今すぐ見直そう ○○○○がボトルネックになっていませんか?
大西 今は顧客の意見を聞くだけでなく、どれだけ早く対応できるかも重要な時代です。「スピード」は物事に対応する速度だけでなく、ECサイトの表示速度にもいえると思っています。タイムパフォーマンスが重視される時代に、情報へ容易にアクセスできるはずのインターネットで見たいものがすぐに見られないのは、大きなストレスです。その瞬間の離脱だけでなく、企業やブランドそのものから離れてしまう恐れもあります。
村田 「今、どんなECサイトが求められているか」と聞かれたら、答えは「アーキテクチャに優れたECサイト」に尽きるのですが、目に見えづらいため、重要性に気づいていないEC担当者もまだまだいると思います。
たとえば、アプリ開発時に業務設計に重きを置くと、ついWebViewを多用しがちですが、多くの場合、ネイティプのページから切り替わる瞬間に離脱が発生します。顧客に利便性を提供したくてアプリを作るはずなのに、これでは目的を達成できていません。
大西 「理想とする体験」がしっかりと描けていれば、楽なほうには流れないはずですが、たいていのプロジェクトは時間との戦いでもあり、じっくりとUI/UXの議論をする時間も確保できないケースがあります。本来であれば、リリース前にユーザーテストの実施もお勧めしたいですが、そこまでリソースを確保できない企業が多いのも現実です。
村田 支援側の立場としては、ベンチマークするECサイトを教えていただけると、優先順位や「なぜこの機能やサービスを望んでいるのか」といった判断軸が見えてくるのでありがたいですね。
──ベンチマークするECサイトは、どのような視点で選ぶとよいのでしょうか。
大西 やはり、利用者が多いECサイトです。私はAmazonやZOZOTOWNをベンチマークとしてよく挙げていますね。もちろん、事業規模や扱う商品点数、モールと自社ECで注力すべきポイントが異なる場合もありますが、顧客は「多くの人が見るECサイトにある機能=常識」と見なしがちです。慣れている体験との差異が離脱にもつながるので、参考にできるものはしたほうがいいでしょう。
AmazonやZOZOTOWNをよく見ていると、高い頻度で改善されています。ほんの少しの調整でも、毎日続ければ1年で数百回改善を加えたことになります。こうしたチェックをしながら、自分が何をよい/悪いと思ったか記録するのも大事です。その積み重ねが、事業にも生きてきます。
村田 ECサイトのよしあしでいうと、今後はユニバーサルデザインやアクセシビリティの視点も重要になってくると思います。「かっこいい」だけを追求した独りよがりなデザインは、良質な顧客体験からかけ離れてしまいます。ブランディングの意義も、より心地よさを含むものに変わっていくのではないでしょうか。
大西 ECサイトの場合、クリエイティブは使い勝手のよさを追求した上で付与すべきものだと思います。ブランドイメージが確立されている企業ほど、世界観や見せ方から入りがちですが、どんなにデザインがよくても欲しい商品が探せず、カートに入れた後もスムーズに決済ができなければ、買っていただけません。店舗の導線設計でたとえると、わかりやすいでしょう。使い勝手が悪いと、それだけでブランドイメージを損なう恐れがあるため、非常に危険です。
村田 評価の高いECサイトは、やはり顧客起点な設計ができています。実際に他社のECサイトで商品を買ってみるのが、最もわかりやすいでしょう。
大西 自社ECをよくするヒントは、あらゆるところに潜んでいます。「勉強のために必ず購入体験をしよう」というわけではありません。いたずらのようにやりすぎるのはよくないですが、カートに入れて離脱する体験も顧客目線では必要です。
村田 ECサイトまわりのシステムをSaaSで構築していれば、よい機能を見つけたら自社でも取り入れる、といった行動をすぐに起こせます。完全に同じサービスが存在しないとしても、あるものを使って近い体験を作ることは可能でしょう。
大西 あるものでベストを尽くす発想は、これからのEC運営や事業展開に欠かせません。よく「デジタル人材を採用したいが見つからない」といった声を聞きますが、既に育っている人材は獲得競争が激しいですし、そもそも人手不足の時代で外から人を雇うにも限界があります。
EC運営は業務内容が多岐にわたります。そのため、他部署の社員がeコマースを誤解していて、組織やECサイトそのものの成長を妨げる要因と化しているケースも目にします。基幹システムの刷新がよい例でしょう。何年も前から運用している基幹システムが、ECサイトを含めた事業成長や体験向上を妨げる要因になっているにも関わらず、既存の運用を変更するリスクが優先され、結果的にパフォーマンスが落ちているといった例もあります。ここ数年は、特にこの点を見直すタイミングだと考えています。
村田 すべてを内製化して、全員が高い理解度で事業を推進するのは非常に困難なことです。大西さんのような信頼できるコンサルタントや支援会社の手を借り、良質なプラットフォームやサービスを使いながら、マーケティングや商品開発などの既存スキルを生かしてよりよい売り場作りに注力するのが、ベストな進め方ではないかと思います。
大西 企業が使える資金や人材は有限です。これらがもつポテンシャルを最大化するための切り分けと、信頼できるパートナー探しは今後より重要になっていくでしょう。ぜひ経営のあり方から見直し、柔軟な仕組みを使いながら一緒にこれからのeコマースをよりよくしていけたらと思います。
OMO機能をオールインワンで提供する「Omni-Base for DIGITAL’ATELIER」
Omni-Base for DIGITAL’ATELIERは、店舗とECを横断した在庫管理や顧客管理が可能なバックオフィス機能を兼ね備え、OMO戦略を実現するためのフルフィルメント業務全般をオールインワンでカバーします。本記事で興味を持たれた方は、DIGITAL’ATELIER公式サイトからお問い合わせください。