13

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