不正クリックによる報酬が不法取引に流用されることも
元々、日本ピザハットは他社のセキュリティツールを導入している。そのため、開発チームは「既に対策を行っているから安心」と認識していた。薮内氏も「新たなツールの必要性を感じていなかった」と振り返る。
しかし、前者で防げるのは不正クリックではなく、ウイルス感染やサイバー攻撃などによるサーバーダウンだった。CHEQのソリューションを導入したことで、他社ツールとの対応範囲の違いを知ったという。
「セキュリティ対策には、複数のツールを使い分ける必要があると気づきました。自社ECサイトを運営する以上、常に脅威にさらされていると認識しなければなりません。『自社が被害を受けることはないだろう』と考えていても、知らない間に広告費が無駄になっている可能性があります。企業の皆さんには、今一度、自社のセキュリティ体制を見直してみてほしいです」(薮内氏)
CHEQは、不正クリックの発生元などを可視化した詳細なレポートも提供。実際の被害や対策の効果が数値でわかるため、日本ピザハットの開発チームのデータ分析に役立っている。
「社内のセキュリティ体制を改善するための分析に、当社の提供データを活用いただけて、非常に嬉しいです」(廣瀬氏)
セッションの最後に、廣瀬氏は薮内氏に対して視聴者へのメッセージを問いかけた。すると、「広告費の最適化」「社会的責任の重要性」「広告業界の健全化の実現」という三つのトピックスが挙げられた。まず、「広告費の最適化」では、積極的な知識のインプットが重要となる。
「私のモットーは、“やってみなければわからない”です。セキュリティ対策は、テスト導入を繰り返しながら、知識を増やす必要があります。そもそも、ベースが整っていなければ広告費を最適化できません。どの程度の不正クリックが発生しているのか、現状把握から始めましょう」(薮内氏)
また、薮内氏は、プラットフォーマーだけではなく「企業にも不正クリックを排除する社会的な責任がある」と語った。
「不正クリックの手法は変化し続けています。デジタル広告に関わる企業が協力し合って、排除していきたいですね」(薮内氏)
そうした取り組みが、「広告運用の健全化」へとつながっていくだろう。
「たとえば、プラットフォーム側に不正クリックの発生を申請すると、広告費が戻ってくるケースがあります。こうした仕組みも、皆さんに知ってほしいです。地道な取り組みの継続で、広告運用の健全化が実現できるのではないでしょうか」(薮内氏)
「不正クリックで発生した報酬は、間接的にオンライン上の不法な取引市場に流用されることもあります。広告主が行っている消費者を幸せにするためのビジネスが、結果的に不正の手助けをしてしまうかもしれません。当社も引き続き、デジタル広告とオンライン上の安全を守れるように努力します」(廣瀬氏)