企業が目指すゴールを示し、新規獲得とCRM担当が手を組む組織に
磯山(wevnal) 2024年4月に、アイムから第一三共ヘルスケアダイレクトに社名を変更されていますが、ブランド戦略を統括する丸山氏は現在どのような業務を担当しているのでしょうか。
丸山(第一三共ヘルスケアダイレクト) 新規獲得部門とCRM部門の連携をより強固にできるよう、組織づくりを考える役割を担っています。
磯山 新規獲得担当とCRM担当ではKPIが異なるため、互いにうまく連携できず苦慮している企業も多いですよね。双方のマネジメントをする上で、何か意識していることはありますか?
丸山 各メンバーには、個人や担当ブランドの目標を達成するだけでなく、当社が目指す大きなゴールも意識して仕事に取り組むよう呼びかけています。ブランド同士の横のつながりや、第一三共ヘルスケアダイレクトが成長し続けるために何をすべきか考えなければ、新規獲得、CRMといった役割の違いやブランドごとに摩擦が生じてしまいます。そうならないような組織づくりが重要だと考えています。
磯山 具体的には、どんな指導をしていますか?
丸山 マーケティングファネルに沿った「縦軸」の顧客の動きに加え、ブランドを横断して使っていただく「横軸」の動きにも着目するよう伝えています。
もちろん、ポジションによって重きを置く指標は異なります。しかし、当社が事業成長を遂げるとともに市場も変化し、今はオンラインで戦うのが本当に難しい時代になりました。CPAの高騰がよく例に挙げられますが、世の中全体が「単品通販でいかに新規顧客を刈り取っていくか」ではなく、「接点をもった顧客と中長期目線でどう向き合うか」「継続を前提とした獲得をしよう」という流れに変化していますよね。当社もそれを察知して、継続率に着目するマインドが醸成されつつあります。
磯山 単品通販企業から、コスメ・健康食品領域を軸とする総合通販企業へと成長する中で、視野が広がったところもあるのでしょうか。
丸山 2015年に第一三共グループに加わった当初と比べると組織も拡大し、やり方を変えなければならない部分も出てきました。しかし、緊密に連携しながらスピード感をもった意思決定をするという元々のアイムがもつマインドは、社名が変わったり組織が大きくなったりしても残していくべきと思い、強く伝え続けています。
CPA高騰時代に欠かせないOne to Oneとマルチチャネルの視点
磯山 コスメや健康商品領域は競合が多いですから、いかに市場や消費者の変化を敏感に察知できるかも成果につながりますよね。気づきからアクションを起こせるかどうかも、重要だと思います。
丸山 単品リピート通販の王道をやり抜くだけでは太刀打ちできない時代になっていますから、外部環境の変化は特に敏感に察知しなければなりません。
たとえば、ブライトエイジでは比較的早い段階から、トライアルセットではなく、本品をお得に購入頂ける直定期モデルを採用してきましたが、これが成功事例として広がるうちに、競合他社も追随するようになりました。すると、次第に顧客からの見え方が「良い商品をお得に手に入れられる」ではなく「安売り」「たたき売り」へと変化してしまったのです。一時は王道とされた施策も、市場環境そのものが厳しくなったり、消費者がその環境に慣れたりすることですぐに通用しなくなります。
今は、広告の費用対効果が各社の課題だと思います。当社は獲得広告にコストを投じるばかりでなく、ミドルファネルへの投資を行っており、その投資効果を最大化させるべく、自社EC、Amazonなどモールでの展開、店販を含むマルチチャネル戦略を取り始めています。
磯山 具体的には、どのような取り組みを始めているのでしょうか。
丸山 2023年に、リゲイン トリプルフォースの訴求方法を模索するために「疲労」についての調査を実施しました。性別、年代、季節や原因ごとにセグメントを分けて分析し、それぞれの結果に基づいたお悩み別のLPを作成するというOne to Oneに近いアプローチをしたところ、新規獲得の効率が上がったのです。
また、同商品の購入者層と近しい方々と新規接点をもつために、「新R25チャンネル」とのタイアップ企画も実施しました。これは新R25というコンテンツを活用することで顧客接点を増やし、興味・関心を高めるという、いわゆるミドルファネル層へのアプローチが狙いでした。この広告を観て実際に興味を持った方に、自社ECやモールで購入いただけたので、一定の成果があったと感じています。
磯山 こうしたマルチチャネル施策も「縦軸」と「横軸」の意識がなければ生まれにくいですよね。丸山氏の組織運営のポリシーが、しっかり施策にも生きていることがわかりました。ちなみに、第一三共ヘルスケアダイレクトにおける、自社ECとモールのすみ分けはどのようにされているのでしょうか。
丸山 当社は、自社ECとモールそれぞれにリピート顧客がいて、顧客層も完全に分かれています。「商品は魅力的だが、定期通販には抵抗がある」「モールのキャンペーン参加やポイントを利用したい時など、自分の好きなタイミングで購入したい」と考える方の受け皿としてモールが機能しているのでしょう。そのため、当社にとっても売上をつくる上では重要なチャネルと位置づけています。
「押し売り」でないアップセル訴求 工夫の末に見つけた方法とは
磯山 顧客層が分かれているのであれば、なおさら自社ECとモールそれぞれの売り場を強化しなければなりませんよね。第一三共ヘルスケアダイレクトは、現在「BOTCHAN Payment」を活用していますが、どんな課題感から導入を決断されたのでしょうか。
丸山 自社ECのCVR向上に向け施策を練っていたところ、代理店の方から勧められたのがBOTCHAN Paymentでした。One to Oneのアプローチを強化したいという動きと、チャットによるフォーム入力支援は相性が良さそうだと思って導入したところ、一定の成果が見られたため、今は全商材で導入しています。
磯山 オンライン集客だけでなく、オフラインからの引き上げにも活用いただいていると耳にしました。
丸山 新聞広告からオンラインへ送客する際のLPにBOTCHAN Paymentを実装しています。広告に掲載したQRコードを読み取った顧客は、購入意欲が高い貴重な存在です。電話での申込窓口も設けていますが、タイミングによってはコールセンターがつながらなかったり、定期購入や関連商品のご案内をした際に「押し売り」と受け止められてしまったりと、リアルチャネルゆえのコミュニケーションの齟齬が課題となっていました。
ところが、BOTCHAN Paymentを活用すれば、顧客の好きなタイミングで能動的にアクションを起こしていただけます。BOTCHAN Paymentを使ったアシストが口頭よりも自然に感じられるおかげか、定期購入への誘導数や継続率も良い結果となっています。今はこの成果をより高めるべく、日次で数字を見て細かなチューニングを続けている状況です。
ものづくりと販促の連携強化、ブランド認知度向上 未来への鍵は?
磯山 社名変更を機に、第一三共グループとしての連携をより強めていく方針とお聞きしました。今後、どのようにさらなるブランド強化を図っていくのでしょうか。
丸山 顧客が商品を選ぶ際、社名も一つの決め手となるかと思います。今回「第一三共」の名を掲げることで、アイム時代に生まれたブランドと、第一三共グループに参画してから生まれたブランドの距離がより近づくと社内的には捉えています。
ありがたいことにライスフォースは認知度が高いのですが、ブライトエイジはまだまだこれからの段階です。また、リゲインは飲料のイメージが強く、ブランド認知率は非常に高いのですが、トリプルフォース自体の認知を今後は上げていきたいと考えています。
これからは、ブランド認知向上とともに、カテゴリー内で第一想起されるブランドを目指し、効果を実感できた方に第一三共ヘルスケアダイレクト製品とクロスセルしていただく流れを実現できるよう、CRMに軸足を置いた施策を目下検討中です。
クロスセルを進める上では、もちろん「買いたい商品がここにある」という環境を整えなければなりません。第一三共ヘルスケアダイレクトは「トレンド商材をスピーディーにつくる」のではなく、「長期的に安定して求められ、かつ差別化できる商品を生む」という思想でものづくりに取り組んでいます。そこには、未来を読む想像力も重要です。顧客獲得と育成を担う立場からも、ものづくりと販促を行う者同士がより連携を深めなければならないと感じています。
磯山 BOTCHAN Paymentのようなツールは、商品やブランドがもつポテンシャルをより高める手助けをするもので、これらは良い商品やブランドがあってこそ生きるものだと思っています。最後に、ブランド構築に大きく貢献する部署を統括する丸山氏の視点から、愛されるブランドづくりに向けた想いを聞かせてください。
丸山 ブライトエイジの立ち上げを経験した身としては、「売ること」に軸足を置いて商品開発時の想いが置き去りになってしまう状態は、絶対避けなければならないと思っています。そこで大事にしているのが、ブランドの良さを関わるすべての人に知っていただくために行動を起こすことです。そのため、当社では継続的にお取引をする協力会社の方を、定期的に香川県高松市にある本社へお招きしています。
当社はeコマースを主軸に展開する企業ですが、商品を選ぶのも売れるまでの過程に携わるのも人です。実際に「皆さんと行った施策のおかげで売上が上がり、前回よりも出荷スペースが拡張した」といったように、施策の成果やそこで働く人々を見ていただくことで、次の施策実施や改善の解像度もより高まるでしょう。
顧客接点においても、リアルで印象深い体験を提供したいと考え、ライフスタイルイベント「Grand Viewty(グランビューティー)」を開催するなど、チャレンジを続けています。今後もOne to Oneの洗練された施策を意識しながら、さらなる事業拡大を図っていきたいです。
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