宅配大手3社の取扱個数は減少 値上げは免れない状況に
前年に引き続き、円安による物価高、燃料高が続いた2023年。下半期以降は、値上げの波が物価からサービスにまで波及し、配送料の価格も軒並み上昇した。
「2023年5月に新型コロナウイルス感染症が5類に移行したことで旅行やレジャーの需要が回復し、宿泊やレンタカーなどの料金が上昇しました。しかし、テーマパーク入場料の改定なども見ると、行動制限の撤廃やインバウンド需要の戻りによる影響だけでなく、サービスそのものの価格が上がっているようにも見えます」
2023年は、物価高や従業員の待遇改善を目的とした、賃金アップのニュースを目にする機会が多かった印象もあるだろう。固定費が上がれば当然価格にも影響が及ぶが、伊藤氏は「宅配業界に関してはこれだけが理由ではない」と続ける。
「大きな要因は、ECビジネスに携わっていれば耳にする機会も多いであろう『物流2024年問題』によるものであることは間違いありません。トラックドライバーの働き方改革によるコスト増は当然ながら発生するものですが、宅配大手3社の業績や市場全体の動向を見ると、取扱荷量の減少も起因しているのではないかと考えられます」
2023年上期の宅配便取扱個数は、ヤマト運輸、佐川急便どちらも前年割れとなっている(カーゴニュース「宅配大手3社、23年度上期の取扱個数は前年割れ確実に」より)。日本郵便も、ゆうパックやゆうメールを対象とする「荷物」の物数は前年よりも減っている状況だ(日本郵便「プレスリリース」より)。コロナ禍の反動やインフレなどでの買い控えが理由として考えられるが、宅配大手3社の実績がこのような状況である上に人件費や燃料費の上昇が絡めば、それは当然ながらサービスの価格そのものに転嫁される。
「ヤマト運輸と佐川急便は、2023年に運賃の値上げを行っていますが、既に2024年4月にも改定することを発表しています。日本郵便も、2023年にEMSなど海外配送を含めた料金改定を実施しました。ヤマト運輸は、宅急便の価格を毎年度改定する方針を出しており、EC事業者にとっては送料無料ラインやコスト見直しの頻度が増えることが予想されます」