長距離トラック便を削減する宅配事業者 配送日数が伸びる可能性も
2024年4月1日、自動車運転業務に従事する人々に対する改善基準告示が適用され、いよいよ物流の2024年問題が本格化した。ラストワンマイルや再配達の問題がメディアで取り上げられている昨今、消費者の関心もより高まっているに違いない。
「2024年問題の認知率が69.8%という調査結果もあります。また、『何かできることをしよう』という意識の表れからか、宅配ボックスの設置を部屋探しの重要な条件としている人もいるようです」
2024年問題で叫ばれているのが、物流業界の人手不足だ。物流事業者や荷主となるEC事業者らが、次々と対応策を発表している。アパレルECモール「ZOZOTOWN」は、受取方法の初期設定を「置き配」に変更した。宅配大手のヤマト運輸も、2024年6月10日より「クロネコメンバーズ」会員を対象に置き配サービスを開始する予定だ。しかし、伊藤氏は「物流業界の課題はラストワンマイルだけではない」と指摘する。
「全国を網羅する大手宅配事業者の多くは、長距離トラック輸送を他社に委託しています。2024年問題でトラックドライバーの労働時間が短縮されると、委託費が高騰し、宅配事業者にとって大きな負担となるのです」
たとえば、ヤマトホールディングスは2024年3月期の第3四半期決算で、委託費を中心とした下払経費の単価上昇などが影響し、営業費用が前回予想を50億円上回る見込みと発表した。その影響により、営業利益を650億から400億に下方修正している。
「公正取引委員会は、委託先からの価格改定に応じない事業者へ厳しく対応する姿勢を見せています。2024年3月には、協議を経ずに取引価格を据え置きした事業者名が、物流含め10社公表されました。大手物流および宅配事業者は、委託先からの価格改定を受け入れる必要に迫られています」
上昇したコストが、荷主に転嫁されるのは想像に難くない。実際、ヤマト運輸や佐川急便らは、宅配運賃の値上げに踏み切っている。EC事業者の物流コストが増加すると、今度は顧客が支払う送料が引き上げられるだろう。例として、ZOZOTOWNは2024年4月1日正午以降の注文より、送料を250円から330円に変更した。これも、前出の宅配運賃値上げが影響したものだ。
トラック輸送の委託費高騰は、送料のみならず配送日数にも影響する。コスト削減のために宅配事業者が長距離輸送の回数を減らし始め、人口が少ない地域への配送日数が長くなる可能性があるという。
「日本郵便は長距離トラック便を中継輸送に変更し、一部地域を対象に配送日数を延長しています。ZOZOTOWNも、余裕のある配達日程を選択した場合にポイントを受け取れる『ゆっくり配送』を試験導入しました。今後、注文から手元に届くまでの時間が長くなる商品が増えると予測できます」