CPA高騰時代に欠かせないOne to Oneとマルチチャネルの視点
磯山 コスメや健康商品領域は競合が多いですから、いかに市場や消費者の変化を敏感に察知できるかも成果につながりますよね。気づきからアクションを起こせるかどうかも、重要だと思います。
丸山 単品リピート通販の王道をやり抜くだけでは太刀打ちできない時代になっていますから、外部環境の変化は特に敏感に察知しなければなりません。
たとえば、ブライトエイジでは比較的早い段階から、トライアルセットではなく、本品をお得に購入頂ける直定期モデルを採用してきましたが、これが成功事例として広がるうちに、競合他社も追随するようになりました。すると、次第に顧客からの見え方が「良い商品をお得に手に入れられる」ではなく「安売り」「たたき売り」へと変化してしまったのです。一時は王道とされた施策も、市場環境そのものが厳しくなったり、消費者がその環境に慣れたりすることですぐに通用しなくなります。
今は、広告の費用対効果が各社の課題だと思います。当社は獲得広告にコストを投じるばかりでなく、ミドルファネルへの投資を行っており、その投資効果を最大化させるべく、自社EC、Amazonなどモールでの展開、店販を含むマルチチャネル戦略を取り始めています。
磯山 具体的には、どのような取り組みを始めているのでしょうか。
丸山 2023年に、リゲイン トリプルフォースの訴求方法を模索するために「疲労」についての調査を実施しました。性別、年代、季節や原因ごとにセグメントを分けて分析し、それぞれの結果に基づいたお悩み別のLPを作成するというOne to Oneに近いアプローチをしたところ、新規獲得の効率が上がったのです。
また、同商品の購入者層と近しい方々と新規接点をもつために、「新R25チャンネル」とのタイアップ企画も実施しました。これは新R25というコンテンツを活用することで顧客接点を増やし、興味・関心を高めるという、いわゆるミドルファネル層へのアプローチが狙いでした。この広告を観て実際に興味を持った方に、自社ECやモールで購入いただけたので、一定の成果があったと感じています。
磯山 こうしたマルチチャネル施策も「縦軸」と「横軸」の意識がなければ生まれにくいですよね。丸山氏の組織運営のポリシーが、しっかり施策にも生きていることがわかりました。ちなみに、第一三共ヘルスケアダイレクトにおける、自社ECとモールのすみ分けはどのようにされているのでしょうか。
丸山 当社は、自社ECとモールそれぞれにリピート顧客がいて、顧客層も完全に分かれています。「商品は魅力的だが、定期通販には抵抗がある」「モールのキャンペーン参加やポイントを利用したい時など、自分の好きなタイミングで購入したい」と考える方の受け皿としてモールが機能しているのでしょう。そのため、当社にとっても売上をつくる上では重要なチャネルと位置づけています。